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すばる望遠鏡主焦点カメラ Suprime-Cam の「ファイナルライト」

2017年6月15日 (ハワイ現地時間)
最終更新日:2023年9月21日

すばる望遠鏡に搭載された主焦点カメラ Suprime-Cam (シュプリーム・カム) が、ハワイ時間2017年5月29日 (日本時間5月30日) の夜に、最後の観測を迎えました。Suprime-Cam はハッブル宇宙望遠鏡の約 200 倍もの視野を持つ広視野カメラで、「日本の観測天文学の牽引役」と評価する研究者もいます。そのユニークかつ高い性能を活かして、1999年のファーストライト以降、数々の成果を挙げています。例えば「最遠方銀河」発見の記録を次々に塗り替えてきました。

すばる望遠鏡主焦点カメラ Suprime-Cam の「ファイナルライト」 図

図1: すばる望遠鏡主焦点カメラ Suprime-Cam が最後に観測した棒渦巻銀河 NGC 7479 のカラー画像。g', r', i', NA656 バンドの画像をカラー合成。(クレジット:国立天文台、画像処理:田中壱)

Suprime-Cam の最終観測夜には、3つの観測チームが時間を分け合い、小惑星・銀河・超巨大ブラックホールなど様々な観測を行いました。さらに日の出直前の時間帯には「ファイナルライト」を祝うセレモニーを行い、Suprime-Cam 最後の観測をかみしめつつその活躍を讃えました。Twitter のすばる望遠鏡公式アカウント @SubaruTelescopeでも、Suprime-Cam 最終観測の「実況」を行いました (ハッシュタグ #SuprimeCam)。

国立天文台三鷹キャンパスのすばる望遠鏡リモート観測室にも、Suprime-Cam にゆかりのある方々が集まりました。Suprime-Cam 開発責任者だった岡村定矩さん (現・法政大学教授) が語る苦労話・こぼれ話に耳を傾けながら、最後の観測の様子を見守っていました。

Suprime-Cam 最後の観測天体には、ペガスス座の方角、約1億光年彼方にある棒渦巻銀河 NGC 7479 が選ばれました。1970年代に岡村さんが銀河の形態研究のために岡山天体物理観測所で観測した天体です。ここから日本の銀河撮像観測の基礎ができ、その成果は次第に世界的にも高く評価されて、のちに岡村さんは広視野撮像観測による銀河天文学を推し進めます。その一連の研究活動が Suprime-Cam の開発へと繋がったのです。

すばる望遠鏡主焦点カメラ Suprime-Cam の「ファイナルライト」 図2

図2: Suprime-Cam 最後の観測天体 NGC 7479 に望遠鏡を向ける観測チーム。(クレジット:国立天文台)

望遠鏡最上部の「主焦点」に Suprime-Cam を搭載するために、すばる望遠鏡はとても頑丈に作られました。「主焦点」から空の広範囲を一度に観測できるのは、すばる望遠鏡が備えるユニークな性能です。そして Suprime-Cam で培われた経験・技術は、後継機の超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC; ハイパー・シュプリーム・カム) に受け継がれています。

Suprime-Cam のおよそ7倍もの視野を持つ HSC は、2014年3月から共同利用観測が始まっています。「HSC はすでに様々な分野で画期的な成果を挙げており、現時点では世界最強の広視野カメラです。Suprime-Cam に続き、次世代の日本の観測天文学を牽引してくれると期待しています」と岡村さんは語ります。

NGC 7479 は今回初めてすばる望遠鏡で観測されました。1970年代当時の写真乾板でははっきりしなかった星生成領域の詳細な構造がくっきりと写し出されています。「ファイナルライト」として Suprime-Cam からプレゼントされたこの良質なデータが、また新たな研究へと私たちを導きます。

すばる望遠鏡主焦点カメラ Suprime-Cam の「ファイナルライト」 図3

図3: 三鷹キャンパスのリモート観測室 (左) とマウナケア山頂のすばる望遠鏡観測室 (右) に集まり、Suprime-Cam の最終観測夜を見守った人々。(クレジット:国立天文台)

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