第10回すばる小委員会議事録 日時: 2月3日(金)11:00~17:00 午前中からの出席者: 有本 太田 唐牛 岩室(以上三鷹) 臼田(ヒロ) 午後からの出席者:山田 土居 小林(以上三鷹) ビジター:郷田光赤外専門委員長(16:30~) 欠席者:高田 片坐 千葉 書記:吉田(千) Ⅰ 光赤外専門委員会へのSAC報告の検討 1 短期的提言 1-1 MOIRCS GTに関する報告(太田) MOIRCS製作チームから提出された50夜のGT観測提案について、 SACとしてはその科学的価値を理解し今後のすばるの戦略的な 運用形態を探ることを念頭に置きつつ支援する方向で議論を 重ねてきたが、シンポジウムやユーザーズミーティング等での議論を 経てもユーザーの十分な理解を得るには至らず第1期観測装置並みの 20夜のGT観測という結果になった。 SACとしては、すばるの戦略的な装置運用や装置開発の進め方について、 今後も前向きな検討を継続すべきであろう。 C:MOIRCS GT 50夜が実現しなかった一番の理由は何だろう? C:Intensiveでなぜだめなのか?という意見に十分反論できなかった。 C:装置を作るからには、旬の観測があるはずだ。それを戦略的にやる、 それにGTを合流させるという考え方は今後も生かしていくべきだ。 C:提案夜数と、グループに参加している人数比が決め手ではないか? C:装置グループの人がばらばらにプロポーザルを出さないことが大事だ。 C:戦略的な運用のためには、(装置製作グループとは別に)リーダーシップを 取る拡大チームが必要になるだろう。 C:コーディネーターのような人がいるとよい。 C:SACがもっと積極的に提言してもよいと思う。 2 中期的提言 2-1 キュー・サービス観測(山田) まだWG内で検討中だが、現状の体制のままで実施可能な試行的キュー 観測では、優先課題にバッファ夜を付与する現行の方法とあまり 変わらない結果になり、キュー観測本来のメリットは得られない。 また、クラシカルな観測を希望するユーザーも多いため、ただちに 全面キューへ移行することは難しい。 C:結局ダイナミックスケジューリングがどんどん遅れてしまうのでは  ないか? C:すばるは観測装置が多いので、他の望遠鏡とは違う独自のキューが  必要になる。 すばるに合った本格的なキューの体制を考えたい。  現状にこだわるのではなく、SACであるべき姿を考えて、  それに対応する体制を観測所に整えてもらうべきだろう。 2-2 すばると大学教育(岩室) すばるは観測研究において大きな成果を上げているが、次世代の 人材育成という面では、まだ利用しきれていない部分がある。 それについて大学教育の観点から提言する。 2-2-1 すばるバーチャル体験ページの充実 毎年実施しているすばる観測体験企画は、潜在的人材の発掘効果が 大きいので、各大学理学部の事務室に募集要項を送るなど、 もっと広く宣伝してはどうか。ポスターを作成してもよいと思う。 また、実際に参加できる人数は限られているので、疑似体験できるような ウェブページがあるとよい。 2-2-2 解析講習会の充実 これまでSuprime-CamとHDSについて解析講習会が行われたが、 サマースクールのように定常化できるとよい。 解析棟1階の共同利用室では端末が8個しか使えないので、 一度に8人しか参加できないという難点がある。 端末等の資源の充実も天文台執行部に要望していきたい。 講習会に参加できない人のためには、解析練習用データセットや マニュアルがウェブ上に整備されつつある。今後益々充実させてほしい。 2-2-3 院生の観測への参加 院生がプロポーザル作成を学ぶ機会があるとよい。 講師を招くとか、自分の書いたプロポーザルを添削してもらうのも よいだろう。PIの了承が得られれば、過去の優秀なプロポーザルを ウェブ上に公開することも考えられる。 2-2-4 アーカイブデータの充実 膨大なデータの中から必要なデータをうまく検索できるような 工夫が必要である。 2-2-5 お蔵入りデータの活用 当初の目的のためには不十分なデータだったが、別の目的なら 利用可能だというデータを有効利用する方法を検討する必要がある。 2-2-6 UH88・UKIRTの日本時間枠の確保 予算が厳しくなっているようだが、院生教育に有効なので 是非継続してほしい。 C:UH・UKIRTは確実にすばるの訓練になってるので、大事だ。 C:岡山でできない部分をUH・UKIRTで補うという面もある。 2-2-7 装置の技術資料の公開 現状では各装置の技術資料があちこちに散在しており、 資料を見たい人は誰に聞けばよいのかもわからない。 今後の装置については、技術資料の置き場所をウェブ上に準備して、 そこにファイルを置き、ユーザーズミーティング等で案内できる とよい。 