<第32回大型光学赤外線望遠鏡専門委員会議事録>
日時:2000年6月30日11時〜16時(日本時間)
場所:国立天文台解析棟すばるTV会議室(TV会議利用)
出席者:安藤、家(委員長)、太田、岡村、郷田、小林、佐藤、田村(幹事)、
林、舞原、村上、山田、(その他の出席者:臼田、布施、R. Wainscoat,
A. Tokunaga、B.MacLaren, 朝日新聞杉本記者)
0.前回議事録確認(家、資料32-0)
委員長より、今回本委員会の傍聴希望がマスコミ関係からあり、本委員会委員
ほかにもちまわりで諮り、報告部分について公開で議事を進めることとした旨
報告があった。
1.すばる主鏡固定点の不具合改修について
1.1.すばる主鏡固定点パッド剥離について(安藤、資料32-2)
ハワイ時間2000年3月19日(日)14:29頃に赤外側固定点(いわゆる#3)
が剥離した。被害状況としては、36枚の接着部のうち7個に貝殻状のガラス片
が残っていることが確認された。直接の原因は、能動支持制御計算機(MLP2)
が高度角を誤認したままアクチュエータが支持力を出し、そのまま高度角が下
がったことで、約1.3tonの力がかかり、固定点パッドの接着部を引き剥がした。
MLP2が高度角を誤認した理由は、鏡筒・架台駆動制御装置(MCU)からの実
高度角データの割り込み受信の失敗とそのfail-safeソフトが起動しなかったこ
とと考えられる。また、アクチュエータのインターロックのかけ忘れが重なっ
た。応急対策として、剥離部分を研削除去し、残りの29個の接着部を接着した
が、その後の駆動確認試験で再度接着部分が剥離した。再剥離時にはガラスへ
の破損は無かった。接着強度不良のためと判断し、接着過程を見直し、再
接着を完了した。また、計算機ソフトの改修とインターロックの復旧・強化も
行い、安全管理システムも強化した。5月19日から試験観測を再開、故障前の
望遠鏡性能の再現を確認した。3個の固定点パッドをより安全な機構のものに
改修し取り替えるなどの恒久対策は、来春予定されている主鏡再蒸着時に行う
予定である。
この事故に伴う共同利用開始の遅れを各方面にアナウンスした。
1.2.主鏡回復に関するプレスリリース(布施、資料32-?)
主鏡修理後に撮像した画像を「主焦点カメラで0.3秒角の星像サイズを達成」
の題名でプレスリリースした。新聞に「回復すばる 渦くっきり」などと紹介
された。
2.ハワイ観測所概況報告
2.1.平成12年度事業計画・体制(安藤、資料32-1a)
2000年3月で建設期が終了、4月より運用期に入った。12月からは共同利用
が開始される。固定点剥離事故のために約2ヶ月望遠鏡運用が停止した。6月
末時点で全ての焦点が立ち上がったが、主焦点はまだ追い込みが必要。望遠鏡
追尾ソフトも改善された。第一期観測装置は1999年12月よりCOMICS, FOCAS,
CIAO, IRCS, OHS, Suprime-Cam, HDSが、順次立ち上げを行った。補償光学は8
月の予定。観測所のスタッフは現在総員約60名。運営経費も来年度追加要求が
残っているもののほぼ目標レベルに達している。在外研究員等旅費による共同
利用旅費への支出も認められた。ハワイ大学IFAの試験観測への参加も始ま
った。12月からの共同利用は2000年3月までで、IRCSとSuprime-Camのみ
利用可能。いわゆるrisk-sharedの条件下でのオープンである。申し込み締め切
りは7月3日。
望遠鏡制御システム・赤外振動副鏡・周辺光学系等の概況が報告された。運
用組織表が示され、指揮系統の明確化・三鷹との連携強化などが説明された。
経費の詳細について説明があった。安全管理、言語、人事管理についての課題
が述べられた。その他、共同利用事業、望遠鏡の機能更新と次期装観測置開発、
UH88/UKIRT望遠鏡時間、マウナケア国際観測所の状況について説明があった。
2.2.平成12年度予算案(林、資料32-1b)
資料に基づき、設備費・旅費・校費の内訳についての説明があった。
2.3.望遠鏡概況報告(臼田、資料32-1c)
