第29回大型光学赤外線望遠鏡専門委員会議事録案  資料30−1

 

日時:1999年9月1日午前10時30分〜午後16時30分(日本時間)

場所:国立天文台北研講義室

出席者:安藤、家(委員長)、太田、岡村、海部、唐牛、郷田、小平、小林、佐藤、

  田村(幹事)、林(TV参加)、舞原、村上、山田

 (装置報告関連ほかによる出席者:山下、菅井、吉田道、市川伸)

 

0.前回議事録確認(家、資料29-0)

 

1.「すばる望遠鏡・ハワイ観測所状況報告」(海部、資料29-1-1,2,3,4)

(人員)赴任者の変化はない。RCUH雇用者は8名が追加予定で合計29名となる。長期出張者若干名、COE研究員2名、RCUHインターンシップ3名が増えた。若手がまだ不足で、非常勤勤研究員や大学院生の派遣の具体化を検討中。

(予算)H11年度校費総額は台内で徴収される分を含めて15.3億円。H12年度は30億円を要求中。平年度化はH13年度に持ち越し。運営費に加えて開発経費を要求、外国旅費と観測旅費の積み上げも努力中(唐牛補足)。

(施設)実験室・機械工作室の整備が進んだ。部屋不足が深刻化しつつあるため、建物増築の案づくりを開始。建設委員会に頭出しを予定。

(運営)所員の選挙に基づく代表を含めた運営のための新体制を整備中。

(広報)ハワイ観測所の広報担当者は2名となり、日英両言語に対応できる。広報委員会も発足した。6月より毎月ほぼ1点の成果発表を目指している。

(見学対応)研究教育関係者の見学は受け付けてきた。一般の見学は断ってきたが、来期はライセンスを持つツアー会社と提携するなどして、一部解禁の方向でルールを検討中。

(望遠鏡)主鏡の再蒸着は成功裏に終了。自動化も進んだ。主鏡クリーニング装置は改修中。振動副鏡は設計上の問題により仕様を満たさないため改修中。主焦点調整も難航した結果、全体的な調整工程は10月末までずれ込む。10月頃よりMICによる建設体制から、MELA-すばるエンジニアリングオフィスによる保守・改良体制へ。望遠鏡試験リストについては資料29-1-4参照。

(調整試験観測)4月以降は、週7日体制で試行。基本的に前半夜が三菱、後半夜が観測。Suprime-Cam(主焦点)、MIRTOSもファーストライトを迎えた。来年2月発行のPASJで数点のファーストライト論文を同時発表予定。

(第一期観測装置)全体的に遅れ気味。多くは11月から順次テスト観測の予定。それぞれの装置のハード・ソフトの開発状況は資料29-1-2を参照。

(スケジュール)9/17: 完成祝賀式(山頂120名、山麓450名)、9/22-24: マウナケア所長会議・利用者委員会(山頂環境問題など)、10月初: 三菱現地新体制へ移行、10月末: 望遠鏡の基本的調整作業完了、11月初: 第一期観測装置による試験観測開始、11月末: 望遠鏡正式引き渡し、1月初: 共同利用の準備作業開始、3月初: 共同利用公募開始、5月初: 公募締め切り、10月初: 共同利用開始。

 

2.開発小委員会報告(佐藤、資料29-2)

 6月10日および7月27日に小委員会を開催し、すばるR&D経費の議論、第2期観測装置の議論・ヒアリングなどを行った。R&D経費は別紙資料のように総額9千万円の配分が決まった。小委員会として、FMOSを第2期装置として、MOIRCSとIRHSを第2期装置候補として答申する。ただし、予算措置については来年度以降の負担の合意が必要。候補装置については、計画の具体化を待って再度判定を必要とする。

 

3.試験観測方針(海部、資料29-2)

 純粋な試験観測期間は、第一期装置の立ち上がる1999年11月から共同利用開始直前の2000年9月までである。その間に各装置あたり20-30日の試験観測時間を割り当てることができると推定。残りの時間は共同利用開始後に振り分けられる。

 また、この試験観測に、すばる関係者が積極的に関与してゆくために、ハワイ観測所から2つの方針の希望が提出された。

(1)各観測装置グループは望遠鏡搭載に先だって(1ヶ月前程度)試験観測計画を確定して公開してもらい、「すばる研究者」の積極的参加を促したい。

(2)試験観測期間中に「観測所時間」を設けて、「すばる研究者」独自のテーマを実行できるようにしたい。テーマ選定については適切なアドバイス機構を設け、装置グループとも密接な連絡をとる。

[議論] 基本的にはこの提案を了承。ただし10月予定のユーザーズミーティングまでに、ハワイ観測所・三鷹で議論を行い「すばる研究者」の定義を提示することになった。

 

4.共同利用方針(海部、林:資料29-2, 29-3)

[提案骨子] 2000年10月より共同利用を開始する。公募は2期制とし、実質時間は最初の半年で約90夜程度を見込んでいる。

 手順の概略は以下の通り。1-2月: 募集要項作成、3月: 要項発送、レフェリー選定、4月M-: プロポーザル受理、審査、6月M-: プログラム小委員会、スケジューリング、採択連絡、8月-: スケジュール案内・来所書類手続き、10月-: 観測者受け入れ・観測開始・観測結果報告。

