すばる望遠鏡
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地球に接近するリニア彗星から氷粒を発見


  すばる望遠鏡では、2004年5月に地球へ接近し明るく見えると予想されるリニア彗星(C/2002 T7)について、近赤外線域の分光観測を2003年9月に実施しました。得られたスペクトルを解析した結果、リニア彗星に水の氷粒があることを発見しました。彗星から水の氷粒が見つかったのは、ヘール・ボップ彗星に続いて、今回が2例目となります。

 彗星の固体部分である「核」は、太陽系が誕生したころ存在していた惑星の元(微惑星)が生き残ったものと考えられています。その微惑星は星間あるいは原始太陽系星雲中にあった氷ダスト(揮発しにくいチリの周りを氷が覆ったもの)が集まってできたとされることから、彗星核中の氷の研究は太陽系形成期の物理環境を探る上で非常に重要なプロセスです。

 これまでの研究から、彗星核の中の氷は80%以上が水(H2O)であり、残りの20%は一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)であることがわかっています。一酸化炭素や二酸化炭素の氷は、太陽から遠く離れた温度の低いところでも蒸発してしまうほど揮発性の高い物質です。水の氷が蒸発しないような、太陽から3天文単位 (1天文単位=約1億5000万km) 以上離れた低温の領域にある彗星では、一酸化炭素や二酸化炭素の氷の蒸発がチリや水の氷を放出させる原動力となり、水の氷粒がそのまま観測できる可能性があります。


図1: CISCOで撮ったリニア彗星のクローズアップ画像
(範囲:25000km×25000km)
低解像度 (166 KB)
中解像度 (311 KB)

 すばる望遠鏡では、ナスミス焦点に取り付けた近赤外線カメラ CISCO を用いて、地球に近づきつつあるリニア彗星の分光観測を2003年9月14日に行い、彗星核を包むコマの中に水の氷粒が存在することを見つけました。観測当時、太陽から約3.5天文単位の距離にあったリニア彗星の明るさは、20世紀の大彗星と言われたヘール・ボップ彗星が同じ距離だったときのわずか100分の1程度です。リニア彗星も太陽に近づくほど明るくなりますが、太陽によって暖められてしまうため、彗星コマ中に水の氷粒が蒸発せずに存在することは難しくなってきます。

 まだ太陽から遠方にあったため非常に暗いリニア彗星の観測を成功に導いたのは、すばるの口径8.2m鏡による「大きな集光力」と、水の氷粒が存在する非常に狭い領域だけを取り出せる「高い空間分解能」によるといえます。今後もすばる望遠鏡によって、彗星の氷粒の観測的研究が進むものと期待されます。

 

  図2: すばる望遠鏡とCISCOで撮られたリニア彗星のスペクトル(誤差棒付の赤 い点)と、モデル計算による結果(紫および青の実線)を比較した。モデル計算は、1マイクロメートル (μm;1μm=0.001mm) 程度のH2O氷粒のみが存在している場合(紫)と、5マイクロメートル程度のH2O氷に黒っぽいチリを混ぜた場合(青)を示した。後者の「汚れた氷粒」モデルの方が、観測結果をよく説明できることがわかる。また、結晶質の氷を用いたモデル計算には1.65マイクロメートル付近に吸収が見られるが、今回の観測では吸収がないことから、リニア彗星の氷が非晶質(アモルファス)状態であったと考えられる。これは、水の氷が−150℃以下の環境で作られたことを意味している。

(2004年4月4日)
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