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コロナ禍で頑張るすばる望遠鏡 (1)

2020年9月30日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2020年10月2日

2020年に入り世界的な広がりを見せた新型コロナウイルス感染症は、ハワイ州における社会活動やすばる望遠鏡の運用に今も大きな影響を及ぼしています。

「ハワイ州が、新型コロナウイルス (COVID-19) の感染拡大防止のため、自宅待機令を出したことを受け、ハワイ観測所は、ハワイ時間 (HST) の2020年3月25日から4月30日まで、すばる望遠鏡の運用と観測を停止します」

この「お知らせ」がすばる望遠鏡ウェブサイトに掲載されたのが2020年3月24日のことです。その後、運用・観測休止期間は延長され、すばる望遠鏡が観測を再開できたのは5月18日の夜。およそ7週間にわたって、すばる望遠鏡は観測の休止を余儀なくされました。

「それまで比較的安全だと思っていたハワイ州で急速に感染者数が増え、州が自宅待機令を出すに至って、背筋に冷たいものが走るのを感じました。これは観測どころではない、まずは職員とコミュニティの安全をはからねばならない。マウナケアの他の天文台の方々とも協議して、足並みを揃えて観測所の運用を停止することにしました。マウナケア山頂域は春を迎えて天候が安定してきていました。その様子を見つつ断腸の思いで観測休止に踏み切りました」。吉田道利ハワイ観測所長は当時の心境を語ります。

コロナ禍で頑張るすばる望遠鏡 (1) 図

図1:すばる望遠鏡の運用・観測の停止をお知らせする2020年3月24日付ウェブリリース。運用・観測休止期間は延長され、すばる望遠鏡が観測を再開できたのは5月18日の夜でした。(クレジット:国立天文台)

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の兆候が出ていた2020年3月2日、ハワイ観測所には対策本部が設置されました。観測所長の指揮のもとでセーフティーオフィスが中心となって情報収集を行い、職員と地域コミュニティの安全のために観測所がどのように行動すべきかの議論が進められました。

3月17日、ハワイ観測所は、職員の出張やビジター受け入れの禁止、在宅勤務への移行、マウナケアにおける作業規模の縮小などを決定しました。そしてその翌週、ハワイ州全域で自宅待機令が出され、これを受けてすばる望遠鏡は運用・観測を休止します。

すばる望遠鏡がそこにあり、天気も良いのに観測できない、というもどかしさ。また、望遠鏡や観測装置を最高の状態に維持するために、現場での作業を常としてきた職員には、いつ解けるかわからない在宅勤務体制に戸惑った人もいたようです。

運用・観測休止期間は、普段は集中して取り組みにくい業務、例えば各種マニュアルの再整備などを進める時間として有効に活用されました。また、ハワイ島でマスクなどが不足していた事態を受け、望遠鏡メンテナンス等のために観測所に準備していた個人用防護具を地元の医療機関に提供する、といった活動も行いました。

コロナ禍で頑張るすばる望遠鏡 (1) 図2

図2:地元医療機関に個人用防護具を運ぶ観測所員。(クレジット:国立天文台)

一方で、会計事務にとって3月から4月にかけては繁忙期の真っ最中です。「特別な状況下であれ、支払い手続きや決算報告などが遅れて、各方面にご迷惑をかけるわけにはいきません」と当時の緊張を語るのは、観測所会計係長の菅原諭さんです。「財務会計業務では特に高い情報セキュリティが求められますが、在宅勤務になっても業務が滞らないように計算機管理部門などの協力を得ながら、大事な時期をなんとか乗り越えることができました」と、菅原さんは振り返ります。

感染者数の推移を見ながら段階的な活動再開の方針が模索される中、5月7日、ハワイ州は天文台の運用再開を許可しました。とは言え、長期にわたってお休みしていた望遠鏡をすぐに動かせるわけではありません。望遠鏡や観測装置を管理する部門が1週間ほどかけて丁寧に点検を行い、安全に運用できることを確認した上で、すばる望遠鏡は5月18日の夜から観測を再開することができたのです。

コロナ禍で頑張るすばる望遠鏡 (1) 図3

図3:観測再開2日目の観測の様子。研究チームの観測者はテレビ会議システムを使って観測に参加しました。すばる望遠鏡の観測室では2名の所員が観測支援にあたりました。(クレジット:国立天文台)

観測再開後にはまず、超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC) を使った観測が行われました。天候も上々。観測再開2日目夕方の天候確認では、太陽が沈む際に「グリーンフラッシュ」も見られました。見た人には幸運が訪れる、という言い伝えもあるほど、グリーンフラッシュはまれな現象です。

「当時は既に世界各地で多くの方が亡くなって、社会全体が本当に閉塞感の中にありましたので、マウナケアで観測が再開されたのを祝うかのようにグリーンフラッシュが現れたのを見た時は、うれしくて将来への小さな光明を見た気がしました」。運用再開後、最初の観測業務を担当し、またグリーンフラッシュを目撃したサポートアストロノマーの田中壱さんは目を細めながら語ります。

コロナ禍で頑張るすばる望遠鏡 (1) 図4

図4:観測再開2日目の夕方にマウナケア山頂域から見られたグリーンフラッシュ。(クレジット:国立天文台)

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