------------------------------------------------------------------------ 第五回すばる小委員会議事録 日時:2005.7.12(火) 11時10分〜17時15分 場所:すばる解析棟二階TV会議室 参加者:有本信雄、太田耕司、片坐宏一、高田唯史、山田亨、千葉柾司、      唐牛宏(以上三鷹)、臼田知史(ハワイ) 欠席者:小林尚人、土居守、岩室史英 オブザーバー:吉田二美(午前中のみ、SACシンポ世話人として) ビジター:市川隆(MOIRCS報告のみ) 書記:小宮山裕、吉田千枝 委員長報告 1 第4回すばる小委員会議事録(資料2)承認 2 TACの新メンバー承認について光赤外専門委員の持ち回り審議が終了し承認され、   台長の承認も得られた。 ●シンポジウムプログラム案(資料3) 岡山UMに引き続いて、8月23日午後から2日半の日程でSACシンポを開催する。 趣旨としては、すばるの中・短期的戦略(MOIRCS・FMOSのGTについて、サービス・ キュー観測について)と、10年先を見据えた長期的戦略(新観測装置提案)が 二つの柱になっている。 世話人が作成したプログラム試案をたたき台として、プログラムの検討を行った。 試案では、初日(半日)が中・短期的戦略の議論、2日目から3日目午前中が 今後期待されるサイエンスとそのための装置提案(各分野からの招待講演+一般講演)、 3日目午後が新観測装置の状況報告、となっていたが、議論の時間を十分に確保 するため、プログラムのスリム化を目指す方向で検討を進めた。 シンポジウムのタイトルを「すばる大改造」に変えたいという提案が 委員長からあり、これを了承した。 <第1部 導入について> 共同利用状況報告は、口頭発表よりもむしろポスターのほうが内容を周知できるので、 口頭発表をとりやめ、ポスター及び配布資料とする。 観測所長はハワイからTV会議で10分程話す。 <第2部 MOIRCS GT問題について> Q:高エネ研の人の話があるのはどういう趣旨か? A:望遠鏡時間の寡占化の状況になった場合の諸問題について話を聞きたい。  高エネ研では、少数の大プロジェクトがたくさんの人を抱えている状態である。 C:それを聞く前に、VLTの時間の使い方など、世界の天文学界の現状のまとめを  しておく必要がある。HSTなどは望遠鏡時間は寡占状態だが、アーカイブデータは  多用されている。 C:ちゃんとデータを集めてこういうことを研究している社会学者が北欧にいる。  今回は無理でも一度は話を聞いておきたい。 <第3部 中短期的な課題> すばると大学教育、アーカイブ利用、アウトリーチの3つでトータル1時間とし、 シンポジウム1日目にここまで終了する。 <第4部 サイエンスについて> 昨年まで、将来計画のとりまとめがあったので、これとの重複を避け、 すばるの10年先ということで、装置提案等を中心に、過去の議論を コンパクトにまとめて行く方が散漫にならずによい。 このため、プログラムのスリム化をはかる。 また、講演は依頼を中心にし、公募による一般講演は原則としてポスター発表とする。 サイエンスの講演が終ったところで、提案をまとめて、 観測のどのパラメータ領域がどう提案されたのかを確認し、 次の装置セッションに向けてフリーディスカッションを行う。 C:サイエンスセッションではいつも最新の研究成果しか聞けない。  10年後の話をするならその趣旨を講演者に事前によく伝えておく必要がある。  すばるを使って10年後に何をやりたいか、という話をしてもらいたい。 C:シンポジウム終了後に、将来のすばるの装置イメージがにじみ出てくるような  ものであって欲しい。 C:結局話が散漫になることが多いので、議論が具体的になるようなoverviewを  最初に示してはどうか? C:マシンタイムの交換という視点が必要だが、抜けている。 C:マシンタイム交換についての提案か、装置提案をしてほしい、とあらかじめ  講演者に依頼するとよい。 Q:30m望遠鏡の装置の話だと元気が出るのだろうが、すばるに特化されると  あまり元気が出なくなるのではないか? A:将来へのステップとして、30m鏡のプロトタイプとしてのすばるへの装置提案であ ってよい。 Q:10年後に30m望遠鏡は実現しているだろうか? A:世界で一台くらいできているかもしれないが、まだ運用段階にはなってない  だろう。8〜10m級は今世界で15台くらいある。 <第5部 これからの装置計画紹介> C:装置関係の話をする場合、サイエンス上の要求からこういう装置が欲しい、  という議論も勿論あるが、逆に10年後にはこういう装置ができるので、  そこから可能になるサイエンスは何か?という議論もありうる。  −−>一般講演はやはり入れた方がよいのでは? C:装置の話は結局お金の話になるので、権限のない若い人には難しい。 