すばる2

用語集

宇宙再電離
宇宙で最初の天体が誕生した後、天体が発する紫外線によって宇宙全体にある中性水素ガスが光電離されること。宇宙の夜明けともいう。宇宙にあるガスは宇宙の晴れ上がり(宇宙年齢 37 万年、赤方偏移約 1,090)よりも前には高温による電離状態にあったが、次第に冷えて、その後の宇宙の暗黒時代には中性ガス状態であった。初代星(始原星ともいう)の誕生に始まる星と銀河の形成により再び電離された。【天文学辞典】
宇宙の大規模構造
宇宙で最初の天体が誕生した後、天体が発する紫外線によって宇宙全体にある中性水素ガスが光電離されること。宇宙の夜明けともいう。宇宙にあるガスは宇宙の晴れ上がり(宇宙年齢37万年、赤方偏移約1,090)よりも前には高温による電離状態にあったが、次第に冷えて、その後の宇宙の暗黒時代には中性ガス状態であった。初代星(始原星ともいう)の誕生に始まる星と銀河の形成により再び電離された。【天文学辞典】
M 型星(M 型恒星)
スペクトルによる恒星分類で用いられるグループ分類のうち、星の表面温度によって分類される O 型、B 型、A 型、F 型、G 型、K 型、M 型のうち、表面温度が最も低く、質量が小さい恒星。
近赤外線高コントラスト面分光装置 CHARIS
近赤外線で太陽系外惑星の像を捉え、その分光観測を行う、すばる望遠鏡用の分光装置。Coronagraphic High Angular Resolution Imaging Spectrographの略語で、カリスと呼ばれる。極限補償光学装置SCExAO(スケックスエーオー)と組み合わせて、恒星からの光を取り除き、恒星の周りを回る惑星の像を高いコントラストで撮影できる。また、恒星周辺の領域を一度に分光する機能を持ち、惑星からの微かな光も逃さず分光することができる。
近赤外線ドップラー分光装置 IRD(Infrared Doppler instrument)
すばる2主力装置のひとつ。詳しくは、赤外線ドップラー装置 IRD ページ(主力装置-詳細4へリンク)を参照のこと。
極限補償光学装置 SCExAO
すばる望遠鏡の補償光学装置(AO)の中で、極限の解像度を実現する装置。Subaru Coronagraphic Extreme Adaptive Optics の略語で、スケックス・エーオーと呼ぶ。観測できる視野は大変狭い(1秒角程度)が、その代わり、その視野内の大気揺らぎを高精度に補正して、望遠鏡の限界解像度に迫る像を得ることができる。さらに、星像の中心の明るい部分をコロナグラフというマスクで遮り、周辺にある惑星からの暗い光を検出する。
銀河団
明るい銀河を 100 個程度以上含む銀河の集団。銀河以上の階層構造のうち自己重力系としては最大の構造。矮小銀河まで含めると、1つの銀河団には典型的に千個以上の銀河が存在する。
原始銀河団
現在の銀河団になると予想される過去の銀河の集団。主に赤方偏移が2程度以上に見つかる銀河集団に対して用いられるが、これはこの時代に銀河団の形成が始まったと考えられているからである。
広視野高解像赤外線観測装置
ULTIMATE-Subaru(Ultra-wide Laser Tomographic Imager and MOS with AO for Transcendent Exploration)
すばる2主力装置のひとつ。詳しくは、広視野高解像赤外線観測装置 ULTIMATE-Subaru ページを参照のこと。
サーベイ観測
広い天域や多数の天体を対象にした観測のことで、個別の天体ではなく、統計的に天体の性質を理解する研究を可能にする。広い視野をもつすばる望遠鏡はこのような観測を得意とする。
30 メートル光学赤外線望遠鏡 TMT
Thirty Meter Telescope の略語で、次世代超大型望遠鏡のひとつ。日本(国立天文台)、米国(国立科学財団、カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学)、中国(国家天文台)、インド(TMT 連携機構)、カナダ(天文学大学連合)の5カ国の国際協力プロジェクトとして、ハワイ州マウナケア山頂域(標高 4,012 メートル)に、現在の世界最大の望遠鏡をはるかに上回る口径 30 メートルの超大型望遠鏡 TMT を建設する。これによって地球型系外惑星における生命の兆候探査、銀河誕生期の宇宙史の解明、ダークエネルギーの性質の解明など、広範な研究を画期的に推し進めることを目的としている。
地表層補償光学(GLAO)
Ground Layer Adaptive Optics の略語。補償光学(AO:Adaptive Optics)は、地球大気のゆらぎをリアルタイムで測定し、鏡の形状を変化させて、天体像をより鮮明にする技術である。現在の補償光学装置では同時に天体像を補正できる空の面積は限られているのに対し、複数のレーザー光源による人口の星を使い、かつ望遠鏡の副鏡を可変形鏡とすることで、地表層で発生する大気揺らぎの影響を取り除き、従来の 200 倍以上の広い視野でシャープな天体像を得ることができる。広視野高解像赤外線観測装置 ULTIMATE-Subaru でこの技術を導入する。
重力波
