注1: 現在の標準的なモデルによれば、銀河のような巨大な構造が形成されるよりも前にまず質量の大きな星が形成され、その強い紫外線放射により宇宙の電離が進んだと考えられています。また、ビッグバン直後には水素とヘリウムだけからなるガスが残されましたが、これら第一世代の大質量星によって炭素、酸素や鉄といった重い元素が供給され、その後の天体形成に大きな影響を与えたと考えられています。その後の何世代もの星による元素合成の結果、我々を構成する多様な元素を含む世界がかたちづくられてきました。
注2: 大質量星の寿命は数百万年でしかないため、第一世代の大質量星はとうの昔に超新星爆発を起こして一生を終えているはずです。しかし、その際に放出された重元素を含んだガスから、太陽より質量の小さな、寿命の長い第二世代星が形成されれば、それは現在でも銀河系内に生き残っているはずです。こういった星を探し出し、その元素組成に残された痕跡から第一世代の星の特徴、とくにその質量分布を知ることが可能になると期待されます。さらにいえば、もし仮に重元素を全く含まないガスから質量の小さな星が直接生まれたとすれば、それも現在まで生き残っている可能性があります。
2001年までには、太陽に比べて鉄組成が1万分の一程度しかない星が複数個みつかっていました。逆にそれより鉄組成の低い星が見つからないことから、第一世代星はすべて大質量星で、それによって重元素を供給された第二世代の星はすでに太陽の一万分の一程度以上の重元素を含むようになったという解釈がなされていました。ところが、2001年に
HE0107-5140 という星が発見され、従来知られていた星よりも一桁以上低い鉄組成をもつことが判明しました(ESOによる発表)
。この星の解釈のため様々なモデルが提案されてきました。あるモデルによれば、この星は第一世代の小質量星の生き残りで、わずかに観測される重元素は星が形成された後に星間物質から降り積もったものであると解釈されています。一方この星はやはり第二世代の星で、その元素組成は第一世代の大質量星による元素合成の結果を示しているという提案もあります。その形成シナリオについては多くの議論があるところで、日本の理論天文学グループも大きく貢献しています。
注3: 国立天文台、東京大学、北海道大学、東海大学、オーストラリア国立大学、ハンブルク大学、ウプサラ大学(スウェーデン)、ミシガン州立大学、英国放送大学の研究者による共同研究。
注4: この星までの距離は正確に測られてはいませんが、大きく見積もってもせいぜい4000光年と、太陽系の比較的近くにある星です。星の年齢や質量は直接測定できていませんが、重元素の少なさからみて宇宙初期に誕生したことはほぼ確実で、130億歳程度で太陽よりやや質量の小さな星であると考えられま
す。
注5: すばる望遠鏡などによる観測は、今回発見された HE1327-2326 と、それまでに知られていた最も鉄組成の低い星
HE0107-5240 との間に、以下のような違いがあることも明らかにしました。これらは鉄組成の低い星の形成理論に強い制限を与えるものです。(a)HE0107-5240
は巨星段階まで進化した星であったのに対し、今回観測された天体がまだ主系列星に近い段階にあり、その表面組成が星内部における原子核反応の影響を受けていないこと。(b)2天体の間には鉄と炭素以外の元素組成比に無視できない違いがあり、特にマグネシウム/鉄比やストロンチウム/鉄比がHE1327-2326で高いこと。
注6: 梅田、野本(2003)によるモデル(Nature 422, 871)。このモデルは、マグネシウム/鉄組成比など、HE1327-2326
と HE0107-5240 の間の違い(注5)も無理なく解釈できるのが特長です。
注7: 炭素などの軽い元素のみを供給するメカニズムとしては、この星が連星系に属していて、主星が進化終末期に炭素などの軽い元素を合成し、その結果がもう一方の星(伴星)の表面に流れ込む(あるいは降り積もる)という現象が考えられます。現在では主星は暗い白色矮星にまで進化を遂げてしまって直接観測できず、伴星のみが観測されているという解釈であり、このような現象は少なくない天体で起こっていることが確認されています。ただし、今回発見された
HE1327-2326 が連星系のメンバーであるという証拠は今のところ得られていません。
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