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ハワイ観測所・家教授が東レ科学技術賞を受賞

2011年5月31日

写真: メダルを手にする 家正則 教授

 国立天文台TMTプロジェクト室長 (ハワイ観測所および光赤外研究部併任) 家正則教授が、平成 22 年度の東レ科学技術賞を受賞されました。研究業績は「初期宇宙史の観測的研究とレーザーガイド星補償光学装置の開発」の2つで、ご本人は「どちらもグループ研究の成果です」と述べています。この賞は、理・工・農・薬・医学の分野で、学術上の業績が顕著であるか、技術的に重要な業績・波及効果がある研究を行った研究者を学会などが推薦し、慎重な選考を経て、決められています。

 137 億年前のビッグバンに始まる宇宙の歴史をさかのぼる努力は、天文学研究の大きなテーマです。家さんはすばる望遠鏡の主焦点カメラを使い、宇宙最遠方の銀河を次々と見つけてきました。特に発見者の頭文字をとって IOK-1 と呼ばれる銀河の光は、128 億8千万年の彼方からやってきているものでした。こうした天体の研究により、この時期にはまだ宇宙が完全に晴れ上がってはいないことが知られるようになったのです。

 また、すばる望遠鏡のレーザーガイド星補償光学装置は、10 年来の様々な工夫を経て、今まさに活躍を始めているところです。地上にある望遠鏡の宿命である、上空大気の揺らぎによる星の像の乱れを直す「補償光学装置」の第1世代 (36 素子補償光学装置) を作るところから、家さんのチームは努力を重ねてきました。現在は第2世代 (188 素子) となり、いっそう鮮明な画像が得られるようになりました。さらにこうした補償光学で参照する星を自然のものにたよらず、レーザーで人工的な星を映し出すことで、暗黒星雲中の天体や、星が少ない領域の天体を詳しく調べることが可能になります。

 賞品として授与されたメダルはずっしりと重く、ここまでの研究や開発の努力の重みを反映しているようでした。東レ科学技術賞受賞のお知らせは 2010 年度にあったそうですが、東日本大震災の影響があり、実際の授賞式は5月に行われました。日本天文学会の推薦にもとづく受賞は過去に2件 (天文関係では3件) あります (注)。今回は 29 件のすぐれた研究が推薦された中から選ばれた2件のうちの1件とのことです。

 

注) 過去の受賞者 (所属・職名は受賞当時のもの)
  • 昭和 45 年度 (第 11 回)
    日本物理学会推薦  X線星観測器の開発とX線天文学の研究  東京大学教授  小田 稔
  • 平成元年度 (第 30 回)
    日本天文学会推薦  科学衛星によるX線天文学の研究  宇宙科学研究所教授  田中 靖郎
  • 平成4年度 (第 33 回)
    日本天文学会推薦  星間分子の分光学的研究  岡崎国立共同研究機構  分子科学研究所教授  齋藤 修二

 



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