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すばる望遠鏡の星空ライブカメラ、さいだん座「新」流星群を捉える

2022年3月3日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2023年9月21日

昨年秋に誕生した新しい流星群の活動の様子を、すばる望遠鏡の「星空ライブカメラ」 (注1) が捉えていました。その出現を確認したのは、日頃から星空ライブカメラを楽しんでいた一般市民の方々でした。

すばる望遠鏡の星空ライブカメラ、さいだん座「新」流星群を捉える 図

図1:マウナケア天文台群の上空を流れるさいだん座流星群。右上から左下に流れ落ちる短い筋がさいだん座流星群による流星たち。2021年10月6日19時~20時40分 (ハワイ時) に流れた 24 個の流星を合成しました。流星の出現した時間のみで合成しているため、日周運動による星の軌跡は点の連続として見えています。(クレジット:国立天文台・朝日新聞社)

さいだん座「新」流星群

さいだん座はさそり座の下に位置する、南天の星座です。2021年10月7日、この星座の方向から新しい流星群が出現するかもしれないという予報が、国立天文台の佐藤幹哉さんを含む複数の研究者から出されていました。その流星群の起源は、2015年にアウトバーストを起こした、フィンレー彗星です。

予報によると、この新流星群の出現ピークはハワイ時間の10月6日午後3時過ぎ。ピークそのものは観測できないけれど、出現の終わり頃の姿がハワイの夕方の空にまだ見られるかもしれない。そう佐藤さんは考え、マウナケアの星空ライブカメラに注目しました。

ボランティアによる流星群検出プロジェクト

佐藤さんからの連絡を受け、星空ライブカメラを管理するハワイ観測所の田中壱は、当日のライブ動画を眺めていました。視聴者の方々の書き込みから、ある方向から流れる暗い流星が増えているようだという印象もありましたが、顕著な流星群の活動は確認できませんでした。その後、佐藤さんからもいくつか見えていたかもしれない、というコメントを受けたものの、既にライブ動画は消え去った後。このまま貴重な観測機会は消えてしまうかに思われました。

しかしその後、出現予報の日とその前後3日間の動画データを個人的に保存しているという方が現れ、追検証が可能になりました。そこで、佐藤さんと田中は、星空ライブカメラ視聴者の協力を仰ぎ、録画データから流星群出現検出を試みるプロジェクトを立ち上げました。

さいだん座「新」流星群の検出

ボランティア緊急募集に応じてくれた視聴者の方々は7人 (注2)。皆さんに3日間のデータの中から群流星の候補と思われるものを注意深く評価してもらいました。それらを集計、さらに田中と佐藤さんによるクロスチェックを経て、最終的な群流星候補の計数をした結果、予想された経路にそった流星が6日の夜だけ増加している事が、見事に示されました (図2)。

すばる望遠鏡の星空ライブカメラ、さいだん座「新」流星群を捉える 図4

図2:10月5日~7日 (19:00-20:40) に計数された流星。赤丸がさいだん座流星群候補の数で、青丸はそれとは無関係な軌跡の流星。10月6日にさいだん座流星群候補が顕著に増えています。流星群候補は、5日と7日には4つしかありませんが、6日は合計 24 個が検出されました。計数は 10 分毎にされています。 (クレジット:NAOJ/田中壱)

増加した流星の特徴は、予報通りゆっくりとした暗いものが大半で、眼視観測では検出がほぼ不可能な明るさです。マウナケアという世界第一級の観測地に高感度のカメラを設置していたからこそ検出できた、はかない姿の 24 個の流星達でした (図1)。

録画データの提供と流星の計数に協力した「私めめ」さんからは、「個人的に保存しておいたアーカイブ動画をこうして役立てていただいてうれしいです。そして、皆さんと一緒に調べた結果をまとめていただくと、そこに流星群の様子が浮かび上がって来たのには感激いたしました」との感想を寄せていただきました。

流星群を予測した佐藤さんは、「自分の計算でも出現を予報していたこの新しい流星群の検出に関われたことを大変嬉しく思います。新流星群の検出は、長い時間をかけて映像を詳しく確認していただいた、市民ボランティアのみなさまのご尽力の賜に他なりません。深く感謝いたします」と語っています。

「さいだん座流星群」は2021年10月に、国際流星機構 (IMO) によって新流星群として登録されました。可視光でこの流星の姿を捉える事ができたのは主に南天の観測地からのもので、太平洋のまん中で他の観測が無い時間帯に北天での流星活動を捉えた星空ライブカメラの結果は貴重な活動記録となりました。

この結果は、3月3日の日本天文学会春季年会で報告されました。


(注1) すばる望遠鏡星空ライブカメラは、国立天文台ハワイ観測所と朝日新聞の共同プロジェクトです。報道目的で使用する場合は、「国立天文台・朝日新聞社提供」のクレジットをお願いいたします。

(注2) 流星群検出プロジェクトには以下の7名の方がボランティアで参加してくださいました。 (50 音順、ハンドル名は「」付きとしています。)
「雨晴ちゃんback」さん、「Kageたん」さん、「Cookie」さん、鈴木弘明さん、長畑東隆さん、皆川博さん、「私めめ」さん

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