すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム;HSC) は、画素数が8億 7000 万ピクセルあり、一度に満月9個分の広さの天域を撮像することができます。すばる望遠鏡では毎月新月に近い 10 晩ほどが HSC の観測に割り当てられ、空の広い領域が撮像されます。観測時間の一部は、ハワイ観測所主導の「すばる戦略枠プログラム」(通称 SSP) に使われましたが、残りの時間は一般共同利用観測に当てられます。共同利用観測で撮られたデータは各観測者が責任を持って処理することになりますが、処理されたデータは必ずしも一般に公開されるわけではありません。しかしながら、それらのデータの科学的価値は高く、本来の目的以外にも利用できる可能性があります。そこで、公開されている共同利用観測の生データを処理し、世界に向けて広く公開することで、未解決の問題の手がかりや、新たな謎、新しい発見を促そうと、ハワイ観測所では 2021年に Hyper Suprime-Cam Legacy Archive (HSCLA) を立ち上げました。HSCLA では観測データから空の状態や装置の特性を除去した、真の宇宙の姿を画像にまとめ、そこに写っているさまざまな天体の明るさ、色、大きさ、形などの計測結果を公開しています。
2021年のリリースでは2014年に取得されたデータのみを公開しました。このたびのリリースでは、新たに2015年、2016年の比較的観測条件の良いデータ (およそ2万回の露出で総計 800 時間分) を加え、最新の解析手法 (HSC pipeline v8) で処理されたデータが公開されます。迫力のある画像も多く含まれています (図1、図2)。本リリースの総データ量は中間処理のものも含め、450 テラバイトというビッグデータとなっています。HSCLA 全体では、約 3400 平方度 (空の約8パーセントの領域) が公開され、測定された天体数は7億7千万個になりました。
データ処理を行なったハワイ観測の原沢寿美子特任専門員は「HSCLA ではビックデータを効率よく解析するためのツールも提供しています。これらのツールを使って、まだ誰にも見つからず埋もれている貴重な情報を HSCLA からたくさん発掘し、その楽しさを存分に味わっていただきたいです。大発見も期待しています」と HSCLA が広く研究に活用されることを期待しています。