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ハワイ観測所の研究員が日本天文学会研究奨励賞を受賞

2022年3月14日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2023年9月21日

ハワイ観測所の特任研究員であるケネス・ワン博士が、2021年度日本天文学会研究奨励賞を受賞しました。受賞対象となった研究は、「強い重力レンズを用いた観測的宇宙論の研究」です。

ワン博士は、重力レンズ効果の影響を受けたクエーサーの観測から宇宙の膨張率を測定するという独創的な研究において、国際研究チームの中で主導的な役割を果たしました。その結果得られた膨張率は、 Ia 型超新星を用いた近傍宇宙での値に近く、初期宇宙の観測から得られる膨張率より大きな値でした。宇宙の膨張率を、従来とは異なる手法を用いて導き出したこの研究は、近傍宇宙と初期宇宙の食い違いを支持し、標準宇宙論モデルに修正を迫るものです。また、宇宙論と、天文学の幅広い分野に大きなインパクトを与えるだけでなく、その後の多くの関連研究につながるなど、新しい研究の潮流を作っています。

ワン博士は、Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム) を用いたすばる戦略枠プログラム (HSC-SSP) にも参加しています。強い重力レンズワーキンググループの共同議長の一人として活躍するほか、HSC-SSP データを用いて、視線方向の物質が強い重力レンズの観測に与える影響を検証するなど、この分野において主導的な役割を果たしています。

ワン博士は、「日本天文学会より栄えある賞をいただき光栄に思います。国立天文台をはじめ日本の天文コミュニティの支援があって、この研究を実現することができました。国内外を問わず数多くの優秀な研究者たちと共に研鑽を重ね、すばる望遠鏡のような先端施設を使うことができ、恵まれた環境で研究することができました。今後もこのような共同研究を続け、HSC-SSP など、期待の高い研究プロジェクトに取り組む所存です」と受賞の感想を述べています。

ハワイ観測所の研究員が日本天文学会研究奨励賞を受賞 図

ケネス・ワン博士 (クレジット:国立天文台)

日本天文学会研究奨励賞は、日本天文学会が1988年に創設し、次世代の天文学を担う研究者で優れた研究成果を挙げている者を表彰する制度です。受賞記念講演は日本天文学会2022年春季年会会期中の3月5日にオンラインで行われました。

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