国立天文台ハワイ観測所の谷口大輔研究員、濱野哲史研究員を含む共同研究グループは、ダークマターが崩壊する際に放出する光子の近赤外線帯での検出実験を世界で初めて実施し、ダークマターの寿命に対してこれまでにない厳しい制限を与えることに成功しました。
研究グループは、南米チリにあるマゼラン望遠鏡に搭載されている近赤外線高分散分光器 WINERED(ワインレッド)を用いて、ダークマターが高密度に存在する銀河(矮小楕円体銀河)を観測し、ダークマターの崩壊で生成される線スペクトルの検出に挑みました。

図1:(左)口径 6.5 メートルのマゼラン望遠鏡に取り付けられた WINERED 分光器(右側のナスミス台に置いてある赤い箱)。(左・中央)谷口研究員と(右)濱野研究員(クレジット:国立天文台/谷口/濱野)
「本研究は、理論物理学研究者と観測天文学研究者がタッグを組むことで初めて実現しました。これまでに培ってきた、すばる望遠鏡などの可視光・赤外線望遠鏡を活用した経験が大いに活かされたと考えています」と谷口さんは振り返ります。「ダークマターという物理学における重要な問いに、斬新な発想と最新技術でチャレンジする大変意義のある研究成果です。今後の観測・技術の進歩によるさらなる成果が期待されます」と濱野さんは続けます。さらに谷口さんは「今後、すばる望遠鏡などを観測に用いることで、より広い波長帯で同様なダークマター探索を行えるようになると期待しています」と展望を語ります。
詳しくは東京都立大学の発表をご覧ください。
本研究成果は米国の物理学専門誌『フィジカル・レビュー・レターズ』に 2025年2月7日付で掲載されました(Wen Yin et al. "First Result for Dark Matter Search by WINERED")。