観測成果

「すばる望遠鏡 銀河形成の歴史に迫る」 -すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ(SXDS) 画像データ公開-

2004年6月1日

 

低解像度 (115KB) / 高解像度 (540KB)

天 体 名:すばる XMM-Newton ディープ フィールド
使用望遠鏡:すばる望遠鏡 (有効口径8.2m)、主焦点
使用観測装置:主焦点カメラ (Suprime-Cam)
フィルター:B (中心波長0.4マイクロメーター) , R (0.7マイクロメーター), z' (0.9マイクロメーター)
観測日時:2002年8月から2004年1月
視野:1.3 度角 x 1.3 度角
画像の向き:上が北、左が東
位置:赤経2時18分、赤緯-5度00分

すばる望遠鏡観測所プロジェクトSubaru/XMM-Newton Deep Survey」領域のカラー3色 (B:中心波長0.4マイクロメーター (1センチの1万分の1) , R:0.7マイクロメーター, z':0.9マイクロメーター) 合成写真。すばる望遠鏡主焦点カメラ(Suprime-Cam)5視野を十字状に配置し約1.3平方度の領域をカバーする (月の写真は比較のために挿入)。視野中心の位置は、赤経2時18分、赤緯-5度 (2000年分点)。右上に赤四角で囲った部分を拡大してある。

 



<概要>

 国立天文台および欧州宇宙機関 (European Space Agency: ESA) は共同で、日本時間6月1日午後3時に、国立天文台・東京大学・宇宙航空研究開発機構・英国ダーラム大学・英国レスター大学からなる研究チームが2002年8月から2004年1月までに行った、すばる望遠鏡観測所大プロジェクト「すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ」 (SXDS) により取得された以下の深撮像サーベイ画像と検出された天体カタログを全世界へ公開しました。

(公開サーバー・アドレス http://www.naoj.org/Science/SubaruProject/SDS/)

・ すばる望遠鏡主焦点広視野カメラ (Suprime-Cam) を使った可視光線での4バンド (B:中心波長0.4マイクロメーター (1センチの1万分の1), R: 0.7マイクロメーター, i': 0.8マイクロメーター、z': 0.9マイクロメーター) での検出限界に迫る深さ (B-バンドで28.2等級、肉眼での限界等級の数億分の一の明るさ) の撮像画像と天体カタログ

・ ESAのX線天文学衛星XMM-ニュートンに搭載されたEPIC (European Photon Imaging Camera)を使った、X線での検出限界までの撮像画像 (エネルギー0.5-10.0keV、波長8000分の1 - 400分の1マイクロメーター)

・ 米国ニューメキシコ州にある電波望遠鏡 Very Large Array (VLA) を使った電波での撮像画像 (周波数1.4GHz、波長21cm)

 この記者発表の直後、6月3日から5日までの3日間京大会館において、国立天文台主催、日本学術振興会の援助を得て、上記の世界中からの共同研究者が集まった「すばる/XMM-Newtonディープサーベイ領域の多波長観測」国際研究集会が開かれます。この研究集会では、今までに得られた成果の報告と共に、上記の豊富な観測データを使った国際共同研究の枠組みが話し合われます。今後特に日本の若手研究者が、世界の最先端の観測装置を使った研究に積極的に参加し、成果をあげることが期待されます。

 

1) すばる望遠鏡Suprime-Cam画像から作った3色合成画像

低解像度 1/32画像 (370KB)
中解像度 1/16画像 (1.6MB)
高解像度 1/8画像 (6.2MB)
画像の説明

 


2) XMM-Newton衛星によるX線カラー合成画像

画像 (80KB)
画像の説明
X線画像の説明

3) VLAによる電波観測マップ(周波数1.4GHz)+クローズアップ

全体画像 (1.4MB)
クローズアップ画像 (155KB)
画像の説明

4) Suprime-Cam 3色合成画像1) からのクローズアップ画像

画像 (46KB)
-Spiral (350KB)
-Group (251KB)
-Teardrop (438KB)
-Cluster (203KB)
画像の説明