 審査・公募について。レフェリー制とプログラム小委員会を併用し、後者が採択の判断をする。プロポーザルを5分野にカテゴリー化する。レフェリーは各カテゴリーにつき5人とし、内2人は外国人とする。プログラム小委員会メンバーは各カテゴリーあたり1人で、さらにカテゴリーに依らないメンバーを2-3名を加える。Ex officioとして、所長、共同利用責任者、望遠鏡グループ責任者、観測装置責任者が入る。公募要項は申請フォーム2枚+科学的意義2枚。フォームの原案は資料参照。言語は英語とするが、日本語訳を付けることは可能。申請プロセスはいずれwww化する。

 

[議論:応募資格とプロポーザル言語] 大学院生をPIとするプロポーザル提出には異論がない。大学院生のみのプロポーザルについては賛否があった。外国人によるプロポーザルについては、日本人と共同でという但し書きを付けるべき、外国人のみの申請は除外すべき、数として10%未満になれば申請形式は問わないなど、意見が分かれた。将来はオープンするのが大原則ではあるが、中口径望遠鏡へのアクセスと経験が不十分というハンデがあり、実質上何らかの保護策が当面は必要であろうという意見が複数あり、一方、世界の標準を知るために、最初から開放すべきという意見もあった。言語についても、議論百出。日本語でやりたいという意見も多かった。

=> ユーザーズミーティングでも議論して、次回当専門委員会で決断することになった。

[ハワイ大学持ち時間] IfAよりハワイ大学から観測時間要請が正式に来ている。

=> 当初日本側コミュニティの了解としては「共同利用開始後」ということもあり、文面上「ファーストライト以降」という表現になってはいるが、ハワイ大学に試験観測の状況を詳しく説明することとし、合意書の解釈に関する交渉事項でもあるので、対応は天文台に一任することとした。

2000年4月から2001年3月までの間に14夜と打診する提案があった。

[キープロジェクト] 今回の公募要項でのキープロジェクトの扱いについて議論を行った。キープロジェクトを制限するものではないが、装置立ち上がり状況にもよるので今後の議論とする。

 

=>プログラム小委員会は、ユーザーズミーティングの議論を経て、次回当委員会で設置することとした。

 

5.第2期観測装置計画説明(資料29-5)

FMOS:舞原、資料29-5-1)波長は0.9-1.8μm、視野30'、400天体同時分光に機能を絞った仕様とする。面分光、ナスミスフィードは将来の追加機能候補とする。UK側の了承を確認中。これまでのUK・AAOとの交渉経緯の説明、推定予算(約5.5億円)、製作スケジュール(2001年から製作開始で3年で完成)、および検討事項の説明があった。

=> 家委員長より、英国側はFMOS計画への参画を希望していて、予算確保のため日本側の早期決断を望んでいる事情が紹介され、開発小委員会の答申を受けて、当専門委員会としても、この計画を進めることを基本的に了承した。

FWCAM Survey Science Center:田村(関口代理)、資料29-5-2)いわゆる第2期

観測装置ではないが、UKIRTの広視野赤外カメラ(WFCAM)の撮像データを解析・アーカイブするためにデータセンターをハワイ観測所に設ける計画が紹介された。WFCAMは、JHKをカバーし、2Kx2K素子のHgCdTeでピクセルスケール0.4"。2002年ファーストライトを目標。ハワイ観測所では、WFCAMサーベイデータ(一晩100GB程度)とフォローアップデータをSTARSでのアーカイブとDASHでの高度な解析ができるようにし公開することを検討中。

 

6.PI装置提案とその扱いについて(資料29-6)

 以下の装置をすばるに持ち込む提案があり、その説明が行われた。

(高エネルギーガンマ線観測装置:谷森、資料29-6-1,6-1')宇宙ガンマ線が大気と衝突して発生するチェレンコフ光を、すばる主焦点に並べた45本の高速光電子倍増管アレイで検出する。10 GeV領域のかに星雲パルサーからのパルスガンマ線検出が目的。11月から2月を希望。

TRISPEC:佐藤)ハワイ大学でのファーストライトに成功し、現在2回目の観測を行っている。球状星団の可視・赤外合成図の観測結果が示された。11月に搭載希望。次回の当専門委員会以前に搭載するかの判断は、観測所に一任。ただし、観測提案を事前提出し、委員ほかに公開することが条件。

(京都3次元分光器第2号:菅井、資料29-6-2)ファブリペロ・スリット・マイクロレンズアレイ分光観測装置。かなり完成に近い状態。赤外シミュレータでの試験後、2000年に搭載希望。その後は、日本に持ち帰らずに、すばる及びマグナムで使用したい。

SIRIUS-3色同時赤外線カメラ:田村、資料29-6-3)JHK3色同時。特定領域研究により建設中の南アフリカ1.4mに搭載し、広域サーベイを行うための装置。すばる・UH2.2mにも搭載可能。CISCO/CIAO/IRCSのカメラと相補的な装置。2000年春に搭載を希望。SIRIUSに適したサーベイ的観測提案をまとめて提示する。

 

=>PI装置の受入に関する一般的方針については次回の議題とする。

 

7.光赤外ユーザーズミーティング(吉田、資料29-7)

 ファーストサーキュラーの紹介。10月26日〜28日。主議題はすばるの共同利用の方針の具体化。 TV会議システムも利用するが、内容からハワイ所員の直接参加が望ましい。すばるのセッションは27・28日の予定だが、午前中にかためるという可能性も検討。

 

8.観測データ公開に関する提案書(市川、資料29-8)

 趣旨は前回と同じ。アーカイブを利用した論文の調査を行った。HSTの場合は2339編中、約211編が明らかにアーカイブを利用した論文でった。ユーザーズミーティングの議論を経て、次回当専門委員会で公開方針を決定する。

 

9.次回専門委員会は11月16日(火)10時30分−16時JSTとする。

 

以上