国立天文台、ハワイ大学、東京大学の研究者からなるチームは、木星の近くを回る小衛星をすばる望遠鏡および
NASA 赤外線望遠鏡で観測し、小衛星が現在の位置で形成されたのではなく、外から取り込まれたことを世界で初めて突き止めました。この結果は、まだ謎の多い惑星・衛星の形成過程の理解に対し、重要な示唆を与えると期待されます。この成果は2004年12月24日付け米国科学雑誌Science
に掲載されました。
| 木星をはじめとする惑星は、太陽系が生まれたときに太陽の周りを回っていたガスや塵が集まって形成されたとされています。一方、誕生して間もない木星
(原始木星) 周辺はガスや塵でできた円盤が取り囲み、木星を中心としたミニ原始太陽系のような状態だったという考えが有力です。ガリレオ・ガリレイが見つけた
4つのガリレオ衛星(内側からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)は、この円盤の中でガスから凝縮した塵などが集まってできたと考えられています。
木星にはガリレオ衛星の他に、イオより内側を回っている小さな衛星が4個(図1、2)と、ガリレオ衛星の外側を回っている衛星が55個見つかっています。外側を回る衛星は軌道の特徴から木星が形成されたときに捕獲されたと考えられている一方、内側を回る4つの小衛星の起源には2通りの説が提案されていきました。一つの説はその軌道の特徴から、ガリレオ衛星と同様に現在の位置に相当する原始木星系円盤内で凝縮した塵からできたというものです。もう一つの説は、反射率や不規則の形状が小惑星と似ていることから、外側を回る衛星と同様に太陽の周りを回っていた小天体が木星に捕獲されたとする考えです。これらの小衛星は小さいため暗く、また木星からの非常に強い散乱光が邪魔をして、地球から観測を行うことは困難といえます。探査機のボイジャーやガリレオが鮮明な写真を撮っていますが、その組成を解明するための観測データがこれまでほとんどなく、小衛星の起源は謎のままでした。
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アマルテアと木星のリング
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国立天文台の高遠徳尚主任研究員らの研究チームは、これらの小衛星のうち 2 衛星(アマルテア、テーベ)について、世界で初めて赤外線スペクトルの観測に成功しました。観測が難しい波長
3 マイクロメートルより長い波長域は、すばる望遠鏡に取り付けた
赤外線撮像分光装置
IRCSを用い、短い波長域は広い波長域を一度に観測できる
NASA
赤外線望遠鏡の観測装置
SpeXを用いて、それぞれの望遠鏡の特色を活かした観測が実施されました(
図3)。
データを解析した結果、研究チームはアマルテアに水の存在を示す波長 3 マイクロメートル付近の深い吸収帯を発見しました(
図4)。この「水」は水そのものではなく、含水鉱物に取り込まれている水と考えられます。比較的低温で形成される含水鉱物の存在によって、アマルテアの形成場所は原始木星系円盤内で非常に高温であったとされる現在の位置ではなく、もっと遠くの低温の環境であったことが明らかになりました。
アマルテアの表面は、ガリレオ衛星の一番外側を回っているカリストの
氷の少ない領域と非常に良く似ています。ガリレオ衛星が生まれたころは「微衛星」がたくさん存在していたとされることから、木星本体に大量に吸い寄せられた微衛星の生き残りがアマルテアなのかもしれません。あるいは、これらの小衛星は木星本体が成長してゆく過程で木星に落ち込んで行った「
微惑星」の残骸とも考えられます。事実アマルテアやテーベのスペクトルは、木星付近で太陽の周りを回っている小惑星や、そこから来たと考えられている隕石とも似ています(
図5)。
今回の観測では、小衛星が原始木星系円盤内の遠い領域から来たのか、木星系の外から来たのかは区別がつきませんが、いずれにしても現在の場所でできたのではなく、別の場所で形成されて、現在の位置に落ち着いたことを明瞭に示すことが出来ました。本結果は、木星本体や衛星の形成過程の理解に大きく貢献すると期待されます。
参考文献:N. Takato, S. Bus, H. Terada, T-S.
Pyo, and N. Kobayashi, “Detection of a Deep 3-μm Absorption
Feature in the Spectrum of Amalthea (JV),” Science
Vol. 306, 2224 - 2227.