観測成果

すばる 太陽系外縁部の微小天体を発見

2001年5月23日

 国立天文台、総合研究大学院大学、東京理科大学の太陽系研究グループは、すばる望遠鏡を用いて太陽系外縁部に広がる微小天体の発見に成功しました。これまでに同様の天体は 350 個以上も見つかっていますが、日本人グループが発見したのは今回が初めてのことです。

 1950年前後にエッジワース (Edgeworth) とカイパー (Kuiper) は、太陽系第八惑星の海王星の外側に、惑星になりきれなかった微小な天体が多数残っているはず、と独立に発表をしました。そこで現在では、このような天体をエッジワース・カイパーベルト天体 (Edgeworth-Kuiper Belt Object; 以後 EKBO) と呼んでいます。EKBO は、太陽系が生まれたときの状態を保っているとされることから、太陽系がどのように形成されてきたかを議論する上で、非常に重要な天体といえます。また EKBO は、コンピュータシミュレーションによる解析から、短周期彗星の起源であるという説が主流です。

 世界中で EKBO を探す観測が進められていた中、1992年8月、すばる望遠鏡と同様にマウナケア山頂にあるハワイ大学の口径 2.2m 望遠鏡により、最初の EKBO が発見されました。1992 QB1と仮の名前 (仮符号) がつけられたこの EKBO の発見から今日までの約 9 年間に、350 個以上が観測されています。

 2001年2月21日と 24日 (世界時)、すばる望遠鏡に広い視野を誇る、すばる主焦点カメラ (Suprime-Cam) を取りつけて行われた EKBO サーベイ観測において、研究グループは 9 個の新しい EKBO 候補の発見に成功しました。それらのうち、両日の観測から概略の軌道が求められた 2 天体は、国際天文学連合に正式に承認され、2001 DR106 と2001 DS106 と仮符号がつけられました。地球から約 63億km 離れているこれらの天体の明るさは、約25等級。人間の肉眼で見ることのできる限界 (6等星) のわずか 4000万分の 1 程度です。その大きさは直径約 100km と見積もられており、一番大きな小惑星のセレス (直径約 910km) の約 9 分の 1、およそ関東平野に対応します。今回の観測は、これまで知られていた結果と同様に、黄道面上の一平方度当たりに、25等級の EKBO が平均で約10個存在していることを示しています。

 火星と木星の間に多数存在している小惑星に比べて、EKBO は太陽から遠いところにあるため、背景の恒星に対して非常にゆっくりと移動します。このような EKBO を自動的に検出するプログラムを開発し、画像解析を行った研究グループの木下大輔 (総合研究大学院大学) は「すばる望遠鏡と Suprime-Cam のすごさを実感」、山本直孝 (東京理科大学) は「プログラムの結果を見たときの感動は何とも形容のしようがない」とコメントを寄せています。グループリーダーの渡部潤一 (国立天文台) も「すばる望遠鏡の広視野大口径という特徴は、世界的にみても、この種のサーベイに最適。今後さらに多くの発見が期待される」と意気込みを見せています。すばるによる EKBO の観測は、これからです。

 今回の観測については、2001年5月15日発行のマイナー・プラネット・エレクトロニック・サーキュラー MPEC 2001-J33 (http://cfa-www.harvard.edu/mpec/K01/K01J33.html) にて報告されています。

 

2001DR106 の画像。左:世界時2001年2月25日7時35分36秒、右:同日8時31分3

 

 

 

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