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すばる望遠鏡、地球衝突の可能性が指摘された小惑星 2024 YR 4 の位置測定観測に成功

2025年2月24日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2025年7月10日

すばる望遠鏡が、2032年に地球に衝突する可能性が指摘されていた小惑星「2024 YR4」の撮影に、ハワイ現地時の 2025年2月20日(日本時間2月21日)に成功しました。今回の観測で得られた小惑星の位置測定データは、この天体の衝突確率の精度を上げるために活用されました。

すばる望遠鏡、地球衝突の可能性が指摘された小惑星 2024 YR <sub>4</sub> の位置測定観測に成功 図

図1:HSC による撮像画像。画像中心付近に位置する小惑星 2024 YR4 が、背景の恒星や銀河に対して移動している様子が確認できます。15 分の間に撮影された 120 秒間露出の画像(30 秒角にトリミング)を使用して作成したアニメーション。(クレジット:NAOJ)

2024年12月に発見された小惑星 2024 YR4 は、直径 40-90 メートル程度の大きさと推定され、長い楕円軌道を描きながら約4年の周期で太陽を公転しています。公転期間の多くは地球から遠く離れていますが、太陽に近づく際には地球軌道と交差し、まれに地球に接近します。この小惑星が 2032年12月にわずかながら地球に衝突する可能性があるとして、国際連合宇宙部が事務局を務める国際小惑星警報ネットワーク(IAWN)による小惑星衝突の可能性に関する初めての通知が、出されました。このことをきっかけに、この小惑星の軌道を正確に特定するための観測が世界中で進められています。

今回のすばる望遠鏡による 2024 YR4 の観測は、IAWN の要請を受けた JAXA プラネタリーディフェンスチームからの依頼に基づいて行われました。ハワイ現地時の 2025年2月20日に、超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)を用いた観測で 2024 YR4 の撮影に成功し(図1、2)、天体の位置を正確に測定することができました。測定されたrバンドでの明るさは 24.3 等級でした。

本観測を遂行した国立天文台ハワイ観測所の寺居剛(てらい つよし)博士は、「2024 YR4 は、発見当時は比較的明るく見えたものの、その後地球から遠ざかるのに伴いどんどん暗くなり、2月後半には大型望遠鏡でなければ観測が困難な状況でした。すばる望遠鏡の大きな集光力と HSC の高い撮像性能を生かして、本観測ミッションは達成されました」と語ります。

この観測成果は、国際天文学連合の小惑星センターに報告され、2024 YR4 の軌道要素(軌道を表わす数値)の精度向上に寄与しました。IAWN によると、改善された軌道要素から求められた 2032年の地球への衝突確率は 0.004 パーセント(2025年2月23日時点)と、2月上旬に発表された確率よりも大幅に下がりました。

すばる望遠鏡、地球衝突の可能性が指摘された小惑星 2024 YR <sub>4</sub> の位置測定観測に成功 図2

図2:HSC 画像から、小惑星 2024 YR4(緑十字でマーク)を中心に南北1分角、東西2分角の領域を切り出したもの。rバンド(波長 550-700 ナノメートル)で 120 秒間の露出で撮影。観測は 2025年2月20日20時40分から21時00分(ハワイ現地時)に、快晴(0.5 秒角のシーイング)の天候の下で行われました。マークなしの画像はこちら。(クレジット:NAOJ)

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