観測成果

すばる、話題のリニア彗星をとらえる

2000年7月24日

 しばらくの間、夜空を眺めていると、星は東から西へと動いていることがわかります。また太陽も同じように東から西へ移動していくこともご存じでしょう。これは地球が自転をしているためにおこります。そこで地上の望遠鏡を用いて天体を観測するときには、星に合わせて望遠鏡を移動させる必要があります。このように望遠鏡を動かすことを「恒星追尾」と呼びます。

 恒星や銀河などに比べて、彗星のような太陽系内の天体は地球からたいへん近いところにあります。そのため天体自身が運動している影響が大きく現れ、天球上でのみかけの速度はかなり速くなります。すばる望遠鏡では、あらかじめ天体の軌道計算を行い、予想される天体の位置にそって望遠鏡を動かしながら観測を行います。このように望遠鏡を動かすことを「非恒星追尾」といいます。

 昨年9月27日にアメリカ・リンカーン研究所チームにより発見されたリニア彗星 (C/1999 S4) は、肉眼で見えるように明るくなると期待されていました。一般に彗星は、太陽に近づくにつれて明るさを増します。7月23日に地球へ約5,565万kmまで接近したリニア彗星は、7月26日には太陽に約1億1,445万kmの距離まで近づきます。しかしリニア彗星の明るさは当初の予測よりも暗く、肉眼で見ることは難しいでしょう。

 すばる望遠鏡では、地球に接近しつつあるリニア彗星を、1月8日にカセグレン焦点に取りつけた調整用可視光カメラ CAC () により、また 6月17日にはナスミス焦点に設置した近赤外線カメラ CISCO により撮影に成功しました。下の図では、もっとも明るい中心部 (彗星の核) から蒸発したガスや吹き出したチリが、彗星特有の紡錘状の頭部を形作っている様子が写し出されています。またガスやチリが、太陽と反対の方向 (左の図では左側に、右の図では右側に) に尾として伸びている姿も見えています。今回のリニア彗星の観測より、すばる望遠鏡が彗星などの太陽系内の天体を正確に追尾し、観測できることが確かめられました。

 なお、リニア彗星の最新情報は、国立天文台のホームページ
http://www.nao.ac.jp/hoshizora/before2004/c1999s4.html
をご覧ください。

(注) 主にファーストライトのころに使用されたカセグレン焦点に取りつける試験用のカメラ

左:CAC により可視光で撮影したリニア彗星。彗星から放出されたガスのコマと塵の分布を反映している。右:CISCO により近赤外線で撮影したリニア彗星。主に彗星から放出された塵の分布をあらわしている。彗星の運動に合わせて望遠鏡を動かしながら、1色ずつ撮影し画像合成したため、恒星は3色の線状に写っている。

低解像度 (145KB) / 高解像度 (353KB)

 

 

 

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