すばる望遠鏡について
観測装置
コロナグラフ撮像装置 CIAO (Coronagraphic Imager with Adaptive Optics)

星を隠して、周りを調べる
明るい中心天体の光を遮ることによって、その近くにある暗い天体のシャープな画像を取得することに目的を絞った観測装置です。カセグレン焦点に搭載され、赤外線を観測します。若い星の周りで惑星が誕生する現場や、年老いた星から物質が放出される様子をとらえることができます。

コロナグラフのしくみ
中心の明るい天体は、円形のマスクで隠され、さらに「リオストップ」によって回折、散乱光も取り除かれます。これにより、中心天体の周りの暗い天体が見えやすくなるのです。

CIAOとAOが捉えた天王星とその衛星
CIAOと補償光学装置AOを組み合わせて撮影した、天王星と環、衛星のミランダ (右)、アリエル (左) の近赤外線画像。天王星の大気であるメタンは、青色で表現されています。天王星のみかけの大きさは3.6秒角 (1秒角は1度の3600分の1) で、地上からは観測が困難な環も、はっきりとらえられています。
▶︎ 観測成果
近赤外線で見た天王星と環と衛星 (2002年2月21日)

生まれたての星の周りの円盤
CIAOを用いて撮られた、おうし座GG星 (GG Tau) の画像。太陽と同じ程度の質量をもった若い星です。、中心星が連星であるため塵が乱され、星の周りの円盤の内側が取り払われています。星が誕生する過程で塵とガスが星の周りに円盤を作り、それが惑星に進化するというのが今の天文学者の考えです。こういった若い星の周りに円盤は普遍的にあるだろうと思われていますが、まだ数は多く発見されていません。

近赤外線でみた星の最期
CIAOがとらえた惑星状星雲BD+303639。一生を終える頃に星はガスを放出し、中心の高温の部分が見えてくるようになります。そして、直前までに放出したガスを華々しく照らしだします。これらの物質は、いずれどこかで集まって、そこから再び新しい星が生まれてきます。

CIAO
CIAOは、補償光学とすばるの大口径を使って得られる最高の解像度を利用する恒星コロナグラフです。もともとコロナグラフは、太陽のコロナ(光冠)を観るために、太陽の光球からの光を抑えるように作られた装置ですが、CIAOは原始惑星系円盤など、太陽以外の星の周りにある暗い淡い天体を見るための装置です。CIAOの開発は、コロナグラフや補償光学という技術を用いる点でも、口径8メートルの望遠鏡に搭載するという点でも、新しいことだらけでした。
CIAOを使って我々が発見しようとしているものは、中心の明るい星よりも3、4桁以上暗く明るい天体です。地上からの観測では、大気の揺らぎのために星の像は広がってしまい、明るい中心星の光を遮ることは容易ではありません。CIAOの性能を発揮するためには、優れた気象条件が必要となるのです。これから天候に合わせて観測プログラムを変えるという観測体制を取り入れることができれば、CIAOによる成果がどんどん出てくるようになると思います。
理論的に予想されている若い星の進化過程を、直接観測することによって明らかにしていこうという計画が、2002年10月から観測所として取り組む大プロジェクトの一つとして取り上げられました。2、3の間に成果が出ることを期待しています。
(CIAO サポートアストロノマー村田幸史さんとの2002年末のインタビューより)