すばる望遠鏡が捉えた広大な宇宙画像の中を「航海」しながら、市民が銀河の研究に参加する「GALAXY CRUISE (ギャラクシークルーズ)」。第2シーズンとして、より深く銀河の謎を探求する「Deep Quest (ディープクエスト)」が始まりました。
GALAXY CRUISE は2019年にスタートしました。目的は、市民と研究者が協力して、銀河の生い立ちと多様性の謎に挑むこと。宇宙には、丸くてはっきりとした構造がない「楕円銀河 (だえんぎんが)」から円盤と渦巻き構造を持つ「渦巻銀河 (うずまきぎんが)」まで、多種多様な形の銀河が存在します。その多様な姿の謎を解く鍵を、銀河同士の衝突・合体が握っているかもしれません。GALAXY CRUISE では、すばる望遠鏡に搭載した超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム、HSC) を使った大規模な戦略枠プログラム (HSC-SSP) の第2期公開データを利用しています。口径 8.2 メートルのすばる望遠鏡の集光力と高い解像度、そして HSC の超広視野を生かして得られた画像では、天体の淡い構造まで鮮明に捉えられています。
第1シーズンでは、2万個以上の銀河を、市民天文学者が分類しました。その結果、一つの銀河について少なくとも 50 名以上が分類し、統計的な解析が十分に行えるだけの分類結果が集まりました。そして、その分類結果を使った科学解析の結果、これまでの研究では楕円銀河に分類されていた銀河から渦巻き構造が、衝突していないと見なされていた銀河から衝突・合体の痕跡が見つかったのです。

図2:口径 2.5 メートルの望遠鏡で撮影された Sloan Digital Sky Survey (スローンデジタルスカイサーベイ、SDSS) の画像 (左) と、GALAXY CRUISE で市民天文学者が分類した、すばる望遠鏡 HSC で撮影された同じ銀河の画像 (右)。左の画像では見えていない渦巻き構造が、右の画像でははっきりと見えています。 (クレジット:SDSS (左)、HSC-SSP/NAOJ (右))

図3:SDSS の画像 (左) と、同じ空の領域をすばる望遠鏡 HSC で撮影した画像 (右)。左の画像では、4つの銀河が横に並んでいるように見えるだけですが、右の画像では、4つの銀河が重力相互作用をしている「衝突」の痕跡がはっきりと見えています。 (クレジット:SDSS (左)、HSC-SSP/NAOJ (右))
第2シーズンでは、第1シーズンと同じ画像に写りこんだ、より暗い銀河を分類の対象とします。同じ距離にある暗く小さな銀河の分類結果が加わることで、さらに詳細な科学解析が可能となります。第2シーズンの副題「Deep Quest」(深い冒険・探求の旅) は、銀河の謎に深く迫るという意味を込めて名付けられました。「船長」こと田中賢幸 (たなか まさゆき) さん (国立天文台ハワイ観測所 准教授) は、「第1シーズンではたくさんの市民天文学者の方々が、良い精度での銀河の分類に参加してくださいました。その結果、研究者だけでは到底達成できない数の分類を使った解析を行うことができ、“すばるクオリティー”でこれまでの研究をやり直す必要性を発見しました。第2シーズンでも、広大な宇宙の航海を楽しみながら、最先端の銀河研究にご協力ください」と述べています。
GALAXY CRUISE は国立天文台の「市民天文学」プロジェクトとして、日本語版を2019年11月1日に、英語版を2020年2月19日に開始しました。それから2年以上を経た2022年4月1日現在、92 の国と地域から 9742 名 (うち、日本からは 6854 名) の参加登録があり、銀河の総分類数は 250 万を超えています。なお市民天文学とは、市民が時には研究者・研究機関と共に行う科学的活動「シチズンサイエンス (citizen science)」の天文学分野での日本語名称として、国立天文台が独自に考案したものです。
市民による銀河の分類結果を使った科学解析から新たな発見が生まれている GALAXY CRUISE。大学生の研究体験プログラムで活用され、若手研究者の育成にも役立つといった発展も見せています。Deep Quest ではどのような旅が待っているのでしょうか。あなたも「乗船」して、研究者と一緒に「航海」を楽しみませんか。
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