 



 天文学の一番重要な目的は、宇宙の歴史を明らかにすることです。このためには、宇宙の大規模構造による影響を受けずに、宇宙初期から現在にいたる銀河形成史を理解する必要があります。この目的のために、日本のすばる望遠鏡チームが主導する国際共同研究「すばる/ XMM-ニュートン・ディープサーベイ (SXDS)」という広視野・深宇宙探査が行われました。この観測からすでに、大きな銀河ほど早い時期に活発な星形成が起こって成長することが報告されており*2、また、銀河中心に活動的な超巨大ブラックホールを持つ天体は、約数千万パーセク*3 (~億光年) の大規模構造を示すことが分かって来ています。

 この研究により取得された観測データと、検出された天体カタログが、インターネットを通じてウエッブページ上に公開されました。今回のデータ公開によって、世界中の多くの研究者がデータを手にすることができます。その結果、他の研究グループが進めているサーベイの結果や、数値シミュレーションによる予測などとの比較を進めることなどが可能になります。また、他の研究者が独自の視点でデータを再点検することで、今まで大量のデータの中に埋もれて気付かれていなかった事象が発見されることも期待されます。

 本公開では、研究者向けのデータ公開だけでなく、すばる望遠鏡による撮像画像から作った3色合成画像、X線でのカラー合成画像、電波での画像を、インターネット上のウエッブサーバーを通じて提供します。研究者が現在解析しようとしているすばる望遠鏡などの最先端のデータを、一般の方たちも見ることができ、また教育資料として活用することも可能です。

(*2) Kodama, T. et al. 2004, "Down-Sizing in Galaxy Formation at z~1 in the Subaru/XMM-Newton Deep Survey (SXDS)", MNRAS, 350, 1005.
「SXDS中の約80億年前の銀河宇宙から探る、大きな銀河と小さな銀河の誕生時期の違い」
{児玉、他}

児玉たちは、「すばる/XMM-Newtonディープサーベイ」の可視光画像データから、赤方偏移が1付近にある銀河、即ち今から約80億年前 (宇宙の年齢が現在の40%ほどの時代) の姿の銀河を取り出し、それらがいつ形成され、そしてその後どのように現在の銀河へと進化してゆくのかについて調べました。その結果、明るい (重い) 銀河と暗い (軽い) 銀河とで、その形成と進化の様子が大きく異なることが明らかになりました。

まず太陽の重さの800億倍以上の明るい銀河は、一様に色が赤く、古い年齢の星から作られていること、また銀河の個数密度と星の総質量分布も、現在の重い楕円銀河と同程度であることが判明しました。つまり今日の大きな楕円銀河の大部分は、約80億年前までに形成が終っていたのです。一方太陽の重さの100億倍以下の暗い銀河については、今度は一様に青い色を示し、約80億年前の時代ではまだ活発に星が生まれ、銀河が成長している最中であることが判りました。

これらの結果を総合すると、宇宙では大きな銀河ほど早く誕生し、小さな銀河ほどゆっくりと生れたことを意味します (これをダウン・サイジングと呼ぶ)。ところが、現在の標準宇宙モデル (冷い暗黒物質に満ちた宇宙) では、先に小さな天体がうまれ、それらが重力で寄せ集まって合体を繰り返し、徐々に大きな銀河が
作られてきたと考えられています (これをボトム・アップ仮説という)。ですから我々の結果は、銀河の形成進化の理論的な基本描像に、難問を突き付けたことになります。この結果を標準宇宙モデルの枠組で理解するには、大きな銀河がより加速的に作られ、小さな銀河では星の形成がよりゆっくり進むような新たな物理的機構を導入する必要があるでしょう。

