2023年9月20日(第1報)、9月27日(第2報)にてお知らせしたとおり、主鏡支持機構に生じた異常値の検出等に伴い、9月15日以降、すばる望遠鏡の夜間観測を中止しています。現在も継続して原因調査と望遠鏡への影響等の精査作業を行っているところですが、本日までに確認できたことを以下のとおり報告します。
1.生じた事象
①主鏡支持機構(固定点)の異常値(9月15日現地時間)
保守作業の一環として、望遠鏡の傾きを水平近くまで倒す稼働試験を行った後、望遠鏡を垂直に戻した際に3点ある固定点に過大荷重を示す数値を検出した。その後、望遠鏡を支持するアクチュエータの電源をオンにして確認したところ、継続して固定点の荷重異常(正常値より低い値)を示している。
②主鏡の傷(9月19日現地時間)
上記の稼働試験中に主鏡カバーの一部が自重で開き損傷した。後日、当該カバーを修理中に金属部分(ギアレール)が落下し主鏡面に傷が生じた。今回生じたと考えられる傷は二か所。なお、過去にも同様に主鏡に傷が生じた事例があるが補修済み。また、今回の事象とは別の要因と考えられる軽微な擦り傷も発見した。
傷の補修自体は可能であるが、主鏡は脆性素材であるため補修方法、仕上がり形状の検討、補修後の主鏡の強度解析等の技術的な検討を慎重に進めるとともに、ハワイ島現地において安全に補修作業を実施する必要がある。
2.状況(10月16日現在)
第2報から2週間程度の作業を進め、状況は以下の通りです。
① 主鏡支持機構(固定点)の異常値に関しては、本日までに光学系検出装置(シャックハルトマンカメラ)を用いて主鏡自体に変形が見られないことを確認。これを踏まえ、異常値の原因が固定点の力センサー本体の故障か、それ以外の故障かの調査に移行することとし、固定点を含む主鏡支持機構の支持力が主鏡に負荷を与えないことを確認しつつ、主鏡形状のモデル計算との比較評価等の解析作業を進める予定。
固定点の力センサーが故障している場合は、センサーの調達、交換方法の検討と実施、検査を経て復旧を完了させることが必要。一方、固定点の力センサー本体以外の故障の場合は、不具合箇所の特定が必要となる。復旧までに数か月単位の時間を要する可能性がある。
② 主鏡の傷については、詳細確認の結果、今回生じたと考えられる傷は 26 mm × 19 mm の大きさ(傷の深さは推定最大9mm 程度)と、約 10 mm ×7mm の楕円形(傷は前記より浅い可能性があるものの詳細な深さは今後検査)の傷。補修に向け、今後、傷の深さ等を精査しつつ、主鏡支持機構の支持力等の負荷を抑えるとともにハワイ島現地で安全に実施可能な傷の補修方法を光学メーカーとともに詳細検討し、確定する予定。
今後、修理・補修方針や観測再開時期等の見込みが判明した段階に加え、1か月に一度程度は随時情報をウェブサイトにおいて更新します。観測予定の皆様には長期間にわたりご迷惑をおかけすることとなり、誠に申し訳ございません。
発表資料
夜間観測の中止について 第2報 (2023年9月27日)
夜間観測の中止について 第1報 (2023年9月20日)