すばる望遠鏡を活用した研究により、早稲田大学高等研究所の嶋川里澄准教授が、令和8年度の文部科学大臣表彰「若手科学者賞」を受賞しました。
若手科学者賞は、独創的な発想や新しい研究分野の開拓によって優れた成果をあげた若手研究者に贈られるものです。嶋川さんは、「宇宙最盛期の原始銀河団で形成される赤色銀河の観測的研究」によって、この栄誉ある賞を受賞しました。
嶋川さんは、「今回評価いただいた研究は、110 億年前の宇宙に存在する古代都市のような天体群『原始銀河団』で、銀河がどのように生まれ、変化していくのかを解き明かしたものです」と話します。この研究には、すばる望遠鏡に搭載された多天体近赤外撮像分光装置「MOIRCS」が不可欠でした。
研究の出発点は、およそ 10 年前にさかのぼります。嶋川さんたちは、すばる望遠鏡を使って、はるか遠くの宇宙で、成長途中にある「原始銀河団」のかすかな光をとらえました。それは、現在の宇宙で見られる巨大な銀河団の「幼年期」にあたる姿でした(関連記事)。
その後、この天体をさらに詳しく調べるため、研究チームは電波で宇宙を見るアルマ望遠鏡や、高感度な赤外線観測を実現するジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡など、世界最先端の望遠鏡を組み合わせて観測を重ねました。こうして 10 年かけて集められたデータから浮かび上がってきたのは、銀河が密集する「宇宙の都市」で起きていた進化の過程でした。そこには、巨大なブラックホールを持ちながらも、新しい星の誕生がほとんど止まってしまった銀河が集まっていたのです。いわば、急速に発展していた宇宙の古代都市が、超巨大ブラックホールの活動の影響によって、成長を止めたような姿が見えてきたのです(関連記事)。
今回の受賞にあたり、嶋川さんは次のように語ります。
「大学院生として国立天文台ハワイ観測所に在籍していた頃に始めた研究が、今回の受賞につながりました。ハワイの素晴らしい観測環境、すばる望遠鏡の運用・開発を日夜支えてくださるスタッフの皆様、共に議論を重ねた共同研究者の皆様、そして日々の生活を支えて下さったハワイ観測所スタッフの方々に、深く感謝申し上げます。ハワイの豊かな文化とマウナケアへの深い敬意を胸に、今後もすばる望遠鏡と共に切り拓いた知見を礎に、宇宙の歴史と真理の探求に邁進して参ります」
嶋川さんとともに研究を行った小山佑世准教授(国立天文台ハワイ観測所)は、次のように語ります。
「嶋川さんとはこれまでにたくさんの研究を一緒に行ってきましたが、いつも彼の豊かな発想力と先見性、そして研究に対して決して妥協しない姿勢に感銘を受けてきました。すばる望遠鏡の観測成果がきっかけとなって嶋川さんの今回の素晴らしい受賞につながったことをとても嬉しく思います」
すばる望遠鏡による観測研究は、これまで多くの優れた研究者を育ててきました。ハワイ観測所では現在も、学生が実際の観測に関わる機会を大切にしながら、次世代の研究者の育成に力を入れています。