一般相対性理論などの相対論的な重力理論一般に予言される重力場の波動的振動。一般相対性理論では、重力波は物質の四重極モーメント以上の高次モーメントの時間変化から放射される横波で、その伝播速度は光速度に等しい。【天文学辞典】
重力レンズ
遠くの天体から出た光が、途中にある銀河や銀河団の重力場によって曲げられる現象。重力場が凸レンズのように働くことから名づけられた。一般相対性理論の帰結の一つであり、重力レンズ方程式で記述される。重力場となる天体をレンズ天体、重力レンズ効果を受ける天体を光源という。【天文学辞典】
赤方偏移
一般に天体の発する光の波長が伸びて観測されることを、赤い側にずれるという意味で赤方偏移という。赤方偏移が起きる原因は三種類あり、それぞれ異なる名前で呼ばれている。第1は、相手の天体が相対的に観測者から遠ざかっている場合である。このときの赤方偏移はドップラー効果で説明され、これを運動学的赤方偏移と呼ぶ。第2は、重力に起因するものである。重力がより強い場所から発せられた光は、観測者に到達するまでに波長が伸びる。これは一般相対性理論の効果で重力赤方偏移と呼ぶ。第3は、宇宙膨張の効果によるものである。十分遠方の天体はすべて赤方偏移を示すが、これを宇宙論的赤方偏移と呼ぶ。これは天体を発した光がわれわれ観測者に届く間に、宇宙空間が膨張したために光の波長が伸びたのである。
ダークエネルギー(暗黒エネルギー)
現在の宇宙の平均エネルギー密度の約4分の3を占めていると考えられる正体不明の成分。その存在が認められるようになったのは、遠方のⅠa 型超新星の観測データによる宇宙の加速膨張の発見(1998)による(2011年ノーベル物理学賞)。加速膨張は実効的に負の重力(斥力)を及ぼすような何らかの成分が宇宙を満たしていることを示唆する。【天文学辞典】
ダークマター(暗黒物質)
現在の宇宙の平均エネルギー密度の約4分の3はダークエネルギーによって占められているが、元素からなる通常の物質(宇宙論ではこれをバリオンと呼ぶことが多い)は、全体のわずか5パーセント以下でしかないことがわかっている。ダークエネルギー以外の宇宙の成分の8割以上(すなわち宇宙の5分の1以上)を占める成分をダークマターと呼ぶ。ダークマターは通常の物質と同じく重力相互作用を及ぼすものの、それ以外の相互作用はほとんど及ぼさない。【天文学辞典】
太陽系外惑星(系外惑星)
太陽以外の恒星を周回する惑星。1995年に発見が報告されて以来、急速に研究が進み、これまでに 2,000 を超える惑星系候補がみつかっている。惑星は木星のような巨大ガス惑星と、地球のような岩石惑星に大別される。地球型の系外惑星は生命の存在可能性を探るうえで重要なターゲットであり、すばる望遠鏡などの地上望遠鏡や宇宙望遠鏡で探査が行われている。一方、生命探査のためには地球型系外惑星の直接撮像が必要であり、TMT など次世代望遠鏡の課題となっている。
超広視野主焦点カメラ HSC(Hyper Suprime-Cam)
すばる2主力装置のひとつ。詳しくは、超広視野主焦点カメラ HSCを参照のこと。
超広視野多天体分光器 PFS(Prime Focus Spectrograph)
すばる2主力装置のひとつ。詳しくは、超広視野多天体分光器 PFS ページを参照のこと。
ドップラー法
太陽系外惑星の検出方法の一つで、最も古い伝統的な方法。視線速度法とも言う。惑星をもつ恒星は、惑星の重力を受け惑星との共通重心の周りを公転する。惑星の軌道面が視線方向に対して垂直(軌道傾斜角が0度)でない限り、恒星の微小な公転運動が視線方向の運動としてドップラー効果でとらえられる。恒星からの光のドップラー偏移を通してこの視線方向の運動を検出する方法をドップラー法(またはドップラーシフト法)という。【天文学辞典】
ニュートリノ
電荷を持たないレプトンに分類される素粒子で、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、およびタウニュートリノの3種類(それぞれの反粒子を含めると6種類)ある。これらは電荷を持つレプトンである電子、ミューオン(ミュー粒子)、およびタウ粒子と対をなしている。他の素粒子と弱い相互作用しか起こさないため、検出には巨大な検出器が必要となる。素粒子の標準理論では質量ゼロとされているが、近年ニュートリノ振動の観測によりわずかな質量を持つことが示唆されている。【天文学辞典】
秒角
角度の単位で、1度の 3,600 分の1に対応する角度。どれだけ細かいものを見分けられるかという、望遠鏡の解像度(視力)を表す指標としても使われる。
補償光学(AO)装置
AO は Adaptive Optics の略で、大気の影響による星像の乱れを実時間で補正し、望遠鏡の解像力を向上させる装置の総称。大気揺らぎを参照星やレーザーガイド星(LGS:Laser Guide Star)を用いて計測し、可変形鏡などを用いて星像の乱れを実時間で補正する。その実現方法によって、極限補償光学、広視野補償光学など数種類に分かれる。
マルチメッセンジャー天文学
天体現象によって発生する電磁波、宇宙線やニュートリノなどの粒子および重力波、を情報を運ぶ運び手(メッセンジャー)と見立てて、複数のメッセンジャーを用いて天体現象を総合的に解明する天文学のこと。