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ハワイ観測所・柏川准教授に井上学術賞
2010年4月22日
2010年2月4日の 井上賞授賞式にて |
自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた50歳未満の研究者に対して与えられる「井上学術賞」を、国立天文台ハワイ観測所の柏川伸成 (かしかわのぶなり) 准教授が授賞しました。
2009年度の第26回授賞の対象となった研究は「すばる深宇宙探査による銀河形成史の研究(Formation history of galaxies by Subaru Deep Field Survey)」。すばる望遠鏡を用いて、ビッグバンから約9億年後の初期宇宙の姿、特に宇宙再電離の過程について観測的に明らかにしたこととともに、すばる望遠鏡計画の完成にも大きな貢献をしたことが高く評価されました。
ビッグバン後、宇宙空間のガスは宇宙膨張によりいったん冷えて、最初はばらばらでじゆうに飛び回っていた陽子と電子が結合し電気的に中性化します。やがて登場する原始銀河から発生する強い紫外線によって、再び陽子と電子に分かれる再電離という現象をおこしたと考えられています。しかし、この宇宙再電離が、どのように始まり、どのように進行したかは解明されていませんでした。柏川さんはすばる望遠鏡を駆使して、126.5億年前と128.2億年前の2つの時代の遠方銀河の個数を詳細に比較し、観測できる銀河の数がはっきりと変化していることを見いだしました。この短い期間での大きな個数変化は、この時代に宇宙再電離が急激に進行したために生じたと考えられ、この観測結果は観測的宇宙論の分野に大きな反響を呼び起こしました。
今回の授賞について柏川さんは次のように話しています。「授賞対象となりました遠方銀河に関する研究は、すばる望遠鏡の建設前から、わたしたちがこの望遠鏡を完成させたいと願う大きな動機の1つでした。その後、多数の研究者のアイデアと努力が積み重ねられ、現在ではすばるによる一連の遠方宇宙・初期宇宙研究は世界的にも極めて高い評価をいただいています。その中の1つである今回の研究成果も、大集光力を誇るすばる望遠鏡、他に例を見ない個性あふれる観測装置、そして、この研究に貴重な観測時間を大量投入しようと決めた観測所の無謀な冒険、いや勇気ある決断がそろって、初めて達成されました。すばる望遠鏡の建設・運用・そしてこの研究に関わったすべての皆さまに、感謝の気持ちでいっぱいです。今回いただいた金メダルの燦然たる輝きも、130億年の旅をしてやってくる遠方銀河からのかすかな光も、私にとっては同じようにいとおしいです。宇宙の真理を追い求めるすばるの挑戦にこれからもご期待ください。そして、宇宙の始まりをもっと知りたいと願うわたしたちの貪欲な好奇心は、次世代地上大型望遠鏡計画への偉大なる動機となりつつあります。」
リンク:
- 井上科学振興財団 - http://www.inoue-zaidan.or.jp/
- 「すばる、最も遠い銀河を発見」 - http://subarutelescope.org/Pressrelease/2003/03/19/j_index.html
- 「続すばる、最も遠い銀河を発見!」 - http://subarutelescope.org/Pressrelease/2003/11/05/j_index.html
- 宇宙再電離について[天文月報2006年10月号掲載] - http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2006_99_10/99_562.pdf
- 柏川さんのホームページ - http://optik2.mtk.nao.ac.jp/~kashik/