C:このセッションは装置グループが何をやろうとしているのか、という  決意表明の場といえる。  −−>装置は必ずしも一通りの用途だけではない。 C:検出器という観点から、宮崎氏(CCD)、西村氏(赤外)の話を聞きたい。 赤外線検出器に関してすばるは世界最高水準を保ってきたが、これまでの 経緯について西村氏に話してもらう。 AOについては、AOの最近の動向のほかに、すばるのAOはどこに重点を置く のか?について、話してもらう。今年の1月にAOグループ+αによる、 すばるAOの将来計画検討会が行われているので、それを踏まえた上で 具体的な提案をしてもらいたい。 Q:WFMOSについてGeminiから人を呼ぶという話はないのか? A:WFMOSがすでに認知されたような誤解を与えると困る。  まずは国内での議論が大事である。 <その他> 第6部として、「すばると30m望遠鏡」「すばるとスペース望遠鏡」 「単機能望遠鏡としてのすばる」という3つに分けて議論する。 このセッションのたたき台は、山田委員が準備する。 シンポジウムの参加者はのべ100人くらいと予想される。 ●MOIRCSの最近の進展についての説明(市川・TV会議による参加)13:30−14:00 市川氏よりMOIRCSの現状とGT観測提案について報告があった。 5月に行われたMOIRCSワークショップにおいて結成された 拡大MOIRCSグループによるGT観測提案は以下のようになる。 課題1:広視野撮像による星質量に基づく銀河進化の研究    a.PhotozとSEDFittingに基づく星質量サンプルの構築       星質量関数、星形成、色分布、形態、    b.原始銀河団領域における銀河分布SSA22 課題2:深撮像による高赤方偏移銀河の探査    a.GOODS-Nにおけるdrop銀河の同定    b.重力レンズ効果を用いた銀河団での探査    c.NB試験観測 課題3:多波長サンプルの研究    a.非常に赤いX線源の研究    b.Spitzer IRAC/MIPS天体の研究 c.GALEX天体の研究 d.SCUBA/VLA天体の研究 課題4:多天体分光による銀河進化の研究    a.高赤方偏移銀河についての多天体分光 星形成銀河の分光、基本サンプルの解析    b.赤方偏移サーベイ(緑化、Hα光度分布の進化) 光度関数    c.高赤方偏移銀河の力学質量    d.z>7銀河の分光同定 各課題についてPIと協力者を決めつつある。 C:前回より提案が具体的になり、誰が何を研究するのかが明確になったので、  評価できる。 またMOIRCSのGT観測にゲストサイエンティストとして参加するための指針として 以下が示された(片方を満たせばよい)。 1、相補的なデータを持ち寄り有用な共同研究を効率的に進める研究者。     例:Chandra, Spitzer 2、国内でMOIRCSチームと友好的に研究を進めることができる研究者 独創的な解析提案などを歓迎したい。ただ、MOIRCSチームの     意志は尊重してもらいたい。 観測天域スケジュールは以下の通り。 撮像観測:GOODSN(4視野)、SSA22(8視野) 分光観測:GOODSNを中心に25夜の提案。低分散20マスクorバンド60時間、 高分散5-10マスクorバンド90時間程度      2005年9月から2年間で完結してしまう計画。ESO/HAWKSが立ち上がる前に      成果を上げたい。2007年度が主に分光。 以下の試験観測の結果は観測所に報告済みである。 MOSの結果 天体とスリットの位置あわせ         1PIX(0.12秒)以内 撮像 視野全般にわたって、均質な星像サイズを達成。     (05年6月の星野観測時には好シーイング下で、     平均 0.35" FWHM で視野全域にわたり 0.5 pix 以下     のばらつきに納まることを確認)   効率 Jで0.2 H,Kで0.2-0.3 程度 CISCOよりやや悪い        (同一条件下を仮定し70−90%) 但し、MOIRCS は、鏡やレンズが多い オーバーヘッド    読み出し+ダミーリード+メモリ転送  現在 40秒 (実測)        => 16秒を目指す 観測方法を最適化すると、平均的には、現在で    30%程度の オーバーヘッド(バンドにより異なる)である。 背景光 J 16.1, K 13.95 mag arcsec^-2 CISCOより J で 0.5 等、Ks (CISCO は K') で1等暗い リセットアノマリ  読みだし方法改良で、解消。オーバーヘッド9秒。 フリンジ フィルターの干渉によることが判明。フィルターの平面性がよすぎたらしい。 解析によって除去可能 長時間積分による検出限界 1000秒程度の積分ではまあよい。 