FITSヘッダールール
すばる望遠鏡の観測装置で取得されたデータは、全て観測装置から FITS 形式で出力される。 これらの FITS データはハワイ島ヒロの山麓施設(ハワイ観測所)でアーカイブされ、公開される。 アーカイブの検索項目は、基本的に全て FITS プライマリ HDU のヘッダに含まれていなければならない。 また、いくつもの観測装置のデータを一括して検索できるようにするためにも、 FITS キーワードは可能な限り観測装置間で共通化すべきである。 データ解析に関しては、解析に必要なパラメータは FITS ヘッダから抽出される場合が多い。 解析処理ソフトウェアの共通化による開発作業の省力化を図るためにも FITS キーワードの共通化が望まれる。 そこで、すばる望遠鏡では以下の FITS ヘッダルールを定める。
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すばる望遠鏡のFITSヘッダの監督をおこなう主体は、すばる FITS 委員会 (fits@naoj.org) である。 すべての観測装置は生成される FITS ファイルおよびヘッダの内容について、 委員会のレビューを経て承認を受ける必要がある。
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基本的に FITS のルール(IAU FITS-WG の FITS Standard)に従う。
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ヘッダ辞書で定義されたキーワードを、定義した意味以外では使用しない。 また、ヘッダ辞書内で Common と分類されたキーワードは必ず使用しなければならない。さらに Imaging や Spectroscopy などと分類されたキーワードは、指定された観測モードで取得されたデータに必須である。
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観測装置固有ヘッダ一覧は共通ヘッダキーワードと同様に観測装置グループが辞書を作成し、公開しなければならない。 装置固有辞書は装置グループ内の決定により改訂をおこなってよいが、辞書の改訂、および、 改訂履歴を Web で公表すること。 改訂にあたっては、ハワイ観測所担当者 (fits@naoj.org) に更新について通知すること。 公開は、現行のファシリティ装置については各装置 SA (Support Astronomer) が各装置のウェブページ下で、 PI装置およびデコミッション済みの装置についてはハワイ観測所が本ドキュメント下でおこない、 それらの情報へのリンクは本ドキュメント下へ集約する。
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当該観測装置からデータが生産されはじめて以降は、過去に使用したキーワードは別の意味で使用しないこと。また、単位も変更しないこと。
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当該観測装置からデータが生産されはじめて以降は、辞書の改訂をおこなったら、ヘッダキーワード
INS-VER
の記述に何らかの変更を加えること。 -
取り得る値があらかじめ定められているキーワードについて、新規の値を設定する必要性が生じた場合は fits@naoj.org への問い合わせ、承認を経た上で使用する。
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観測装置固有キーワードは、以下の2つのうちどちらかの方針で列挙すること。
- 基本キーワード群のうしろにまとめてブロック化する。
その際には
COMMENT Subaru Device Dependent Header Block for FOCAS
のようなコメント行を挿入し、これより後ろに記述する。 - 基本キーワードも含め、似た性質のキーワードをまとめ、可読性を高めるために適宜コメントを挟みながらブロック化する。
- 基本キーワード群のうしろにまとめてブロック化する。
その際には
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観測装置固有のヘッダは、頭 2 文字を装置 ID として与え、残り 6 文字を装置開発者が自由に使用する。 その際可能な限り略号表に従った記述を行う。装置IDは
A_
,B_
,C_
のような形式とし、重複は許されない。 現在、予約されている装置 ID は以下の通り装置 ID 装置 A_
AO36 B_
FMOS C_
CIAO D_
AO188 F_
FOCAS E_
MEC H_
HDS I_
IRCS K_
MOIRCS L_
LGS M_
MIRTOS O_
OHS P_
HiCIAO Q_
COMICS R_
MIMIZUKU S_
Suprime-Cam T_
Hyper Suprime-Cam U_
VAMPIRES V_
VTOS W_
PFS X_
SCExAO Y_
CHARIS Z_
IRD 2_
SWIMS 3_
Kyoto3D-II -
キーワード作成時の略号の組み合わせ順序は、キーワードのカテゴリーを参照して
とする(略号表参照、各略号はさらに短縮可能)。 例えば、露出開始時のスリットポジションアングルは、
SLT
(スリット)、P/PA
(ポジションアングル)、STR
(露出開始時)を組み合わせて作成するが、 その順序は、SLT
(Category=Instrument),P/PA
(Statistics/Unit),STR
(Action)となり、 キーワードはSLT_PSTR
となる。 -
撮像観測の場合は WCS を記述する。
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Extentionについては ASCII Table Extension、Binary Table Extension、Image Extension のみが使用可能である。
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天体名は可能な限り IAU 表記に従う。
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値の単位は辞書の記述に従うが、基本的に SI 単位系とする。
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値が数値の場合には、各パラメータの有効数字を考慮したうえでフォーマットを定義すること。
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インラインコメントにはキーワードの意味、及び、値の単位が明示される。
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ピクセルの座標値はピクセル中央を基準とし、ピクセル番号は 1 から始まる。
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キーワード
OBS-MOD
について-
当該データがどのようなタイプのデータかが一目でわかるように統一する。 最初の 4 文字は以下のいずれかを使用する。なお、文字は全て大文字とする。
カテゴリ OBS-MOD
撮像関連 IMAG 分光関連 SPEC 偏光撮像 IPOL 偏光分光 SPOL -
_
(アンダースコア) を 1 文字つけて、それ以降は何を書いても良いこととするが、 その文字列についても、同じものを時期によって違う意味で使ってはならない。 観測制御と解析の連携をとるために、OBS-MOD
は山頂観測制御システムから ステータスとして取得することを推奨する (抽象化コマンドを用いた観測時)。
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キーワード
DATA-TYP
について-
現在は以下のキーワードの使用が推奨される。これ以外のものを使用する必要が生じた場合は fits_at_naoj.org に問い合わせて承認を得てから使用すること。
DATA-TYP
ACQUISITION BIAS COMPARISON DARK DOMEFLAT DOMEFLAT_ON DOMEFLAT_OFF FLAT FOCUSING INSTFLAT OBJECT SKYFLAT STANDARD STANDARD_STAR TEST
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フィルターやグリズムについて
- フィルターやグリズムを複数持っている観測装置の場合、 それぞれの一意性を保証できるように名前付け、あるいは、番号付けすること。 新しいものに置き換わった場合は、名前を必ず変更すること。
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FITS データの圧縮について
- FITS ファイル全体の圧縮 (たとえば Rice や Gzip)、あるいは FITS ファイル内に格納されているデータに対して FITS スタンダードで規定されている Tiled image compression をおこなうことができる。ただし、両方の圧縮を同時に適用することは禁止する。
- データの圧縮は可逆圧縮でなければならない。
- 圧縮を用いる場合は、広く用いられている FITS ファイルの読み書き閲覧ツール (ds9, fitsio, astropy など) による対応がおこなわれている形式を選択すること。