観測成果

多波長観測で捉えられた木星の嵐

2019年9月3日 (ハワイ現地時間)

  東北大学、ジェット推進研究所などの研究チームは、すばる望遠鏡を用いて木星の赤外線観測を2017年1月に実施し、木星の大気を吹き荒れる嵐の3次元構造の解明に貢献しました。これは世界的なネットワークで行われた木星同時観測キャンペーンの一翼を担ったもので、アルマ望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡、ジェミニ北望遠鏡、ケック望遠鏡、超大型望遠鏡 VLT も観測キャンペーンに参加しました。特にアルマ望遠鏡を含めたこれらの総動員によって木星を捉えた初事例で、サブミリ波〜可視光線にまたがって違う高度の大気構造を観測することで、木星嵐の3次元構造を初めて捉えることができました。


図1

図1: すばる望遠鏡中間赤外線カメラ COMICS が捉えた木星。2017年1月11-14日撮影。色は、木星成層圏にあるメタンの発光強度。赤道域の明るい部分がそれより高高度にあるアンモニア雲。大赤斑 (GRS)、オーバル (BA) は定常的な巨大構造。今回着目しているのは各矢印が示す白斑・暗斑で、木星の巨大嵐を示します。(クレジット:Imke de Pater et al.)



  木星の大気で巻き起こる巨大嵐は、「明るい白点」として見えます。これは下層大気から高高度へと巻き上がって作られたアンモニア氷の雲で、上層を吹き抜ける高速風に影響され、大きく吹き流されて見えることになります。電磁波は、波長によってそれぞれ吸収を受ける高度が異なるため、多波長にまたがる同時共同観測は、これらのプルームの3次元構造とその運動の解明をもたらしうると期待されてきました。

  今回の観測成果は、木星の巨大嵐が「湿潤対流理論」で説明しうることを明確に示しました。この理論では、下層大気から吹き上がる上昇風がアンモニア蒸気と水蒸気の混合物を大量に巻き上げます。これが上層で凝縮すると、これらは潜熱を放出してエネルギーを与え、さらに雲を含む大気層を浮上させて大気の上部に大量のアンモニア氷雲を作り出します。地球では、熱帯で生まれて成長する「台風」でみられる仕組みと似た機構と考えられます。

  すばる望遠鏡に搭載された中間赤外線カメラ COMICS を用いた木星の観測は、東北大学教授の笠羽康正さんと米国カリフォルニア工科大・ジェット推進研究所のグレン・オールトンさんの共同チームで2017年1月に実施されたものです。オールトンさんは「アルマ望遠鏡による電波観測に、すばる望遠鏡などによる赤外線観測を組み合わせることで、プルームがアンモニアガスに富んでいることを明確に示すことができました。これは、湿潤対流による駆動を明確に裏付けています」と赤外線観測の意義を強調します。

  また、笠羽さんは複数の望遠鏡を使った協調観測について次のように語っています。「このような観測キャンペーンは貴重です。惑星探査機では、これだけ広い波長帯で全球のスナップショットを取ることは不可能です。他惑星の大気現象を地球と比較するには、これがベストな方法なのですが、その効果を示す素晴らしい例となりました。ただ、今回の観測を行った COMICS はまもなく運用が停止される予定で、日本がこの分野へなせる貢献機会が限られてしまうことが残念です。」


図2

図2: ハッブル宇宙望遠鏡が2017年1月11日に捉えたカラー画像を、すばる望遠鏡の観測結果と比較したもの。(クレジット:Imke de Pater et al.)



  この成果をまとめた論文は、カリフォルニア大学バークレー校の Imke de Pater 博士を主著者として、米国の天文学誌『アストロノミカル・ジャーナル』に掲載予定で、既にプレプリントがオンライン公開されています。本研究は、カリフォルニア大バークレー校、カリフォルニア工科大・ジェット推進研究所、東北大学とともに、アメリカ国立電波天文台、NASA ゴダード宇宙飛行センター、クレムソン大学 (米国)、メルボルン大学 (オーストラリア)、レスター大学 (英国) による国際チームで行われました。

  


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