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ベラ・C・ルービン天文台の始動に国立天文台の研究者も協力

2025年6月23日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2025年8月3日

ベラ・C・ルービン天文台は、世界最大のデジタルカメラによる観測画像を 2025年6月23日(現地時)に初公開しました。今後、このカメラを用いた大規模撮像探査プロジェクト「LSST(Legacy Survey of Space and Time)」が本格的に始まります。LSST には、国立天文台の研究者を含む日本の研究者も多く参加しており、これから、すばる望遠鏡との連携による新たな科学成果が期待されます。

ベラ・C・ルービン天文台の始動に国立天文台の研究者も協力 図

図1:ベラ・C・ルービン天文台から初公開された画像のうちの1枚。LSST カメラが捉えたおとめ座銀河団のごく一部(視野の2パーセント)を示しています。2つの目立った渦巻(うずまき)銀河(右下、NGC 4411a と NGC 4411 b)や、その上にみえる合体中の銀河グループ(RSCG 55)、遠方の銀河群のほか、天の川銀河内の多数の恒星などが映っています。オリジナル画像はこちら。(クレジット: NSF-DOE Vera C. Rubin Observatory)

NSF-DOE ベラ・C・ルービン天文台(以下、ルービン天文台)は、米国が主導し、南米チリ共和国のセロパチョン山に建設された次世代の天文観測施設です(注1)。口径 8.4 メートルの光学赤外線望遠鏡と 32 億画素の「LSST カメラ」の組み合わせは、8メートルクラスの望遠鏡としては最大の視野を持ち、満月 45 個の広さに相当する範囲の空を一度に観測できます。

LSST カメラを用いた大規模撮像探査プロジェクト「LSST」は、2025年後半から 10 年間にわたり、可視光線から近赤外線の波長域で南半球の空全体(約2万平方度)を繰り返し撮像し、データを蓄積します。この壮大で野心的な計画から、太陽系小天体、銀河、超新星、ダークマターなど、幅広い分野での新たな発見が期待されています。

この国際的なプロジェクトに、日本の研究者も積極的に参加しています。日本の研究グループは、特に、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)によって広視野撮像探査で世界をリードしてきました。その経験と実績、さらにすばる望遠鏡の観測時間の提供も含めた貢献が評価され、LSST の貢献メンバーとして認められています。国立天文台からは、宮崎聡(みやざき さとし)教授、古澤久徳(ふるさわ ひさのり)准教授、内海洋輔(うつみ ようすけ)准教授、小池美知太郎(こいけ みちたろう)研究技師らが、HSC の開発や運用、データ解析の経験を生かして LSST に参画しています。このような貢献により、日本の研究者コミュニティは審査の上で優先データアクセス権を取得していて、今後の LSST を見据えた研究を開始しています。

すばる望遠鏡では、2025 年から超広視野多天体分光器 PFS(Prime Focus Spectrograph、プライム・フォーカス・スペクトログラフ)の運用が始まりました。撮像探査に特化したルービン天文台と、超広視野分光という新たな力を備えたすばる望遠鏡との連携で、天文学の新たな地平が切り開かれようとしています。

ベラ・C・ルービン天文台の始動に国立天文台の研究者も協力 図2

図2:ベラ・C・ルービン天文台から初公開された画像のうちの1枚。おとめ座銀河団全体を捉えたこの画像は LSST カメラの視野の 2.4 倍に相当します。この画像には約 1000 万個の銀河が含まれており、これは LSST が今後 10 年で撮影する約 200 億個の銀河の約 0.05 パーセントにあたります。拡大縮小可能な画像はこちら、オリジナル画像はこちら。天体名が記された画像はこちら。(クレジット:NSF-DOE Vera C. Rubin Observatory)

内海准教授は、「LSST の観測開始は、超広域サーベイ天文学、時間領域天文学にとって画期的なマイルストーンです。私自身、15 年以上前に HSC の開発に参加し、現在は LSST の一員として携わって8年になります。20 年以上にわたる技術的進展と、すばる望遠鏡およびアメリカを中心としたコミュニティによる国際的な協力の積み重ねが、この新たな人類の「目」を生み出したことに、深い敬意と誇りを感じています。今後、LSST がもたらす新たな発見と科学の扉の広がりを楽しみにしています」と語っています。

ベラ・C・ルービン天文台の始動に国立天文台の研究者も協力 図3

図3:LSST カメラを搭載したベラ・C・ルービン天文台のシモニー・サーベイ望遠鏡。夜空に向けた初エンジニアリング観測が行われた 2025年4月15日に撮影。(クレジット:RubinObs/NSF/DOE/NOIRLab/SLAC/AURA/Hernan Stockebrand)

(注1)NSF-DOE ベラ C. ルービン天文台は、米国立科学財団(NSF)および米国エネルギー省科学局(DOE Office of Science)の支援により、設立・運営されています。

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