すばる望遠鏡に新しく搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム, HSC) は順調に観測を続け、今年3月からは共同利用観測に供されています。HSC で撮影されたアンドロメダ銀河 M31 の姿は、ファーストライト画像として2013年7月に公開され、大きな反響を頂きました。
今回、天体写真家の上坂浩光さんが、HSC で撮影されたアンドロメダ銀河のデータを使い、新たな画像を制作しました。「昨年発表された M31 の高解像度ぶりには大変驚き、またそれがあれほど広大な視野全域に渡って保持されているのは本当に素晴らしいと思いました。しかし、HSC の素晴らしさをより多くの人に知ってもらう為には、もう少し鑑賞向けの画像処理も有効なのではないかと感じたのです」と、上坂さんは画像制作に取り組んだ動機を語ります。

図1: 天体写真家の上坂浩光さんにより新たに制作された HSC によるアンドロメダ銀河 M31 の画像。g, r, i バンドの画像が青、緑、赤色に対応し、露出時間はそれぞれ 800 秒、1200 秒、840 秒です。国立天文台の HSC 開発チームが生データの基礎的な解析を担当し、較正済のデータに基づいて上坂さんがカラー合成を含む画像処理を行いました。画像をクリックすると拡大画像 (8960×8897 ピクセル、11MB) が表示されます。(クレジット:上坂浩光/HSC Project/国立天文台)。
新たに制作された画像では、アンドロメダ銀河の姿が中心部から外縁部までさらにくっきりと写し出されています。特に、銀河円盤の内側にある暗黒帯の構造がよく分かります。また、中心部から外縁部までの色の変化も美しく表現されています。今回の新たな画像の制作に際しては、国立天文台の HSC 開発チームが生データの基礎的な解析を担当し、較正済のデータに基づいて上坂さんが極めて慎重な画像処理を行いました。
上坂さんは「提供していただいたデータは、3万5千ピクセル四方の大きさがあって、その画像規模にまず驚きました。通常は詳細なディティールを出すために、さまざまな強調処理が必要になるのですが、今回それはほぼ必要ありませんでした。HSC の解像度の高さを思い知らされました。僕らが小さな望遠鏡で撮る M31 は、ガスの塊のように見えますが、この画像ではそれが星々に分離され、銀河が星の集合体である事がとても良くわかります。銀河は我々が見ることの出来る、最も大きな構造物です。画像をご覧になって、それを実感していただければとても嬉しく思います」と、画像制作の喜びを語っています。
すばる望遠鏡に新たに搭載された HSC は、満月9個分の広さの天域を一度に撮影できる世界最高性能の超広視野カメラです。独自に開発した 116 個の CCD 素子を配置し、計8億7000万画素を持つまさに巨大なデジタルカメラです。すばる望遠鏡では、HSC の持つ広い視野を活かし、重力レンズ効果を用いたダークマター分布の直接探査などの大規模な観測プログラムを開始しています。