観測成果

銀河から噴出す真紅の光 (M82, NGC 3034)

2000年3月24日

 

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キャプション

【観測条件】
天 体 名: M82 (NGC 3034)
使用望遠鏡: すばる望遠鏡 (有効口径 8.2m)、カセグレン焦点
使用観測装置: FOCAS
フィルター: B (0.45µm)、V (0.55µm)、Hα (0.65µm)
カラー合成: 青(B), 緑(V)、赤(Hα)
観測 日時: 世界時 2000 年 2 月 2 日
露出 時間: 30 秒 (B)、25 秒 (V)、 120 秒 (Hα)、各色 2 フレームをディザリング
視   野: 直径約 6 分角
画像の向き: 上が北、左が東
位   置: 赤経 (J2000.0) = 09時55分52.2秒、赤緯 (J2000.0) = +69度40分47秒 (おおぐま座)

【説 明】
地球から約 1200 万光年の距離にある M82 () は、その形から不規則銀河と呼ばれている。図の中心から左上と右下の方向に青白く輝く部分が星の集団の銀河である。この銀河に垂直な方向に広がるフィラメント状の赤い部分は、電離した水素ガスが放つ赤い光の Hα 線 (中心波長は 6563 オングストローム) である。これらの広がりは、銀河の中心からそれぞれの方向に 1 万光年以上にわたる。

この画像は、すばる望遠鏡に取りつけた微光天体分光撮像装置 FOCAS を用いて、FOCAS のファーストライトの日である 2000 年 2 月 2 日に撮像したものである。装置の機能がすべて作動するようになると、FOCAS では 6 分角の視野内にある 100 個もの天体のスペクトルを一回の露出で観測できるようになる。

M82 から Hα 線が噴き出す原因は、1960 年代の初頭には銀河の中心部で起こった巨大な爆発によると考えられていた。その後、M82 の中心部には巨大な分子雲や多くの超新星の残骸が発見され、また国立天文台野辺山宇宙電波観測所の 45m ミリ波望遠鏡による電波観測では、M82 の中心部から外側に向かって分子ガスが流出していることが分かってきた。そこで現在では、銀河中心部における活発な星生成 (スターバーストと呼ぶ) や超新星爆発により、高温の電離した水素ガスが銀河の外側まで噴出し Hα 線として見えている、と解釈されている。このような現象は「スーパーウィンド」と呼ばれており、銀河内の物質を銀河の外側へ運び出し、銀河間空間を加熱する重要な役割を持っている。スーパーウィンドを詳しく研究することは、銀河の進化や銀河間空間のガス組成などを理解する手がかりと考えられており、M82 は格好の研究対象であるといえる。

1999 年 1 月のファーストライト以降、すばる望遠鏡の調整作業は、最終段階に向けて順調に進んでいる。さらに、第一期観測装置も次々と立ち上がり、望遠鏡の調整と共に試験観測が行われている状況である。2000 年中には全国の研究者による共同利用観測が始まる予定であり、すばる望遠鏡による新しい発見が期待されている。




注:1784 年にフランスのアマチュア天文家であるシャルル・メシエ (Charles Messier) がまとめた天体のリストは Messier Catalogue (M) と呼ばれている。M82 は、このリスト中 82 番目の天体であることを意味する。またドライヤー (J.L.E. Dreyer) がまとめた星雲や銀河のリスト (New General Catalogue; NGC) では、M82 は NGC 3034 と表されている



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