本プロジェクトでは、今後近赤外線領域で深い探査が行なわれます。現在の可視光データに近赤外線のデータを併せることによって、より遠方 (宇宙誕生後20億年程度) の宇宙に遡って、同様の解析を行なうことができます。これによって、ダウン・サイジング現象を時系列に直接検証することができると同時に、今日の大質量銀河が生まれつつある現場をついに目撃することが出来ると期待されます。

(*3) 1パーセク(1 pc)は、約3.26光年 (約3.08 x 1013km)

SXDS ホームページ
http://www.naoj.org/Science/SubaruProject/SDS/

欧州宇宙機関(European Space Agency)のプレスリリースサイト
http://www.esa.int/science/media

SXDSメンバーリスト

 



<補足説明>

  1. すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ(SXDS)とは何を観測し研究しているのか
  2. なぜ広視野で深いサーベイが必要なのか?
  3. どのようにして銀河までの距離を測るか?
  4. なぜ多波長での観測が必要なのか?
  5. 望遠鏡データ


1.すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ(SXDS)とは何を観測し研究しているのか

 この観測プロジェクトでは、秋の南天にあるクジラ座の中に (中心座標:赤経2時18分、赤緯-5度00分) 現在あるどの多波長深宇宙探査サーベイよりも広い領域 (約1.3平方度、天空上で月の面積の約7倍の領域を占める。ハッブル宇宙望遠鏡ディープフィールドの約850倍の面積) を観測しています。銀河分布の偏りの無いなるべく平均化された情報をこの観測から集めることが出来ます。また、X線から電波におよぶ広い波長域で観測して、この領域内の約100万個の銀河について距離を推定し、宇宙の立体地図を作成します。さらに以下にあげるような世界各国の望遠鏡で得られた多波長の情報を活かすことで、宇宙に存在する多様な性質を持った銀河のほとんどすべての種族について、それらの形成、成長、形態変化等の過程を、宇宙の広い範囲を見渡して調べることが可能になります。この研究により、宇宙初期から現在にいたる銀河および宇宙の構造進化の全容を明らかにするとともに、宇宙論モデルに対する強力な制約を与えることができると期待しています。

 この「宇宙の歴史を解き明かす大プロジェクト」では、今回発表される観測結果の他に、以下に並べるような国際共同観測が進められ、または準備されています:

  1. ハワイ島マウナケア山頂にある英国サブミリ波電波望遠鏡James Clerk Maxwell Telescope (JCMT)/ Submillimetre Common-User Bolometer Array (SCUBA) を用いた、地上から観測可能な450マイクロメーター、及び、850マイクロメーター付近のサブミリ波長での、史上最大規模の観測SCUBA Half A Degree Extragalactic Survey (SHADES)。2002年秋より開始され、JCMT総観測時間の1/3を3年間使い、2005年中に完了する予定です。

  2. 米国NASAのGalaxy Evolution Explorer (GALEX) 衛星による、波長0.1-0.3マイクロメーターの紫外線での撮像観測が計画されています。

  3. ハワイ・マウナケアにある英国赤外線望遠鏡(UKIRT)/広視野近赤外線カメラ (WFCAM) を用い、波長1-2.5マイクロメーターの近赤外線で、今までに無い広さと深さの撮像が2004年秋から始まります。向こう5年間に296夜相当の観測が行われる予定です。

  4. ヨーロッパ南天天文台の8メートル望遠鏡Very Large Telescopes (VLT) / Visible imaging Multi-Object Spectrograph (VIMOS) を使った、可視光線での分光観測とU-バンド (波長0.3マイクロメーター) での撮像観測が計画されています。

  5. 米国NASAのSpitzer赤外線望遠鏡衛星による、中間-遠赤外線 (波長3-160マイクロメーター) での観測が、この夏から始まります。

  6. Balloon-borne Large-Aperture Sub-millimeter Telescope (BLAST) という望遠鏡を、気球で地球大気の上層まで上げて、地上からでは大気に邪魔されて観測できないサブミリ波長 (250-500マイクロメーター) での撮像観測も始まろうとしています。

