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すばる望遠鏡は、日本の天文学の「存在感」をどう高めたか―初期の成果論文のインパクトを測定

2026年2月23日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2026年2月23日

すばる望遠鏡の建設が、日本の天文学研究にどのような影響を与えたのかを、初期の成果論文の数や被引用回数をもとに定量的に分析した研究が発表されました。すばる望遠鏡は、世界的な注目を集める研究を数多く生み出し、日本の研究の国際的な存在感を大きく押し上げたことが、論文データから明らかになりました。

すばる望遠鏡は、日本の天文学の「存在感」をどう高めたか―初期の成果論文のインパクトを測定 図

図1:1998年12月24日、エンジニアリングファーストライトの夜を迎えるすばる望遠鏡(クレジット:国立天文台)

宇宙をより詳しく調べるためには、より大きく、より高性能な望遠鏡が必要になります。世界最高水準の望遠鏡で天文学の最前線に立ちたい―そんな日本の天文学者の長年の夢は、1999年、ハワイ・マウナケア山頂域にすばる望遠鏡が完成したことで現実のものとなりました。

すばる望遠鏡は、ファーストライトで公開された鮮明な宇宙画像によって大きな注目を集め、その後も、銀河や恒星、系外惑星など、さまざまな天体に関する観測成果を次々と生み出してきました。現在では、日本が誇る光学赤外線望遠鏡として国際的にも高く評価されています。一方で、その科学的貢献は、発見の数や話題性だけでなく、研究成果の論文が世界でどれだけ参照され、影響を与えているかという観点からも測ることができます。

東北大学学際科学フロンティア研究所の藤原英明博士は、国際的な論文データベースを活用し、1996年から 2007年までに発表された天文学・宇宙物理学分野の査読論文を調査しました。その中から、すばる望遠鏡の観測データを用いた論文を特定し、日本全体および世界全体の論文と比較しました。そして、すばる望遠鏡が本格的に稼働を始めた 2000年前後で、日本の天文学者が関わった論文の数や、論文がどれほど重要視され注目を集めたのかを示す、被引用数がどのように変化したのかを、世界の傾向と照らし合わせて分析しました。

その結果、日本全体の論文数は調査期間を通じて大きく変わらなかった一方で、すばる望遠鏡を用いた論文は、世界平均の2倍以上引用されるものが多く、特に被引用度の高い論文の割合が、日本全体や世界平均を大きく上回っていることが分かりました(図2)。

すばる望遠鏡は、日本の天文学の「存在感」をどう高めたか―初期の成果論文のインパクトを測定 図2

図2:天文学・宇宙物理学分野の査読論文を対象に、被引用度を示す指標を、すばる望遠鏡を用いた論文(青)、日本全体(オレンジ)、世界全体(緑)で比較した図。横軸は論文の出版年。(上)同じ分野、出版年、論文種別の世界平均と比べて、どれだけ多く引用されているかを示す指標(FWCI)の比較。1が世界平均、2は世界平均の2倍引用されていることを意味します。(下)被引用数が特に高い論文(上位 10 パーセント)の割合を比較したもの。10 が世界平均を表します。(クレジット:Fujiwara 2025; based on Scopus/SciVal data)

これは、すばる望遠鏡のデータを用いた研究が、国内外で高い可視性と学術的影響力を獲得していたことを示しています。すばる望遠鏡が新たな研究能力を提供しただけでなく、日本の天文学研究の国際的な存在感を向上させたことが分かります。

こうした高いインパクトの背景には、いくつかの要因が考えられます。すばる望遠鏡は、広視野カメラや高分解能分光装置など、独自の特長を備えた観測装置によって、国際的に競争力のある研究を可能にしました。また、国際共同研究を重視する運用方針が世界中の研究者との連携を促しました。その結果、日本の研究者が最先端の観測研究や国際的な研究ネットワークに参加する機会が広がり、長期的な研究基盤の形成に寄与したと考えられます。

本研究の結果は、大規模研究インフラが新たな発見を生み出す装置であるだけでなく、国レベルの研究可視性や競争力を高める重要な手段であることを示しています。すばる望遠鏡の事例は、大型の観測施設が、国全体の学術的パフォーマンスに対して、きわめて大きな影響を及ぼし得ることを明確に示すものです。


本研究成果は、日本天文学会欧文研究報告『Publications of the Astronomical Society of Japan』に 2025年9月17日付で掲載されました(Fujiwara 2025 "A bibliometric analysis of the scholarly impact of early Subaru Telescope-based publications")。

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