「温度計」で知る彗星の生い立ち

すばる望遠鏡の高分散分光器 HDS による観測から、彗星本体 (核) を構成するアンモニアが凍りついた温度が初めて測定されました。彗星がどのような環境下で生まれたのかを直接的に示す重要な証拠です。例えば2000年に観測されたリニア彗星 (C/1999 S4) の場合、測定されたアンモニア氷結温度が約 -245 ℃であることから、太陽系が形成された原始太陽系星雲内で、この彗星が土星から天王星の軌道領域付近で生まれたことが明らかになりました。一方で、2013年に観測されたアイソン彗星 (C/2012 S1) では、氷結温度が約 -260 ℃と従来考えられていた温度より低いことから、太陽系形成期の温度環境について再検討が必要であることを示唆しています。