観測成果

渦巻銀河M33の高解像度画像 -- 銀河の星形成史の全容解明にむけて --

2009年1月22日

 M33 (さんかく座星雲) は、アンドロメダ銀河に次いで銀河系に近い渦巻銀河です。銀河系からは 約250 万光年の距離に位置し、ほぼ真正面を向いているため、渦巻銀河の構造を調べるには最適な天体です。この銀河の高解像度画像が、すばる望遠鏡主焦点カメラによって得られました。カメラの8視野分(満月8個分程度) の広さ、9万光年×6万光年の大きさにわたるもので、M33についてこれだけの広さをこれだけの深さでカバーした高解像度の観測は他にありません。この画像を解析すると、星や星団、星形成領域などひとつひとつの天体と、銀河構造との関係を調べることができます。

 M33は、古くはさんかく座星雲とも呼ばれ、アンドロメダ銀河に次いで銀河系に近い渦巻銀河です。銀河系からは 約250 万光年の距離に位置し、ほぼ真正面を向いているため、渦巻銀河の構造を調べるには最適な天体です。

 この画像は、国立天文台、リトアニア物理学研究所、県立ぐんま天文台などの研究者からなるグループによって、すばる望遠鏡主焦点カメラで得られたものです。主焦点カメラの8視野分(満月8個分程度) の広さで、これは9万光年×6万光年の大きさに相当します。M33について、これだけの広さをこれだけの解像度と深さで観測した例は他にありません。

 M33の明るさの大部分は円盤部にある星からの光です。銀河系を含め、多くの渦巻銀河の中心にはバルジと呼ばれる構造がありますが、M33ではその存在がはっきりしていません。円盤部の外側をハローと呼ばれる構造が囲んでおり、星や球状星団がまばらに存在しています。詳しく解析すると、古い星からなるハロー構造はこの画像全面にひろがっていることがわかります。銀河系の球状星団はいずれも100億年以上の年齢をもつ古い天体ですが、M33の球状星団は数十億年若いという研究もあります。これらの事実は銀河系との形成史の違いを物語っています。この違いはM33の質量が銀河系と比べて一桁小さいことと関係しているとみられます。

 銀河中心部の観測からは、最近 (約1000万年前に) 大量に星が生まれたことが分かっています。また、円盤部には散開星団や若い大質量星形成領域が存在しています。この高解像度画像を解析すると、これらのひとつひとつの天体を詳しく調べることができます。しかも銀河全体にわたってデータがありますので、年齢の異なる星の分布図を得ることができます。例えば円盤部では、星の生成活動が中心部から外側に向かって伝搬している様子がみられるなど、銀河の星形成史の全容を調べることが可能になります。

 この画像の解析から、銀河系にみられるコンパクトな球状星団とは種類の異なる、非常に広がった球状星団が見つかりました (ズーム機能付き画像・解説ページを参照) 。この球状星団は M33 の外から落ちてきた矮小銀河の残骸であると考えられており、銀河の成長過程の産物であるとみられています。



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天 体 名: 渦巻銀河 M33
使用望遠鏡: すばる望遠鏡 (有効口径8.2m)、主焦点
使用観測装置: Suprime-Cam (すばる主焦点カメラ)
フィルター: B, V, Hα
カラー合成: 青(B)、緑(V)、赤(Hα)
観測日時: 世界時2001年11月20, 21日, 2002年11月4日
露出時間: 各視野ごとに7.5分(V)、15分(Hα)、9.2分(B)、合計8視野 
視野: 約100分角 x 65分角
(60分角は1度)
画像の向き: 上が西北西、左が南南西
位 置: 赤経(J2000.0)=1時34分
赤緯(J2000.0)=+30度39分
さんかく座

ズーム機能付き画像:渦巻銀河 M33 (メシエ33)

 


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