第8回すばる小委員会議事録案 日時:2005.10.11(火) 11時〜17時 場所:国立天文台解析研究棟2階 TV会議室 参加者:(三鷹) 有本信雄、太田耕司、高田唯史     (ハワイ) 臼田知史、山田亨、唐牛宏 欠席者:土居守、小林尚人、岩室史英、片坐宏一、千葉柾司 =委員長より= MOIRCSはGT20夜としてやることになった。 今回はこの先10年を見据えた観測装置計画を中心議題としたい。 先日のSACシンポでの議論を受けて、12月のユーザーズミーティングで ユーザーにどのような議論をしてもらうのか、SACとしてのたたき台を 準備する必要がある。 =議論= ●SACシンポでのユーザーからの装置提案のまとめ(資料1) ユーザーからの提案は、比較的実現性の高いものから、ほとんど実現の可能性の ないものまで、総花的に挙げられていた。 この中から実現可能なものを抜き出して、議論していく必要がある。 また、提案は概して遠慮がちなものが多く、予算に限りがあるため難しい という空気で、盛り上がりに欠けた印象だった。 銀河関係では広視野撮像と多天体分光の提案が、系内では中間赤外の提案が 多かった。 ●FOCAS関連 ・シンポジウムでの発表「FOCAS進化論」は印象的だった。 ・だが次世代FOCASを作ろうという話にはならなかった。次世代FOCAS  としての機能は既にはGMOS(Gemini)とDEIMOS(Keck)にある。 ・DEIMOSのようなレーザー分光が既にあり、FOCASは世界最先端の分光器からは  遅れているのが現状である。 ●HDS関連 ・HDSの多天体化は多額の費用をかけなくても可能なのではないか?科研費で  賄えるレベルかもしれない。 ・分光の機能では、VLTのGIRAFFEに大きく水をあけられている。 ・HDSはよい論文が出ているし、HDSとS-Camが今はすばるの2本柱ではないか? ・すばるは安定したナスミス台を2つ持っており、それを有効に利用するために  HDSを下ろすという議論も一部では出ている。 ・HDSの機能は、KeckのHIRESで代替できるだろうが、HIRESのグレードアップの 結果を調査・確認する必要がある。 ・HDSチームはU,Vの波長のほうをやりたいらしい。VLTが赤いほうに感度を上げて  いるので、すばるが青いほうに感度を上げれば有利だろう。 ●装置のラインナップ ・可視の装置ではFOCASが第1世代、DEIMOSが第2世代といえるだろうが、  世界の流れは近赤外になっている。近赤外では、すばるはMOIRCSとFMOSという  装置を持っている。単にこの機能が欠けているからほしいという議論では  なく、サイエンスが要求する機能について考えていくべきである。 ・FMOS、MOIRCSの後にどうするのかというガイドラインが必要だ。 ・今すばるにある装置計画は、主焦点の広視野化とAOのアップグレードだけである。  現有の装置でそこそこいいサイエンスがやれるが、今装置を提案しないとだめだという  危機感がユーザーにはない。  −−>今5-10年先を見据えた装置計画を進めないと、すばるの装置は二流になって     しまうが、その危機感をなかなかユーザーに共有してもらえない現状だ(所長)。 ・S-Camの後継としてHyper S-Cam, CIAOの後継としてHiCIAO というように、  健全な流れもある。 ・1装置当たりのコストが10-50億円という時代に入りつつある。  −−>そのため、装置は特定の望遠鏡で全てそろえる時代ではなくなっている(所 長)。  −−>望遠鏡の特徴を活かして、いくつかの望遠鏡で色々な観測装置を共有すると      いう発想が生まれつつある(時間交換の項参照) ●装置開発のスキーム ・欧米とは文化の違いがあり、すばるの第1期観測装置は観測所主導ではなく、  ユーザーからのボトムアップ、草の根方式で製作された。 ・MOIRCSは赤外検出器があるという状況と、赤外の広視野カメラが必要という  サイエンスの要求から生まれてきた。 ・装置製作には一声20-50億円、5年がかかる。 ・100万ドルあれば、欧米ではCall forを出してR&Dのために複数のチームに  配分するというやり方も見られる。 ・すばるのユーザー間では、こういう装置がほしいという意見は出るが、  作ろうという人はあまりいないようだ。 ・GTが20夜に限られるのであれば、誰も共同利用装置を作る気になれないの  ではないか? ・観測所が装置製作をリードする必要があるだろう。  −−>観測所主導型の装置と、ユーザーからのボトムアップ方式と両方     必要なのではないか? ・観測所が世界に向けて装置公募をしてはどうか?  −−>そのためには予算の裏付けが必要で、要求はしているがなかなか難しい(所長)。 ●世界の装置の状況 ・マウナケアには、FMOS、MOIRCS以降に計画されている可視の装置はない。 ・近赤は激戦区だが、30M鏡に関心が集まっており、装置開発は足踏み状態だ。 ・AOをめぐる競争がすごい。これに対してすばるは188AOプラスHiCIAOで対抗するが、  HiCIAOの扱いがまだ決まっていない(PI装置の項参照)。 ・中間赤外では、30M鏡時代になっても、8M単一鏡のほうがよいという考え方も  ある。 ・マウナケアでの連携の話はどうなっているのか?すばるに対する期待は  どの程度か?  −−>すばるが入らないとVLTに負ける、すばるが入って互角、という感じで     すばるへの期待は大きい。     協力しないと生き残っていけないという危機感があり、KecKとGeminiは     HIRESとMichelleの時間交換、レーザーの共同開発など連携を強めている。     (時間交換の項参照) ●時間交換 ・限られた予算内で、装置を有効に利用するためには、他の望遠鏡との  時間交換が必須だろう。 ・ただ、時間交換に頼ると、最先端の装置を製作する力の衰退は避けられない。 ・時間交換の際に、撮像と分光では一晩の価値が違うという議論は困る、  同じに扱うしかない(所長)。 ・時間交換を考える際には、学生の長期滞在を先生がサポートできるのか、等の  課題がある(所長)。 ・Geminiから5夜の時間交換の提案がある。  暗夜でS-CamとGMOSを、明夜でMOIRCSとNIFSを交換しようという提案で  是非進めたい。S06Bあたりでどうだろうか?(所長)  −−>是非やるべきであろう。 ・時間交換する際に、どのように運用するのか?  −−>キュー観測ではなく、クラシカルモードでする。 ・VLTとも何かやってはどうか?  −−>KecKとVLTが以前連携しようとしたが、アサインの方法が全く違っていた      ため、実現しなかった。      VLTはサイエンスメリットは自分たちが決めるという姿勢だが、      KecKにはTACが6個ほどあり、それぞれ独自にやっている。 ・12月のユーザーズミーティングで、時間交換の具体案を提示して、  ユーザーの意見を聞く。 ・時間交換をするかしないかはコミュニティの判断で、実際にどう運用するかは  観測所やSACが決めることだろう(共同利用担当)。 ●観測所の意思決定スキーム・SACの役割 ・観測所の意思決定スキームがはっきりしていない。 ・所長提案をSACが認めればOKというようにしたい。天文台上層部との  予算折衝の問題はあるが。  コミュニテイの意見はどうなのか?とよく聞かれるが、  それに対してはSACの意見を答えれば十分だと思う(所長)。 ・SACの役割や所長との関係が明確でない。SACはユーザー代表として  所長へのアドバイスをするのか?(委員長) ・すばる草創期のすばる専門委員会はすばるステアリングコミティだったが、  今はアドバイザリコミティの性格だ。 ・大きい問題はやはりユーザーズミーティングを通す必要がある。 ・12月のユーザーズミーティングでは、SACシンポでの装置提案のまとめを  具体化し、SACとしての提案をしたい。 ●12月のユーザーズミーティングについて ・今年の世話人は八木(三鷹)、早野(ハワイ)、SAC委員長。 ・プログラムは例年通り、ビジネスとサイエンス。  ビジネスについてはインテンシブの発表を含む。  DDTについても一度まとめてほしいという提案がユーザーからあった。  サイエンスは公募だが、世話人に一任する。  8月のSACシンポの続きとして、サービス・キュー観測の運用案、大学院生教育、  アーカイブ、アウトリーチについての具体案と長期の装置開発計画をSACから  提案し、時間交換については所長から提案する。 ・次回のSACまでに主な装置提案の担当者を決めて、具体案をまとめてもらう。   (副委員長が依頼)  出来上がった案を事前に回覧し、ユーザーズミーティングでの議論の活性化を  図る。      SACからの主な装置提案   =================    可視広視野撮像(Hyper-Suprime)    可視広視野多天体分光(WFMOS)    NIR広視野撮像    MIR撮像    MIR面分光(R<10^4)    AOは    GLAO+広視野撮像+近赤外面分光    MOAO+近赤外面分光    可視AO (ExAO)+何でも(可視/近赤外 撮像・分光)   ================= ●GTの再検討について ・GTは一律20夜ではなく、装置ごとに検討して決めてもいいのではないか? ・GTについては、装置製作者と観測所の契約で決まるが、共同利用夜数を削って  実施することに変わりはない。 ・インテンシブ枠の拡大案や、戦略枠構想もある。 ●PI装置について ・facility instrumentの定義がはっきりしない。 ・PI装置のままで何十夜かの観測夜が確保できるのなら、そのほうが楽だろう。  PI装置にするかfacility装置にするかは装置チームの判断だが。  (注)PI装置にGTはない。 ・HiCIAOは来年の夏ぐらいには完成するが、PI装置なのかどうかは不明。  -->これを機会に、新しい装置に対してどういう態度を取るのかを再考する必要が    ある(所長)。 ●S06Aスケジューリングについての確認 ・MOIRCS GT20夜を共同利用夜数から削ることは決まったが、  全てS06Aで消化するかどうかは未定だった。  −−>観測所とMOIRCSチームで案を作る。 ●次回委員会日程 11月16日(水) ■資料 SACシンポでの装置提案のまとめ(9/20の光赤外専門委員会資料)