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「時間との勝負に挑む」新分光器 NINJA が始動

2026年7月13日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2026年7月13日

新しい近赤外線分光器「NINJA(ニンジャ)」が今夏、すばる望遠鏡に搭載され、初めての試験観測に挑みます。発見からわずか数日で急速に明るさを変える重力波天体の観測など「時間との勝負」に力を発揮する新しい観測装置です。

「時間との勝負に挑む」新分光器 NINJA が始動 図

図1:ハワイ観測所山麓施設に到着した NINJA と開発チームの東谷千比呂 博士(国立天文台先端技術センター;写真右)と森鼻久美子 博士(ハワイ観測所;写真中央)、ハワイ観測所装置エンジニアリング部門(当時)の Matthew Wung さん(写真左)。(クレジット:国立天文台)

重力波観測によって、中性子星どうしの合体のような激しい天体現象をとらえられるようになりました。このような突発的な現象は、発見されてから数日のうちに刻々と状態が変化し急速に暗くなります。これを素早く分光観測することで、合体のメカニズムや、宇宙において金や白金など重元素がどのように作られるかを詳しく調べることができます。NINJA(Near-INfrared and optical Joint spectrograph with Adaptive optics)は、そのような「時間との勝負」の観測に対して、「即応性」「高効率」「高感度」の3つの特徴で真価を発揮します。

即応性:NINJA は望遠鏡に常設されているため、装置を交換することなく、観測が始められます。
高効率:近赤外線の 0.85 ~ 2.5 マイクロメートルにわたるスペクトルを、一度の観測で取得できます。すばる望遠鏡で、この波長範囲を一度に観測できる分光器は初めてです。
高感度:大気のゆらぎによる星像のぼけを補正する補償光学と NINJA を組み合わせることで、より暗い天体まで高い感度で観測できるようになります。

この3つの特徴を生かし、NINJA は重力波天体のような突発的な現象だけでなく、宇宙初期の遠方銀河の観測でも威力を発揮すると期待されています。

国立天文台先端技術センター(東京都三鷹市)を拠点に開発が進められてきた NINJA は、各種性能試験をほぼ終え、2026年2月にハワイへ輸送されました。今夏にはいよいよすばる望遠鏡に搭載され、初めての試験観測に挑みます。

NINJA の開発では、早稲田大学と東京大学の3名の大学院生が中心となって活躍しています。天体の光を正確に分光器へ導く技術や、極低温で動作する装置の制御、検出器から微弱な信号を高精度に読み出す技術など、NINJA の性能を左右する開発課題に取り組んでいます。

2026年3月には、早稲田大学先進理工学研究科博士課程の佐藤理究さんが、ハワイ島ヒロにある山麓施設で NINJA の動作確認試験を行いました。NINJA はレンズやセンサー、電気配線などを全て組み込んだ状態で三鷹からヒロへ輸送したため、輸送中に装置内に問題が起きていないか確認する重要な作業でした。

佐藤さんは「先端技術センターで、自分が関わった装置が少しずつ形になっていく過程を見るのは間違いなく楽しかったです。装置を送り出したときは、本当にハワイに行く実感がわきませんでしたが、自分が実際にハワイに来て、無事に到着した装置に触れたときは感慨深いものがありました。この装置を使って遠方銀河などの観測研究に取り組めることを楽しみにしています」と語ります。

「時間との勝負に挑む」新分光器 NINJA が始動 図2

図2:国立天文台先端技術センターにて、ハワイへの輸送をひかえた NINJA の内部を確認する佐藤理究さん(中央)と国立天文台科学研究部の守屋尭 博士(左)。(クレジット:国立天文台)

佐藤さんは現在、NINJA の初観測に向け、すばる望遠鏡から NINJA を制御するためのソフトウエアの開発にも取り組んでいます。望遠鏡と NINJA をつなぐ大切な作業です。NINJA の今後の活躍にご期待ください。


NINJA の開発は、科研費基盤研究(S)「高感度広帯域近赤外線分光で読み解く重力波源における元素合成」(JP21H04997)の助成を受けて実施されています。また、本研究は国立天文台先端技術センターの共同開発研究として進められ、同センターの設備と技術的支援を活用しました。NINJA のすばる望遠鏡への導入にあたっては、国立天文台ハワイ観測所のスタッフが輸送や設置までの各段階を支えました。

私たちは、マウナケアがハワイの人々にとって文化的・精神的に特別な意味を持つ場所であることを尊重し、この地で天文学研究を進める機会を支えてくださっている地域社会のみなさまに感謝するとともに、自然環境と文化への敬意を持って研究活動に取り組んでまいります。

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