観測成果
すばる望遠鏡、0.2 秒角の星像を達成
1999年6月10日
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【観測条件】 |
【説 明】
図は、すばる望遠鏡に赤外線カメラ CISCO を取り付けて撮った恒星の像の明るさ分布を、縦 に切って示したもの。縦軸が像の明るさ、横軸は星像の広がりを示す角度。この図は、星像の大きさ 0.198 秒角という、すばらしくシャープなイメージが撮れていることを示す。星像の大き さ 0.2 秒角というシャープな星の像は、補償光学 (AO: Adaptive Optics) を用いない地上の望遠 鏡としては、これまで達成されたことのない快挙である。一方空気の揺らぎのない宇宙空間を運行するハッブル宇宙望遠鏡は、0.2 秒角を上回り 0.1 秒角を切るシャープなイメージを達成し てきた。すばる望遠鏡は 1月のファーストライトにおいて、既に 0.3 秒角という地上望遠鏡として最高レベルの分解能を達成していたが、その後8 m 主鏡の能動支持機構の調整などを進めた結果、地上望遠鏡による通常のイメージとして 0.2 秒角の分解能を達成したものである。すばる望遠鏡は口径がハッブル宇宙望遠鏡の 2.4 m に較べ格段に大きく、こうしたシャープなイメージ の達成により同望遠鏡より遠方の宇宙も見ることが出来る。またこれは同時に、マウナケア 山頂における大気揺らぎの少なさをも実証したもので、すばる望遠鏡の今後の観測に、ますます大きな期待がかけられる。
(注) 星像の大きさ: FWHM (Full Width at Half Maximum) = 半値幅サイズ、すなわち星像の明るさ分布のピークに対し、半分の明るさのところでの星像の大きさで表わされる。望遠鏡の結 像性能 (分解能) で決まる像の大きさと、大気の揺らぎ (シンチレーション) による像の拡がりとの足しあわせとなる。
(注) 補償光学: AO (Adaptive Optics) 地上望遠鏡に取り付けて大気揺らぎを実時間でキャンセルし、高い解像度のイメージを取る技術。これまでに、カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡 (CFHT 3.9 m) や、Keck 望遠鏡で実用に用いられ、0.1 秒角を切る画像を得ている。すばる望遠鏡でも、今年後半に補償光学を取り付け、さらなる高解像観測の試験を始める予定である。