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「すばる-朝日星空ライブカメラ」から生まれた新時代の流星天文学

2026年2月8日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2026年2月8日

日本天文学会の学術雑誌で、「すばる-朝日星空ライブカメラ」による流星観測の成果と、カメラ装置のしくみを紹介する、計6本の論文からなる特集が公開されました。本来はアウトリーチや夜空の環境モニタリングを目的とするカメラから、このように本格的な科学研究の成果がまとまって発表されるのは、きわめて珍しいことです。

「すばる-朝日星空ライブカメラ」から生まれた新時代の流星天文学 図

図1:すばる-朝日星空ライブカメラが捉えた流星クラスター。(クレジット:国立天文台・朝日新聞社)

すばる-朝日星空ライブカメラ」は、国立天文台と朝日新聞のコラボレーションから生まれた、マウナケア発の星空ライブカメラです。2021年4月の配信開始以来、機器トラブルなどを除き、24時間365日、YouTube でマウナケアの空模様を送り続けています。

最先端の高感度カメラと、天文学にとって世界有数の観測地とされるマウナケアの星空の美しさが相まって、配信元の「朝日新聞宇宙部」は多くの視聴者に親しまれる人気チャンネルとなりました。

夜空を継続的に配信していると、流星群の活動皆既月食人工衛星の軌道投入など、さまざまな珍しい現象を捉えることがあります。その中でも特に注目されるのが、流星天文学への大きな貢献です。

配信開始から3カ月後の 2021年7月、わずか数秒の間に多数の流星が一斉に流れる「流星クラスター」をこのカメラが捉え、ライブ配信を見ていた視聴者を大いに驚かせました。その後もこの珍しい現象を何度か捉えることに成功しています。

それまで、流星クラスターは、性能や観測条件の異なる機材で偶然に捉えられるケースがほとんどでした。そのため、同じ観測地で夜空を継続的に記録した星空ライブカメラのデータは、科学的にも貴重なものとなっています。

こうした成果は、流星クラスターにとどまりません。新しい流星群が誕生する瞬間を捉えた「さいだん座流星群」検出キャンペーンでは、視聴者からボランティアを募り、市民サイエンスとして流星活動の検出に成功しました。北天からのほぼ唯一の観測地点として、星空ライブカメラのデータは貴重な情報を提供しました。

さらに、「2022年ヘルクレス座τ流星群」と「2021年アンドロメダ座流星群」という、ふだんは活動が弱い2つの流星群で、突発的な出現を捉えることにも成功しました。前者は、国立天文台の佐藤幹哉氏らによるダスト・トレイルモデル計算によって事前に予測されていた活動を実際に確認したものです。後者では、星空ライブカメラでの検出をきっかけに、同様のモデル計算で流星群の活動が検証されました。7等級以下の暗い星まで捉えられるライブカメラと、マウナケアの優れた観測環境がそろっていたからこそ、こうした微弱な活動を明瞭に記録できたといえるでしょう。

これらの研究成果と装置の概要をまとめた特集号「高感度ライブカメラによる流星科学の新時代」が日本天文学会の学術誌 PASJ で企画されました。本特集は、2026年2月の PASJ 印刷版で公開されます。

「すばる-朝日星空ライブカメラ」は、今年4月に運用開始から5周年を迎えます。昨年2月には、マウナケア天文台群の一つであるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)に「CFHT-朝日星空ライブカメラ」が設置され、観測中のすばる望遠鏡を含む星空のライブ配信が実現しました。さらに今年1月には、国立天文台アルマプロジェクトと朝日新聞の協力により、チリ・アタカマにあるアルマ望遠鏡サイトから、南天の星空のライブ配信が始まっています。

世界有数の観測地から高感度で夜空を見守る配信が広がることで、今後、さらに面白い流星天文学が生まれるかもしれません。これからも星空カメラのライブ配信にご注目ください。

「すばる-朝日星空ライブカメラ」から生まれた新時代の流星天文学 図2

図2:「高感度ライブカメラによる流星科学の新時代」として特集された6本の論文(左;クレジット:国立天文台)と論文が掲載されたPASJの表紙(右;クレジット:Oxford University Press)。

本研究成果は、日本天文学会欧文研究報告『Publications of the Astronomical Society of Japan』2026年2月号に6本の論文として特集されました。

(1)Tanaka et al. "The Subaru-Asahi StarCam: Description of the System"(星空ライブカメラの概要)

(2)Watanabe et al. "On the meteor clusters detected over Hawai`i in 2023 and 2024"(流星クラスターの考察)

(3)Sato et al. "Observational results of the 2022 τ-Herculid outburst from California and Hawai`i" (2022年ヘルクレス座τ流星群の観測)

(4)Sato et al. "TV observations of the 2018 Draconid meteor shower from Iceland"(2018年10月りゅう座流星群の観測)

(5)Fujiwara et al. "An outburst of the Andromedid meteor shower on 2021 November 28"(2021年アンドロメダ座流星群の観測)

(6)Tanaka et al. "Detection of the 2021 Arid meteor shower on Maunakea, Hawai`i"(2021年さいだん座流星群の観測)

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