  7. 将来的には、日米欧が共同で建設を進めているAtacama Large Millimeter / submillimeter Array (ALMA) を用い、波長0.3-10ミリの波長でのより詳しい観測が期待されます。

 

5) 天球上でのSXDS位置

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画像の説明
SXDSプロジェクトは、秋の南天にあるクジラ座の中、中心座標:赤経2時18分、赤緯-5度00分の空を観測しています。観測対象領域は、現在あるどの多波長深宇宙探査サーベイよりも広く、約1.3平方度、天空上で月の面積の約7倍の領域を占めます (ハッブル宇宙望遠鏡ディープフィールドの約850倍の面積。

6) SXDSレイアウト

画像 (50KB)
画像の説明

7) 多波長観測計画イラスト

画像 (268KB)
画像の説明

 



2.なぜ広視野で深いサーベイが必要なのか?

 この20年ばかりの間に、宇宙にある物質の分布を調べるための観測が急速に進みました。これらの研究は、宇宙論における次の3つの基本問題を明らかにすることを目的としています。

1) 宇宙にはどれだけの量の物質が存在するのか?
2) どのような物質が存在するのか?
3) 物質はどのように分布するのか?

 最初の2つの問題は、宇宙の将来の運命を決める、宇宙の平均密度に直接関係します。宇宙に存在する90%近くの物質は、目に見えない形、バリオン以外の形で存在していると考えられ、その重力による影響によってのみ検出されると考えられています。そして普通の物質も、そのかなりの部分が、吸収を受けた天体や、暖かく拡散した銀河間ガスとして存在すると思われています。3番目の問題は、宇宙の大規模構造の原因とその進化に密接に関わる問題であり、未だよくわかってはいません。

 今まで行われて来たペンシルビーム・サーベイと呼ばれる狭い領域を深く観測するサーベイ (検出される天体の限界等級が暗い) では、どのような天体が宇宙の歴史の何時ごろに存在したかを知ることができます。しかし、これではいったいそれらの天体が、宇宙のどの時期に何個存在して、どのような分布をしていたのか (その天体が宇宙の歴史でどのような役割を果たすのか、それが今日我々の銀河系の周りに見られる天体とどのような関係にあるか) は分かりません。また、宇宙は非常に大きなスケールでは一様で均一ですが、近傍銀河のサーベイによると、バブル状の構造があることが分かっています。銀河は偏平なシート状またはフィラメント状に集まっていて、銀河がほとんど存在しない"ボイド(voids)"を包むように分布しています。これらのボイドは約千万パーセク以上 (~数千万光年) のサイズがあります。小さな領域のペンシルビーム・サーベイでは、ちょうどこのボイドの方向を見てしまう可能性もあり、正しい統計値を得ることができません。大規模構造を調べるには、少なくとも数千万パーセクのスケールをカバーする観測が必要です。「すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ」では、研究対象とする時代(50-130億年前の宇宙)で約1億パーセクx1億パーセクの広さ、体積にして約数億立方パーセク (または数十億立方光年) をサンプルしています。

 全天規模の広さでも浅いサーベイで観測をおこなうと、ほとんどが近傍の天体のため、宇宙の今日の姿を見ることは出来ても、過去へさかのぼって重要な銀河形成の過程を調べることができません。宇宙の進化と銀河の形成過程を知るためには、宇宙の大規模構造による影響を受けないくらいの広さについて、十分過去へさかのぼれるくらい深いサーベイを行う必要があるのです。「すばる/XMM-Newtonディープサーベイ」は正にそのような目的のために計画されました。遠い宇宙の過去へ遡って「宇宙の人口調査」を行い、どのような天体が、何時ごろ誕生し、どのように進化して今日の宇宙の姿になったかを探ります。

 

8) 宇宙の3次元マッピング

画像 (164KB)
画像の説明

 



3.どのようにして銀河までの距離を測るか?

