すばる望遠鏡のデイクルー 10 名が「マウナケア山頂施設の継続的な点検保守及び大型観測装置交換による、すばる望遠鏡の長期安定運用への貢献」という業績により、令和4年度国立天文台長賞 技術・開発部門を受賞しました。国立天文台長賞は、研究教育、技術・開発、事務等において国立天文台へ顕著な貢献をした台内外の個人および少人数のグループに贈られます。

図1:2023年4月27日(ハワイ時)に行われた授賞式にて、デイクルーと常田台長との集合写真。(左から)ロレト・ビレガス-ビレザ・ジュニアさん、クリストファー・ボゲスさん、テイジ・チバさん、テリー・ヘニンガーさん、常田佐久台長、ジョナ・コノルさん、ジョルダン、アキオナさん、ジェームス・フェレイラさん、マイケル・カーンズさん、レイモンド・アダムスさん。左右二人の写真は後日合成。ベンジャミン・バージンさんは欠席。(クレジット:国立天文台)
デイクルーは日中にマウナケア山頂域の望遠鏡施設に上がり、すばる望遠鏡が毎晩の観測で最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、装置交換や望遠鏡のメンテナンスを行います。デイクルーは二つのチームに分かれており、「デイクルー1」は午前6時に、「デイクルー2」は午前8時にヒロの山麓施設を出発し、マウナケアに向かいます。毎日の作業内容は計画的に決められており、日によって異なります。
すばる望遠鏡の最大の特長は、望遠鏡の一番上にある主焦点に観測装置を搭載できることです。2023年現在では、超広視野主焦点カメラ HSC(Hyper Suprime-Cam)が稼働するとともに、すばる超広視野多天体分光器 PFS(Prime Focus Spectrograph)が稼働開始を目指して試験観測を行っています。3トンもの重量があり、人間の身長より高い HSC を、床面から約 20 メートルの高さにある主焦点に取り付けるのはデイクルーの仕事です。また、他の焦点にある観測装置を使用する際は、HSC や PFS の主焦点装置を取り外して副鏡を取り付けなければいけません。
「標高約 4200 メートル、酸素が地上の約6割しかない過酷な環境で、天気の変化などに留意しながら安全に作業し、さらには主焦点での高所作業も難なくこなすデイクルーの皆さんには脱帽の思いです。彼らの努力が、すばる望遠鏡による数々の観測成果につながっていることは間違いありません」と、宮崎聡ハワイ観測所長はデイクルーへの感謝を述べています。
ハワイ島ヒロの山麓施設で執り行われた授賞式では、常田台長からデイクルー一人一人に賞状と記念品が手渡されました。その後、デイクルー1のマイケル・カーンズさんと、デイクルー2リーダーのクリストファー・ボゲスさんが、受賞記念講演を行いました。講演では、積雪後に凍り付いた山頂施設で雪と氷を除去する様子、安全トレーニングや装置交換の様子、さらには国立天文台三鷹で開催された技術シンポジウムに参加した時の様子など、様々な写真を交えてデイクルーの仕事が紹介されました。

図2:受賞記念講演を行うクリストファー・ボゲスさんとマイケル・カーンズさん(左)と、デイクルーが床から約 20 メートルの高さで、超広視野多天体分光器 PFS の主焦点装置を取り付ける様子(右)。(クレジット:国立天文台)
「国立天文台長賞をいただき、嬉しく思います。デイクルーに限らず、ハワイ観測所の皆さんによる、とても素晴らしいチームの一員として働いているからこその受賞だと思います。今後もすばる望遠鏡が順調に観測を続け、沢山の成果が出せるように支えてまいります」と、デイクルー1リーダーのジェームス・フェレイラさんは受賞の喜びを語っています。