観測成果

銀河系内

原始惑星系円盤がひっくり返った証拠を発見

2021年2月15日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2021年2月23日

原始惑星系円盤がひっくり返った証拠を発見 図

図1:K2-290 系の模式図。K2-290 の二つの惑星は、その公転の方向が中心星の自転方向と逆行しています。また、二つの惑星の公転面はそろっていますが、中心星の赤道面からは、ずれています。内側の惑星 (海王星くらいの大きさ) は、K2-290 の周りを9日周期で公転し、外側の惑星 (木星くらいの大きさ) は約 48 日の周期で公転しています。 (クレジット:Christoffer Grønne/Aarhus University)

二つの惑星と伴星をもつ太陽系外惑星系 K2-290 をすばる望遠鏡などで観測した結果、惑星が K2-290 の自転方向と逆向きに公転していることが明らかになりました。これは、惑星が形成された原始惑星系円盤が伴星の重力によって傾き、反転したために起こった可能性が高いことが、数値計算により確かめられました。惑星が形成される時期に、伴星によって原始惑星系円盤の向きが大きく変化したという証拠が観測されたのは今回が初めてで、連星をなす惑星系の形成進化過程を論じる上で重要な意味を持ちます。

太陽系の八つの惑星はほぼ同一の軌道面内を公転していて、太陽の自転と同じ向きに公転しています。これは分子雲の収縮で作られた原始惑星系円盤と呼ばれるガスと塵の集まりの中で惑星が形成され、中心の恒星 (中心星) とこの円盤がもともと同じ向きに回転していたためと考えられています。ところが太陽系外に目を向けてみると、太陽系とは異なり惑星の公転方向 (公転軸) が中心星の自転方向 (自転軸) と大きくずれている系が多数存在することが観測的に知られていました (注1)。このような太陽系外惑星 (系外惑星) の公転軸と中心星の自転軸のずれを生み出す機構についてはいくつかのシナリオが提唱されていますが、個々の系でどういったメカニズムが作用したのかはこれまでよく分かっていませんでした。

オーフス大学、東京工業大学などの研究者からなるチームは、K2-290 と呼ばれる系外惑星系をすばる望遠鏡の高分散分光器 HDS などを用いて観測し、K2-290 を公転する二つの惑星の軌道が中心星の自転方向と逆行していることを発見しました (図1、注2)。このように中心星の自転と逆行する系外惑星系は K2-290 が初めてではありませんが、K2-290 の二つの惑星はほぼ同一平面内を公転しているため、この系では原始惑星系円盤が存在していた時代から円盤の回転方向と中心星の自転方向が逆行していた可能性が高いと考えられます。さらに K2-290 は、すばる望遠鏡の IRCS を用いた高解像度の撮像観測によって、惑星系から 100 AU (太陽-地球の距離の 100 倍) 程度離れた場所に小さな恒星 (伴星) が存在することが確認されていました (注3)。これらの事実を踏まえて研究チームが数値計算を実施したところ、K2-290 の惑星の逆行軌道は、惑星の形成が完了する前に伴星の重力によって原始惑星系円盤が大きく傾けられた事に起因する可能性が高いことが判明しました (図2)。

原始惑星系円盤がひっくり返った証拠を発見 図2

図2:K2-290 の惑星形成時の模式図。惑星の生まれる場所となる原始惑星系円盤が中心星を取り囲んでいますが、伴星 (右上の赤い星) からの重力によって、円盤面が大きく傾き、ほぼひっくり返ったような状態になっています。この円盤から生まれた惑星は円盤の回転面にそった軌道を持つことになります。 (クレジット:Christoffer Grønne/Aarhus University)

伴星の重力によって原始惑星系円盤の向きが劇的に変化するというモデルは、理論的には 10 年近く前に提唱されていたことですが、実際にその観測的な証拠が発見されたのは今回が初めてです。これまで、惑星の公転軸と中心星の自転軸がずれている系外惑星系は、惑星が形成された後に複数の惑星同士の重力相互作用 (重力散乱等) を経験した可能性が高いと考えられてきました。本研究は、伴星が存在する惑星系ではそのような過程を経ずとも大きく傾いた軌道が形作られる可能性があることを示しており、連星をなす惑星系の形成進化過程を論じる上で重要な意味を持ちます。研究チームの平野照幸助教 (東京工業大学/自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター/国立天文台ハワイ観測所) は、「今後、伴星を持つ惑星系のさらなる観測によって、K2-290 のように原始惑星系円盤の向きが変化する条件を詳しく調べるととともに、連星をなす惑星系の長期的な安定性を明らかにしたいです」と展望を語っています。


本研究成果は、米国の学術誌『米国科学アカデミー紀要』(PNAS; 2021年2月15日付) に掲載されました (Hjorth et al., "A backward-spinning star with two coplanar planets")。


(注1) 傾いた軌道を持つ系外惑星の例としては、すばる望遠鏡の研究成果「すばる望遠鏡、大きく傾いた軌道を持つ惑星系を次々に発見」 (2010年12月20日リリース) をご覧ください。

(注2) 観測は、すばる望遠鏡の HDS、ガリレオ国立望遠鏡 (TNG) の HARPS-N、VLT 望遠鏡の ESPRESSO (いずれも高分散分光器) を用いて、2019年に行なわれました。K2-290 の二つの惑星が主星の前を横切るときに起こるロシター効果の観測から、それぞれの惑星の公転軸と中心星の自転軸のなす角度が制限されました。

(注3) IRCS による K2-290 の撮像観測は、2018年に行なわれました。この研究成果は、2019年1月15日に発行された英国王立天文学会誌 (MNRAS) に掲載されました (Hjorth et al. "K2-290: a warm Jupiter and a mini-Neptune in a triple-star system")。

■関連タグ