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マウナケアから見えた皆既月食

2025年3月23日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2025年5月21日

2025年3月13日、南北アメリカ大陸や太平洋などで皆既月食が見られました。日本などではみられないこの皆既月食を世界に届けるため、ハワイ観測所の主催としては初の月食ライブ配信を実施しました。当日は強風と天候悪化が心配されましたが、無事にマウナケアの天文台群を前景に皆既月食の全工程をカメラに収める事ができました。

マウナケアから見えた皆既月食 図

図1:マウナケア山頂域で撮影した皆既食中の月。(Canon EOS 600D, 0.5 sec exposure, 300mm, f5.6, ISO 800)(クレジット:Dr. Vera Maria Passegger/NAOJ)

マウナケアから見えた皆既月食 図2

図2:月食の異なる段階と前景のマウナケア天文台群の合成写真。すばる望遠鏡施設から撮影。望遠鏡は左から順に、NASA 赤外線望遠鏡施設(IRTF)、カナダ-フランス-ハワイ望遠鏡(CFHT)、ジェミニ北望遠鏡、ハワイ大学 2.2 メートル望遠鏡、UK 赤外線望遠鏡(UKIRT)。高解像度画像はこちら(2.2 MB)。(Canon EOS 600D, 10 min exposure, 18mm, f5.6, ISO 3200)(クレジット:Dr. Vera Maria Passegger/NAOJ)

マウナケアから見えた皆既月食 図3

図3:部分食の始まりから終わりまでの合成写真。高解像度画像はこちら(300 KB)。(Canon EOS 600D, 10 min exposure, 18mm, f5.6, ISO 3200)(クレジット:Dr. Vera Maria Passegger/NAOJ)

マウナケアから見えた皆既月食 図4

図4:マウナケアの東の空に昇った月。本影食が始まる前の姿で、月の下には空に映るマウナケアの影が広がっています。高解像度画像はこちら(2.2 MB)。(Canon EOS 600D, 1/200 sec exposure, 92mm, f6.4, ISO 200)(クレジット:Dr. Vera Maria Passegger/NAOJ)

マウナケアで月食の姿を捉えたベラ・マリア・パッセガー(Vera Maria Passegger)さんは、「皆既食中の月が赤く見えるのは、太陽光が地球の大気を通過する際に、青い光が大気中の分子によって散乱されるためです。散乱されにくい赤い光が大気を通り抜け、皆既食中の月面を照らすのです」と説明します。

一方、ライブ配信の傍ら皆既月食中の夜空を写真に収めた、サポートアストロノマーの田中壱さんの写真には、地球から見て太陽の位置と反対方向の夜空がぼんやりと光る「対日照(たいにちしょう)」と呼ばれる光が捉えられていました(図5)。地球から見た太陽の見かけの通り道を黄道とよびますが、黄道に沿って観測される淡い光の帯、黄道光(こうどうこう)が日の出前や日の入り後に見えることがあります。それに対し、対日照は、黄道上の太陽のほぼ反対側に観測される淡い光で、黄道光よりもさらに淡く、夜間に見られます。黄道光と対日照はどちらも、黄道面付近に漂う塵(ダスト)が太陽光を散乱することで見えていると考えられています。「月が地球の影の中に入るのが皆既月食なので、皆既中の月は常に対日照の中に入っている事になります。しかし、対日照は大変淡いため、そういう風景の撮影を実際にするのはなかなか困難です。マウナケアの夜空ならではの星景写真と言えるでしょう」と田中さんは語ります。

マウナケアから見えた皆既月食 図5

図5:すばる望遠鏡と皆既食中の月(中央左寄りの明るい点)。左下にすばる望遠鏡の観測棟、その上側にケック望遠鏡が写っています。右側には天の川が見えます。目を凝らすと、月の左下から右上に向かって淡く対日照が写っています。高解像度画像はこちら(2.1 MB)。対日照や写りこんでいる天体の説明を加えた白黒反転画像はこちら。(Canon EOS 600D, 15mm, f4.5, ISO 25600, 15 sec exposure,11 frames composite)(クレジット:田中壱/NAOJ)

すばる望遠鏡 YouTube では、ハワイ時間午後7時から 10時30分の間、マウナケアよりライブ配信を行いました。日本、米国、ブータン、カナダ、台湾など、様々な国・地域の方がマウナケアでの月食の様子をリアルタイムで楽しみ、累計1万人以上が視聴しました。皆既食が始まった頃には、同時視聴者数が 500 を超えました。

動画:すばる望遠鏡公式 YouTube チャンネルからライブ配信された皆既月食。すばる望遠鏡 YouTube サブチャンネル「管理人_SubaruTel_StarCamAdmin」では、2台の星空ライブカメラ、東向きすばる-朝日星空ライブカメラと西向き CFHT-朝日星空ライブカメラが捉えた空の明るさの変化動画と、すばる全天カメラによるタイムラプス動画が視聴可能。(クレジット:NAOJ)

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