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科学目標4:地球型系外惑星候補天体の同定

地球型系外惑星候補天体の同定

宇宙には私達の住む地球のような惑星が、ほかにもあるのでしょうか。そしてそこに生命は存在するのでしょうか。1995年に初めて系外惑星が発見されて以来、数千という数の系外惑星と候補が発見されており、すばる望遠鏡は「第二の木星」の直接撮像に成功するなどの成果をあげてきました(SEEDS プロジェクト)。
発見された系外惑星の中には、主星からの距離が丁度良く、生命の存在に必要不可欠であると考えられている液体の水が存在可能な「ハビタブルゾーン」にあり、地球のように岩石でできた惑星もあります。今後宇宙における生命の研究を進めるには、地球の近くに存在するハビタブル惑星を発見し、惑星の特徴を詳細に調べる必要があります。
すばる2では、系外惑星の直接撮像による研究を継続しつつ、IRD を用いて、恒星のふらつきから惑星を間接的に検出する手法で地球型惑星を発見します。その探査の対象は、太陽より軽く低温の恒星(M 型星)です。M 型星は、太陽系の近傍に数多く存在すること、低温のためハビタブルゾーンが主星に近いこと、小質量のため惑星の影響が相対的に大きい(主星のふらつきが大きい)ことから、ハビタブルな地球型惑星を発見しやすいという特徴があります。

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(左)主星とハビタブルゾーンの距離の関係。ハビタブルゾーンは、低温度の星ほど主星に近く、高温度の星ほど遠くなります。(クレジット:アストロバイオロジーセンター)
(右)7つの地球型惑星を持つ低温・低質量の恒星TRAPPIST-1(トラピスト-1)の惑星系の想像図。主星はM 型星で、この図では7つの惑星のうち4つが描かれていますが、惑星軌道と主星の自転方向がほぼ揃っていることが、すばる望遠鏡IRD による観測でわかりました。(クレジット:国立天文台)

観測対象

太陽系近傍のM型星

すばる望遠鏡での達成目標

(1)IRD で太陽系近傍に存在する 100 個以上の M 型星を集中的に観測し、ハビタブルゾーンにある地球型惑星を検出します。

(2)NASA の系外惑星探査衛星 TESS と連携し、TESS が発見した系外惑星候補を IRD で詳細に観測して、地球型惑星などの特徴を明らかにします。

(3)生命を宿す可能性のある「第二の地球」の有望な候補を、将来の超大型地上望遠鏡 TMT に提供します。

(4)TMT などによる地球型惑星の直接観測を実現可能にする超補償光学の技術実証やそれを用いた成果を挙げるための開発を行います。

宇宙における生命の探査は、生命の起源を解明し人類が自らの起源を理解するために欠かせません。すばる2では、この壮大なテーマに挑む足がかりを得るため、超精密視線速度測定観測によって、地球型系外惑星候補天体を同定します。同定された候補天体は、次世代超大型望遠鏡の超高感度・超高解像度観測によって大気組成や生命の徴候の有無などの詳細な調査が行われます。
「我々が住む地球のような惑星は、宇宙には他にもあるのだろうか?そしてそこに生命はあるのだろうか?」この素朴でありながら根源的な問いは、長らく科学の目標というよりは、哲学的な思考対象だったといえます。しかし、1995年に最初の系外惑星が発見されて以来、これらの問いはまさに天文学が解決すべき具体的な研究対象となっています。そして、すばる望遠鏡、アルマ望遠鏡といった最先端の望遠鏡が、様々な手法を用いて、この問いに応えるべく奮闘しています。
すばる望遠鏡は、これまでに補償光学と高コントラスト観測装置を組み合わせて、主に系外惑星の直接撮像を行い、成果を挙げてきました。すばる2では、これらの研究を継続・発展させつつ、超高精度分光観測によって地球型惑星の間接検出を目指します。ここで用いる手法は「ドップラー法」と呼ばれ、惑星の軌道運動によって主星(恒星)が動かされる様子を、スペクトル線の波長変動(ドップラー変位)として捉えます。この手法では、主星が軽いほど地球型惑星のような小さな惑星を検出しやすいという特徴があります。小さな惑星の弱い重力でも主星を比較的大きく揺り動かすことができるからです。したがって、質量が太陽の半分以下しかない軽い恒星(M 型星)を観測対象とする地球型系外惑星の探査が注目されています。M 型星は低温のため近赤外線を主に放射することから、近赤外線の観測装置が有利になります。すばる望遠鏡に搭載された近赤外線ドップラー分光装置 IRD 以外に、近赤外線で超高精度分光ができる装置は他の 8-10 メートル級の望遠鏡には存在せず、IRD はこの分野の研究においてユニークな位置を占めています。2019年からこの装置を用いて 170 夜の観測時間を投入する大規模観測プログラム(IRD-すばる戦略枠プログラム)を5年間の計画で実施しています。このプログラムや関連観測では 100 個以上の M 型星を近赤外線で超高精度分光観測し、モニター観測では他の望遠鏡とも連携しながら、生命が存在できる範囲(ハビタブルゾーン)にある地球型惑星を検出することに主眼をおいています。ここで検出された惑星は、次世代超大型望遠鏡(TMT、GMT、E-ELT)でより詳しく観測するための重要なターゲットとなります。次世代超大型望遠鏡での観測のためには、超補償光学系の開発が重要ですが、すばる望遠鏡における超補償光学系 SCExAO は、そのための技術実証装置としての役割も果たしています。

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