【観測条件】 天 体 名: Suprime-Cam による広視野カラーイメージ 使用望遠鏡: すばる望遠鏡 (有効口径8.2m)、主焦点 使用観測装置: Suprime-Cam フィルター: B (0.45μm)、V (0.55μm)、R (0.65μm) カラー合成: 青(B),緑(V)、赤(R) 観測 日時: 世界時2000年8月3日 (B)、6月8日 (V)、8月2日 (R) 露出 時間: 40分 (B)、25分 (V)、 30分 (R) 視   野: 24分角x24分角 画像の向き: 上が北、左が東 位   置: ヘルクレス座 【説 明】  すばる望遠鏡の主焦点に取りつける Suprime-Cam (すばる主焦点カメラ) は、天体から届く可視光 をとらえる広視野の撮像装置です。現在は、直径約31分角の満月の大きさに匹敵する 24分角x24 分角の範囲を一度に撮像することができます (補足画像を参照)。主鏡の口径が 4m以上の望遠鏡の中 で、これほどの広い視野の装置を備えているのは、いまのところ すばる望遠鏡だけです。このように、 広視野と高い集光力という特徴を持つ すばる望遠鏡と Suprime-Cam の組み合わせは、広い領域に点 在する暗い天体を観測するのに最も優れた装置といえます。  Suprime-Cam の開発グループは、装置の調整と並行して、Weak lensing を用いた宇宙の大規模構 造の研究を行っています。Weak lensing とは、遠方にある銀河の形状を多数観測し、より地球に近い 銀河の質量を推定する方法です。この研究の目標は、遠方の天体からくる光が手前の天体の重力によ り曲げられる重力レンズを利用して、宇宙の広い領域における質量分布を求めることにあります。  今回公開する画像は、Suprime-Cam の高い性能を示す例となります。Suprime-Cam による画像は 広視野であるだけでなく、分解能もたいへん優れています。その限界は地球大気の状態に大きく影響 を受けることから、大気が常に安定しているマウナケア山頂に すばる望遠鏡を建設しました。すでに Suprime-Cam は、満月の直径の 6,000 分の 1 に等しい 0.3 秒角という分解能を達成しています (公 開画像の分解能は約 0.6 秒角)。光を受ける効率も非常に高く、望遠鏡が集めた光の 70% 以上を検 出することが可能です。また肉眼で見える星の1億倍以上も暗い天体をとらえる能力を備えています。  この画像には、地球から約100億光年までの距離にある、3万個以上もの天体が写っています。そ の中に私たちの銀河系内にある恒星も多く含まれます。スパイク状に見えているのは、恒星の像が 明るすぎるために電荷結合素子 (CCD) 上を電荷があふれ出した跡です。その他の天体は、私たちの 銀河系の外に存在する、はるか遠方の銀河です。このように数多くの銀河の姿を詳細にとらえた Suprime-Cam の画像は、Weak lensing による研究を行うために最適なデータとなります。  さらに Suprime-Cam 開発グループは、この画像から、いままで知られていなかった新しい銀河団 (注および補足画像を参照) を発見しました。地球からこの銀河団までの距離は、約50億光年と見積 もられています。すばる望遠鏡と Suprime-Cam による今後の観測においても、その特徴を活かして 多くの新しい発見がなされると期待されています。  12月より、すばる望遠鏡の共同利用が始まります。最初の期間 S00 (2000年12月〜2001年3月) では、7台ある第一期観測装置のうち、本来の性能が確認された Suprime-Cam と IRCS (近赤外線分 光撮像装置) の 2台が使用されます。審査を通過した 26 の観測提案書 (プロポーザル) に対して、36 夜が共同利用観測として割り当てられました。残る時間は、望遠鏡や観測装置の調整が行われる予定 です。 (注) 50個よりも多くの銀河が約1,000万光年の領域に集まっている集団のこと。