C:装置の公開を急ぐと、資料の整備が間に合わないという結果に  なりがちである。 2-2-8 持込装置の条件緩和と開示 この項については別項で改めて議論する。 2-2-9 検出器関係のサポート 現在あるMessiaV、MFront2のような基礎開発や検出器関係の サポートは重要であり、今後も継続、拡充してほしい。 2-2-10 装置開発 今後の装置開発はさらに大規模なものになることが予想されるため、 各大学が分担して開発した部分を国立天文台が統合する方法などが 考えられる。 2-3 すばるアーカイブ(高田) 高田委員欠席のため割愛。これまでの議論でほぼ出尽くしている。 2-4 アウトリーチ(有本) この項についても、これまで議論した通り、日本物理学会誌に すばる特集号を組むことを提言する。 3 長期的提言 3-0 WFMOS(臼田) WFMOSについては、Geminiからの提案に回答するため台長からの 依頼で検討を開始した。この点、サイエンスの要求から検討を 開始した3-1から3-3の装置とは別枠である。 コミュニティの意見としてはまだまとまっていない。 Gemini側での検討が先行してしまったために、否定的な意見も多かった。 すばるの多様なサイエンスに大きな制限がかからない形で 今後検討していくべきだろう。日本側で核となるグループの形成も 必要になる。 3-1 近赤外広視野撮像(土居) 近赤外線観測では、可視光にくらべ低温の天体を容易に観測できること、 星生成領域を見通せること、遠方の天体を観測できることなど、多くの メリットがある。Hyper-Suprimeのために主焦点の改造が実現する場合は、 Kバンドまで入れた近赤外線カメラの搭載が可能になるかもしれない。 主焦点の活用について再度検討することが望ましい。 カセグレンについても望遠鏡の改造を行えば視野は現在より広くとれるので、 主焦点と比較しながら検討を進めるべきであろう。また、多少視野は狭くても、 多色撮像機能をもつ装置の検討も有効であろう。 3-2 中間赤外撮像分光(片坐) 片坐委員欠席のため資料のみ。 3-3 AO+面分光(小林) AOのメリット: a. AOは惑星探査のためばかりではない。   日本ではそう思ってる人が多いが、AOによる分解能の向上は、   天文のあらゆる分野にメリットをもたらす。 b. 空間分解能はAOなしと比較して5-10倍になる。 c. (特にポイントソースについて)感度の大幅な向上がある。 すばるはAOにとって最もよい望遠鏡である。 すばるの定常装置としてあってよいのではないか? Multi-Object AOかMulti-IFU がよいだろう。ただしMulti-Object AOは 製作がたいへんなためか、世界のどこでも積極的には計画されていない。 よって、逆に狙い目といえるかもしれない。 Q:費用はどれくらいかかるのか? A:15億円くらいだろう。 4 今年度のSACの反省(委員長) Q:SACとしての活動は十分だったか?   A:委員会の回数が多くて大変だった。   A:MOIRCS GTに多くの時間を割いたが、結果が思わしくなかった。   A:果敢にいろいろな問題に取り組んだと思う。すばるの運用開始から    時間が経過し、少し停滞してきた時期に問題点をよく洗い出した。    ただ、具体的な提言ができたかというと疑問が残る。   A:全体的には評価できると思う。 Q:来年度もこうした機能の委員会を継続すべきか?   A:それは我々の決めることではないが、こういう議論の場は    重要だと思う。   A:ここでの提言がどのように扱われるか不明で、やりにくかった。   A:光赤外専門委員会の下に位置づけられており、やりにくかった。   A:コミュニテイーの代表として、観測所とユーザーのインターフェース    の役割を果たしてくれた(所長)。 その他   C:議事録の英語版は実現できなかった。それを補完する意味からも    ユーザーズミーティングに英語セッションを設けたが(委員長)。   C:コミュニティの風土として、意見をはっきり言わない傾向がある。    ユーザーズミーティングをもっとオーガナイズして、小規模な    セッションを設けるなどの方策があるかもしれない。   C:ユーザーが意見を書き込めるウェブページがあるとよい。   C:議事録を広い範囲にすばやくオープンできたのは評価できる。 5 次年度のSACの役割(千葉) 千葉委員欠席のため委員長代読。 すばるの戦略的な運用のために、今年度SACが提言した内容について、 継続審議を行うことを提案する。 6 来年度のSAC委員候補者の推薦(委員長) 推薦基準は議論の結果下記の通りとした。 