米国・カーネギー研究所などの研究チームは、すばる望遠鏡等を用いた観測から、木星の衛星を新たに 12 天体発見したと発表しました。この報告により、これまでに見つかった木星の衛星の数は 92 となり、土星における衛星の発見数(83)を上回りました。
研究チームは太陽系外縁部に存在するとの仮説が提唱されている第9惑星を、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラなどを使って探査しています。2021年と 2022年の観測では、たまたま探査領域の近くに木星があったため、冥王星以遠の天体を探すのと同時に、木星の近くを動いている天体も探すことにしたのです。発見には、すばる望遠鏡(2021年9月)とブランコ望遠鏡(2022年8月)が主に使用され、その軌道を確認するためにマゼラン望遠鏡による追観測が行われました。
今回報告された 12 個の衛星はいずれも直径が3キロメートル以下の小さな天体です。研究チームのスコット・シェパード教授(カーネギー研究所)は、「私たちの探査では、直径1キロメートル以上の全ての木星衛星を検出可能と見積もっています。木星にはこのような天体が 100 個以上あります。木星の月として正式に発表するために、現在も多くの候補天体を追観測しています」と語ります。
このような小さな衛星は、かつて大きな衛星が、彗星や小惑星、他の衛星との衝突でバラバラに破壊されてできたと考えられます。木星の外側の衛星(ガリレオ衛星以遠)は、その軌道の特徴によって7つのグループに分けられます(図2)。それらは、7つの親衛星の破片から誕生した衛星達が、元の衛星の軌道要素を維持している結果として考えられます。
これらの外側の衛星は、巨大惑星領域で形成された天体の最後の残りであり、惑星の形成と進化を理解する上で重要な存在です。今後、ヨーロッパ宇宙機関の JUICE 探査機と NASA のエウロパ・クリッパーが木星を訪れる際に、発見された衛星のいくつかに接近して撮影する機会があるのではないかと研究チームは期待しています。
すばる望遠鏡は自然科学研究機構国立天文台が運用する大型光学赤外線望遠鏡で、文部科学省・大規模学術フロンティア促進事業の支援を受けています。すばる望遠鏡が設置されているマウナケアは、貴重な自然環境であるとともにハワイの文化・歴史において大切な場所であり、私たちはマウナケアから宇宙を探究する機会を得られていることに深く感謝します。