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ディープ・インパクトの衝突現象に向けたすばる望遠鏡の取り組み
2005年6月24日
ハワイ時間2005年7月3日午後7時52分 (日本時間7月4日午後2時52分) ごろ 、アメリカ航空宇宙局 NASA が打ち上げたディープ・インパクト探査機が、テンペル第一彗星の核に衝突する予定です(ディープ・インパクトについて)。
衝突の日は、マウナケア山頂にあるすばる望遠鏡、ケック I, II 望遠鏡、ジェミニ北望遠鏡の 4 大望遠鏡が特別な共同利用観測日を設けました (詳しくはこちら) 。すばる望遠鏡に提出された観測提案の中から、採用された観測テーマは以下の通りです:
観測時間 | 観測テーマ | 観測提案者 |
衝突直前 ~ 衝突30分後 (予定) | NHK 超高感度ハイビジョンカメラによる衝突現象のハイスピードカラー撮像および世界のメディアに対するビデオ映像の配信 | 布施 哲治 (国立天文台ハワイ観測所) |
衝突30分後 (予定) ~ | High-Speed Mid-Infrared Observation of the Collision Between DEEP IMPACT Projectile and Comet 9P/Tempel 1 (ディープ・インパクト探査機とテンペル第一彗星の衝突現象の中間赤外線による高時間分解能観測) | 杉田 精司 (東京大学 大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻)、他16名 |
NHK 超高感度ハイビジョンカメラは、NHK が開発したカラービデオカメラです。色分解プリズムで RGB の 3 色に光路を分け、3 つの CCD で受光してカラー映像を撮影しています。感度を上げるため、光の強度を約 3000 倍に増幅する装置イメージ・インテンシファイア (I.I.) を 3 色独立に装着しました。
中間赤外線は、人間が見られる可視光よりも波長の長い光です。彗星核の周辺はガスやチリが多く、彗星の中心部分を見通すには波長の長い中間赤外線が有効です。すばる望遠鏡の冷却中間赤外線分光撮像装置 COMICS により、衝突で放出されたテンペル第一彗星の内部物質を詳しく調べることができるでしょう。すばる望遠鏡とジェミニ北望遠鏡は近い波長域の観測を行うため、お互いに最高の成果が得られるよう、現在は観測手法の調整をしています。観測したデータはただちに世界中の天文学者に公開される予定です。
ただし、衝突の時間帯が薄明 (日没後に空が明るい状態) 直後のため、ハイビジョン観測が行えない場合があり、また天候次第では赤外線も含めて観測不能になることもあります。
すばる望遠鏡におけるディープ・インパクトの観測に関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。
国立天文台ハワイ観測所広報室
布施 哲治 (ふせ てつはる)
電話:1-808-934-5922
FAX:1-808-934-5099
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