 遠くの銀河やクエーサーまでの距離は、これらの天体の分光観測から推定します。宇宙が膨張しているため、遠くにある天体ほど速く我々の銀河系から遠ざかっていて、遠ざかるスピードとその天体までの距離には比例関係があります。その光を波長に分散してスペクトルを得ます。分光観測により得られたスペクトル中にある特定の元素による輝線または吸収線の波長が赤い側 (波長の長い方) にずれるのを赤方偏移と言って、このずれは我々から遠ざかるスピードに比例して大きくなります。このずれの大きさを測ることにより、天体までの距離が求まるわけです。分光による赤方偏移測定は、正確に距離を求めることが出来ますが、唯でさえ暗い天体の光を分散して測定するので、現実的には比較的明るい天体でなければ計測できません。たとえば、直径8.2メートル、世界最大級の口径を持つすばる望遠鏡でも、目で見える可視光での分光観測では、1時間露出で23等級 (肉眼で見える最も暗い天体の数百万分の1の明るさ) の天体のスペクトルを取るのがやっとです。

 これに対して「測光赤方偏移」と呼ばれる手法もあります。これは、分光赤方偏移と同じように、天体のスペクトル中の特徴を使ってその波長のずれを測るのですが、天体の光を細かく分散するのでは無く、フィルターを使って大まかに分け、スペクトル中の大きな特徴を検出することにより、赤方偏移を荒く測るという方法です。この方法だと、分光観測で測定可能な天体の、数百倍暗い天体までの距離が測れます。



4.なぜ多波長での観測が必要なのか?

 我々が持つ宇宙についての知識のほとんど全ては、光を測定することによって得られたものです。ニュートリノや重力波などの例外もありますが、これらは未だ主要な観測手法ではありません。天体からの光には、その距離、動き、温度、密度、化学組成など沢山の情報が含まれています。また、光は一定の速さ (1秒間に約30万キロメートル) を持つため、遠くの天体からの光が地球に届くには時間がかかります。たとえば、1億光年先の天体からの光が地球に届くには1億年かかります。このため、天文学者が観測した時には1億年前の姿を見ていることになります。遠くの宇宙を観測することは、宇宙進化の歴史を見ることになるわけです。

 一般に光というと目で見える光 (可視光線) で、それは電磁波と呼ばれる光のごく一部にすぎません。電磁波は、その波長 (または波長の逆数の周波数やエネルギーで表すこともあります) により、ガンマ線 (波長が短い/周波数、エネルギーが高い) からX線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波、サブミリ波、ミリ波、電波 (波長が長い/周波数、エネルギーが低い) といろいろな呼び方でよばれています。それぞれの波長の電磁波は、それぞれにユニークな情報を我々にもたらしてくれます。

 宇宙の全貌を知るためには、これら全ての波長帯を使って宇宙を見る必要があります。今日我々は、地上の望遠鏡、地球大気の上層部に上げた気球、宇宙空間に打ち上げた衛星などを使うことにより、ガンマ線から電波まで全ての波長域で、天体からの光を観測できるようになりました。こうした多波長観測データを使った研究により、宇宙についての我々の理解が革新的に変わりつつあります。たとえば、X線やガンマ線では、ブラックホールや超新星残骸、高温ガス、中性子星などの高エネルギー現象についての情報が得られます。紫外線は高温の星やクエーサーなど、可視光は太陽のような星や惑星、星雲、銀河、赤外線では冷たい星、星の誕生領域、星間のガスやチリ、遠方の銀河の星からの、赤方偏移した(可視)光、電波では冷たい分子雲やビッグバンの名残りの背景輻射などです。

 SXDS領域の多波長観測では、X線観測を使って、銀河中心にある超巨大ブラックホールの活動状態 (高温の物質が非常なスピードでブラックホールに落ち込んでいるところ) を検出します。すばる望遠鏡による可視光の画像からは、いろいろな種類の銀河について詳細な構造を見たり、それらの銀河内の星の分布を調べたりします。また赤外線での観測からは、多数のスターバースト銀河 (星形成が爆発的に活発な状態にある銀河) を見つけます。サブミリ波の観測では、さらに密度の高いガスに覆われた、より活発な星形成活動をする銀河を見つけます。そして、電波観測では、クエーサーや星間分子やガスを検出します。

