小学生 VEX IQ (ヴェックス・アイキュー) 2022年ハワイ州大会が開催され、ハワイ観測所と国立天文台 TMT プロジェクトの7名が審査員を務めました。他の審査員と共に、参加した小学生にインタビューしたり、各チームが提出した「エンジニアリング・ノートブック」を審査したりして、優秀チームを選出しました。
VEX は、世界中で行われているロボット工学プログラムで、未就学児から大学生までの年齢に対応した教育プログラムと大会があります。その一つ、VEX IQ は、小中学生に STEM (科学・技術・工学・数学) の面白さを体験してもらうものです。子どもたちは、プログラムや大会への参加を通じて、創造力、チームワーク、リーダーシップ、問題解決力を身につけていきます。地区大会は秋に開催され、そこで代表に選ばれたチームは、冬の終わりに開催される州大会に進みます。州や国の代表となったチームは、アメリカの学年末 (5月頃) に開催される世界大会に参加します。
ハワイ州小学生の大会には、ハワイ島とオアフ島の 10 の学校や団体から、20 チームが参加しました。各チームは、8~11 歳の児童2~4名からなります。オンラインでの事前インタビューが 2022年2月27日に、対面トーナメントがハワイ大学ヒロ校体育館で 2022年3月5日に開催されました。
2月27日には、審査員が各チームに 15 分間ずつインタビューを行いました。どのくらいロボットを深く理解しているか、熱心に活動しているかを知るために「どのような試合戦略をたてましたか?」、「ロボットのどの部分に思い入れがありますか?」、「自動走行プログラムを作成しましたか?」などの質問をしました。
3月5日のトーナメントでは、審査員は各チームが提出したエンジニアリング・ノートブック (活動記録ノート) をひとつひとつ注意深く確認しました。ノートから、しっかり戦略をたてたのか、丁寧に進捗状況を記録したのかが読み取れます。「子ども達が多角的に物事を考え、戦略をたてるスキルを身につけるには、記録をつける習慣づけが必要です。エンジニアや科学者になるための基本です」と、ハワイ・スペース・グラント・コンソーシアムの元教育者で、ハワイ州のロボット工学プログラムを創始した、リーン・キムラさんとアート・キムラさんは述べています。実際、州の代表チームを選出する際には、トーナメントでの得点よりも、エンジニアリング・ノートブックがどれだけしっかり書かれていたかに重点が置かれました。

図1:各試合では、2チームが協力して得点を稼ぎます。それぞれのチームが自作のロボットを操作し、ロボットがボールをバスケットに投げ入れたり、バーの下をくぐったりすると得点になります。いろんなチームと組んで何度も試合を行い、得点を加算していきます。(クレジット:国立天文台)
現在ハワイでは、たくさんの小学校、中学校、高校で、ロボット工学クラブが元気に活動しています。そのきっかけを作ったのが、20 年以上前に最初の予算を獲得し、地元の学校と共にロボット工学プログラムを浸透させたアート・キムラ、リーン・キムラ両氏です。ハワイ観測所ソフトウェアエンジニアのラッセル・カックリーさんは、当時、ハワイ観測所山麓施設の隣にあるジョイント・アストロノミー・センター (現 東アジア天文台) で働いていました。「私が初めて VEX に参加したのは 2004年のことです。その頃、先生方は必要な技術を子どもたちに教える方法が分からず、私はワイアケア中学校とホノカア中学校・高校で指導の手伝いを始めました。その後、ハワイ観測所に移ってからも続けているので、20 年近くにわたって関わっていることになります。今回の小学生州大会では、多くのハワイ観測所スタッフが審査員に名乗りをあげてくれ、とても嬉しく思います」と語っています。ワイアケア中学校の数学教員で、大会の運営を率いたゲイル・カメイさんは「ロボット工学プログラムは、理系の進路を考え始める素晴らしいきっかけとなります。この大会は、間違いなく、地元の子どもたちに大きな影響を与えたことでしょう。私は、体育館に入ったとたんに目を見張ってトーナメントに夢中になった子を目撃しました。今後も、マウナケア天文台群から多くの工学・理学の専門家が、ロボット工学のイベントに参加してくれることを願っています」と述べています。
ハワイ観測所と国立天文台 TMT プロジェクトからは、ラッセル・カックリー、ジュリアン・ルセール、サドマン・アリ、ヴィンセント・デオ、アンドリュー・ニューガーテン、臼田-佐藤功美子、林左絵子が審査員としてこの大会に参加しました。審査員の多くは、小学生が元気に楽しみながらロボットを操作する様子と、長年にわたって洗練された大会の運営に感銘を受け、今後も地元での理系教育に関わりたいと考えています。

図3:ハワイ観測所から 3月5日の対面トーナメントに参加した5人の審査員。(左から) 臼田-佐藤功美子、ジュリアン・ルセール、ラッセル・カックリー、アンドリュー・ニューガーテン、ヴィンセント・デオ。他の審査員はオンラインで参加しました。(クレジット:国立天文台)