時刻パルス処理と架台駆動飛びの解消、インターロックの強化、架台駆動の
精度向上、主焦点立ち上げ試験、ガイダ性能試験、主鏡空調の計算機制御と夜
間予測温度制御設定試験の各項目について、詳細な説明があった。
2.4.観測装置状況(山下、資料32-1d)
資料に基づき、各装置の概況が説明された。
2.5.共同利用公募状況(田村、資料32-1e)
共同利用の仕事とスケジュールが紹介され、現時点での公募状況が述べられ
た。出足は悪いが、ほとんどの申請は締め切り当日と予想される。
2.6.マウナケアマスタープランについて(McLaren、口頭)
IFAのMcLaren氏が、いわゆるMauna Kea master planについての最新の状
況について説明を行った。大別して、astronomyとmanagementの問題がある。
前者については、古い望遠鏡の更新(3-4台)、KeckとSMAの拡張、
3台以下の新望遠鏡建設(new generation large telescope, teaching telescope for
UHHなど)を見込んでいる。新望遠鏡建設にあたってはすばるのような麓から
目立たないドームにすることが望まれる。IFA/UHHの間でのMauna
Kea management分担。
3.プログラム小委員会報告(岡村、資料32-3)
第一回プログラム小委員会の議事録資料に基づき、小委員長・幹事の決定、
レフェリー候補者の決定などの内容が紹介された。
4.開発委員小委員会報告(佐藤、資料32-4)
6月2日の小委員会でのすばるR&D経費の審議結果について報告があった。
17件の申し込み中、5件が当面70%支出、ヒアリングが5件、再提出が2件、
今回手当て無しとしたのが5件。FMOSについては、舞原氏より直接、最新
状況説明があった。
以下議題
5.1.観測所時間、UH時間の扱いについて(安藤、資料32-5a)
最初に前回(3月)の当委員会で承認されたすばる望遠鏡時間配分案の確認
を行った。
装置性能時間については、当面各装置あたり20夜が保証されているが、後ろ
にずれ込む傾向があるため、早く20夜を使い切るグループにはある夜数を追加
配分する提案があった。当委員会ではこれを承認した。
国際時間については、いくつかの方面から「公募文に明記すべき」という意
見があることが紹介された。委員間で意見交換を行い、明記する方向で引き続き
検討することとした。
*関連する議論の中で、委員長からハワイ側出席者に対して、「FL観測デ
ータについては、日本側では、論文化の前にすばる関係者に一読の機会を
与え、共著者を募るよう調整することにしてある。FL観測が望遠鏡関係者の
長年の努力により実現したことを尊重しての措置である。共同利用前のハワ
イ時間による観測成果について、すばる関係者が共著者に入る機会を設ける
ようハワイ側でも検討して欲しい」との要請があった。ハワイ側は所長に持ち
帰り伝えることとなった。
5.2.UH88に関する国立天文台とハワイ大学の協力について(田村、資料
32-5b)
すばる・ハワイ大学の協力により、日本人研究者によるUH88の望遠鏡時間の
使用に関する交渉が行われている件についての中間報告があった。2001年度2
月からの開始、日本側の望遠鏡時間割り振り、日本からの装置持込へのサポー
トなどの内容が盛られる予定。
6.すばるユーザーズミーティング(3月)のヒロ開催提案
上記を進める旨、当委員会の同意が得られた。世話人として、山田・高田・
小杉・Simpsonの各氏が指名された。
7.ポストすばるに向けて(家、資料32-7)
時間の都合上、当議題は割愛された。
8.すばる望遠鏡の観測データの公開について(市川、資料32-8a)
資料内容は承認されたが、試験観測データ及びUH時間のデータについては、
それぞれ再度議論及び相手方に確認することになった。
9.その他
岡村委員より、共同利用の枠組みの中に収まりきらない規模のプロジェクト
についての照会が外国からあったが、このような場合に対処するため、キー
プロジェクトについての議論を再開して欲しいとの要望があった。
以上