 

9) SXDF021823.6-052501の電波、可視、X線による比較画像

画像 (1.3MB)
画像の説明

 



5.望遠鏡データ

  • ALMA (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)
    http://www.nro.nao.ac.jp/~lmsa/
    直径12mの高精度アンテナ64台や超高精度アンテナ16台を組み合わせる干渉計方 式の巨大なハイテク望遠鏡で、波長0.3-10ミリのサブミリ、ミリ波と呼ばれる光で、宇宙を観測します。日米欧が共同でチリ・アンデスの標高5000mの高原に建設することを計画しています。

  • BLAST (Balloon-borne Large-Aperture Sub-millimeter Telescope)
    http://chile1.physics.upenn.edu/blastpublic/
    イギリス、アメリカ、メキシコおよびカナダの研究者が共同開発している気球搭載型大口径サブミリ波望遠鏡。地上からでは観測が難しい250-500マイクロメーターの波長帯で、宇宙を観測します。長時間持続気球(LBD)プラットフォーム上からの観測により、星や銀河の形成および進化の探求に取り組みます。

  • GALEX (Galaxy Evolution Explorer)
    http://www.galex.caltech.edu/
    NASAが開発し2003年4月に打ち上げられた紫外観測衛星。波長0.1-0.3マイクロメーターの紫外線で観測することにより、銀河の形成・進化、星形成の原因を調査しています。

  • JCMT (James Clerk Maxwell Telescope)
    http://www.jach.hawaii.edu/JACpublic/JCMT/
    マウナケア山(ハワイ)にあるサブミリ波望遠鏡。276枚のアルミニウムパネルを合わせた口径15mの巨大なパラボナアンテナを有する望遠鏡で、地上から観測可能な、450マイクロメーター、及び、850マイクロメーター付近のサブミリ波で宇宙を観測します。イギリス・カナダ・オランダの協力によりジョイント・アストロノミー・センター(JAC)が運用しています。

  • Spitzer
    http://www.spitzer.caltech.edu/
    NASAが開発した宇宙赤外望遠鏡。2003年8月に打ち上げられ、波長3-160マイクロメーターの赤外線に対する高感度の検知器を持ちます。このような赤外線は、ガスやダストの密度の高い雲を浸透できるため、星形成領域・銀河中心・惑星系の形成などの内側の情報を得ることが可能です。

  • UKIRT (United Kingdom Infra-Red Telescope)
    http://www.jach.hawaii.edu/JACpublic/UKIRT/
    マウナケア山(ハワイ)にある、口径3.8mのイギリス赤外線望遠鏡。イギリス、カナダ、オランダの研究支援のもと、ジョイント・アストロノミー・センター(JAC)によって運営されています。

  • VLA (Very Large Array)
    http://www.vla.nrao.edu/
    ソコロ(ニューメキシコ)にあるアメリカ電波天文台(NRAO)の超大型電波干渉計。25mのアンテナ27台を、Y字型に最大全長35kmに渡り設置し、主に、数センチの波長の電波を観測しています。爆発している星、分子雲、超新星残骸、パルサー、電波銀河、活動銀河中心核、さらにビッグバンの宇宙残光などに関する観測を行っています。

  • XMM-Newton (X-ray Multi-Mirror Mission - Newton)
    http://xmm.vilspa.esa.es/
    欧州宇宙機関(ESA)が開発し、1999年12月に打ち上げられたX線観測衛星。大型 で高感度の3台の望遠鏡を装備し、0.5-10keVのエネルギー (波長8000分の1 - 400分の1マイクロメーター) のX線に対して、現在世界で最も有効面積の大きい望遠鏡です。
 

 

 

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