a 委員会の継続性を重視する(原則留任とする)こと b 各分野から委員を選出すること c すばるのユーザーであるか、または大所高所から意見の言える人   であること d 台内・台外のバランスを考慮すること e 装置関係者、観測所関係者も含むこと これらの観点から、下記の18名の候補者を推薦する。 (候補者リスト省略) Ⅱ プロポーザルについて(太田) 1 Intensiveとnormalの同時採択について Intensiveプロポーザルが採択されてそれが走っている間は、 通常枠に応募できないという制限が以前はあったが、今はない。 今回TAC委員から、Intensiveで20夜もらった上にさらに、 というのはよくない、という意見が出た。 共同利用担当より: 以前はIntensiveを通常枠とは別に審査しており、Intensiveに 集中して欲しいという意味で制限を設けていた。 その後通常枠と同時に審査するようになり、通常枠への振り替え 採択も行われるようになったため、制限をはずしていた。 公募要項に、Intensiveが通ってる場合は、通常枠で不利になる 可能性がある、と書いておくことにする。 2 持込装置の扱いについて 持込装置について公募要項で言及していないため、前回はうっかり 審査してしまった。すばるは持込装置の敷居が高すぎるという 議論があったが、ここで手順を再確認したい。 共同利用担当:共同利用では原則受け入れないが、事前に所長が   認可した装置は申請してもよいということになっていた。 C:TACによるサイエンス審査以前に詳しい技術審査をやるのは、  時間の無駄ではないか。 C:TAC審査を経てからでは、技術審査が観測に間に合わなくて、  次のセメスタに回すことになるかもしれない。 持込装置での観測を考えている人は、事前に所長にコンタクトする ように公募要項に明示することにする。 また、持込装置のアーカイブは必要最小限でよい、SOSSを介さずに 装置を動かしてもよい、等、これまで共同利用装置と同等に課せら れていた条件を緩和して、持込装置を利用しやすくしてはどうか。 Ⅲ AO188進捗報告(高見英) AO188の試験観測、GT観測について、今後コミュニティとの調整が 必要になるが、今年中に初観測を予定しているため、まずSACで現状を 説明したいとの希望がAOチームからあり、TV会議接続でハワイの 高見英樹氏より説明、引き続いて質疑応答があった。 説明の概要: AO188の素子数は現行AOの5倍で、ナスミス焦点に設置する。 現行AOはカセグレン焦点にあるが、ナスミス焦点設置により、 機械的安定性が増大し、改良も容易になる。 レーザーガイド星の導入によって約80%の天体が観測可能になる。 赤外波面センサーをMPIAと共同開発している。 Q:AO本体、レーザーガイドシステム、IRCSとの連動の3つに分けてGTを 要求するのか? A:グループ内でもまだ結論は出ていない。 C:AOチームの戦略がわかっていれば、意見も言えるだが、まだわからない。 C:IRCSを改造したからGTをその分ほしいというのでは、装置のアップ  グレードの度にGTが必要になってしまう。 C:しかし、装置を作る人達の士気を高めるために、GT的なものを何らか  考慮することは大切だろう。 C:Suprime-CamのCCDの赤色CCDへの入れ替えなど、装置のアップグレードは  今後ともいろいろあるので、どのようにするのがよいか議論が必要だ。 Q:赤外波面センサーは費用はどれくらいか? A:4-5千万円だ。 Q:常設の装置になるのか? A:そうだ。そんなに大きくない。 Q:共同開発しているMPIAが、自分たちの分のGTを要求しているのか? A:どんな見返りがあるのか?とは言っている。 C:GTでなく所長裁量時間で対応できる程度ならいいだろう。 C:先方が拠出した費用を考慮すると3晩程度が妥当だろう。 C:共同利用へプロポーザルを出して貰う際に、年数限定で(例えば数年) 日本人枠扱いをするのも適当ではないか? Ⅳ 委員長より 2月末を目処に光赤外専門委員会への報告資料を整備する。 基本的にはSAC委員継続でいきたいが、今年度の開催はこれが最後になる。 委員の皆さん1年間ありがとうございました。 =資料一覧= 資料1 本日の議題 資料2 TAC委員交代について 資料3 MOIRCS GTに関する報告 資料4 キュー・サービス・リモート観測の検討 資料5 シーイング制限が強い観測についてのキューの必要性 資料6 すばると大学教育 資料7 AO188進捗状況報告 資料8 近赤外広視野撮像 装置提言 資料9 中間赤外面分光 資料10 今後の星周円盤観測とすばるに期待されること 資料11 すばるの次世代AOに関する考察 資料12 次年度SACの役割について 資料13 TAC委員長からの議題 資料14 PI装置受け入れポリシーと手順(2001.1.19)