Q:GT要求スケジュールは? A:S05Bに3夜、S06Aには20夜の提案をしている。S05Bについては、  どういう議論になってもGTとして実施したい意向。 Q:全バンドでCISCOより効率がよいはずだったのでは? A:JバンドではCISCOと同等、KバンドではCISCOよりよい。 ●MOIRCS 関連の議論 S06Aの公募要項が8月中旬に公開されるため、S06AにMOIRCSを共同利用装置として 公開するかどうかは早急に決める必要がある。 公募夜数は本来TACが決めるべき問題だが、現在TACは交代の時期で、新委員には まだ詳細がつかめていないため、当委員会で決定してほしい、という要請が TAC委員長からあり、観測所長もこれを了承した。 検討の結果、S06Aの公募に際しては以下の通りとなった。   MOIRCSの撮像モード(JHKs)をリスクシェアで公開する(compensationはなし)。   公開する夜数については、観測所とMOIRCSチームで検討し、公募要項に明記する。   リスクシェアという公開なので、Intensive Programには公開しないのが   妥当である。   8月30日の第7回すばる小委員会開催に合わせて、TAC/SAC合同のMOIRCS審査会を行い、 GT提案の受け入れについて決定し、光赤外専門委員会に上申する。 新TACのメンバーにはサイエンス面を重視して判断してもらい、SACメンバーは これまでの議論を踏まえて判断する。 MOIRCSチームは合同審査会前に資料をTAC/SACメンバーに送付する。   Q:GTは誰にあげるものなか?MOIRCSチームか拡大MORICSチームか? A:5月のMOIRCS WSで一度コミュニティに参加者を募ったわけだから、  拡大MORICSチームでよい。 C:まだ加入者を募っている段階だが、ある段階でチームをdefineする必要があるだろう。 C:単に拡大MOIRCSチームにGT時間を配分したという見方ではなく、  GTは20夜であるが、コミュニテイの参加があるという意味で、戦略枠とでも  いうべき夜数をとり、それをGTにつけたという考え方もありえる。 C:カタログを公開するのがすばるとして重要である。  −−>GOODS-S(ISSAC)のデータが世界に公開されているように、すばるからも     発信したい。 ●山田WG(サービス観測・キュー観測)の進捗状況 担当者間でサービス、キュー観測等についての話し合いをしてきた。   8月2日の委員会で、すばるシンポで何を話すか提示したい。 ●土居WG(すばると大学教育):千葉委員(追加資料1) 大学教育への貢献手段として、以下の4点が提案された。    1 アーカイブデータの利用:解析講習会のようなパッケージがあるとよい。     C:S-CamとHDSについて実施したような解析講習会を固定化して進めるべき。  −−>データ解析講習会は各年度2装置ずつの開催を目指しており、開催時に         マニュアルも合わせて作成することにしている。      2 装置の技術資料(FDR)の公開  3 バーチャル体験ページ:多くの人が旅費を払わずにすばるでやっていることが分 かるように。     C:ハワイでは、"Keck所長の一日"とか、ヒロからすばるのドームまでの道のりを     撮影したビデオが既に作成されている。 C:これは当委員会で議論する内容ではないのでは?  4 観測時間の大学院生枠(教育枠):野辺山を例にして。     C:すばるのプロポーザルの競争率は5倍もあり、院生優先枠の創設は難しい。     C:すばるでデータを一杯撮っている人と、学生を多く抱えている先生が組むと      よい。 シンポジウムまでに更に議論を発展させておく。 C:持込装置のことについてはどこで議論するのか? C:大学での装置開発をしていると、すばるは敷居が高い。 C:2004年7月15日にヒロで開かれた「すばる観測装置国際評価」では、  すばるは持ち込み装置が少なすぎる(HIPWAC, CheSS)ので、  積極的に受け入れるべきとのコメントがあった。 C:装置開発チームにとって、マニュアルもデータアーカイブも作れと言われると  どうしても敷居が高い。データを取るだけでよいのなら(HIPWACがその例)助かる。 ●高田WG(アーカイブの有効利用の促進):高田委員(追加資料2) SMOKAの現状報告と今後の方向性について 現状 ・2004年度のユーザー数 165人 外国人(ポスドク、UH)の利用が多い。  ダウンロード量は400GB/月で、すばるのデータ生産量の約2倍                    (参考:HSTは4倍の利用率) ・論文数13。外国人が多く、日本人は少ない(2編)。    Q:どうやって数えたのか?    A:ADSでSMOKAをキーワードに論文を検索した。PIに直接確認したものもある。   アーカイブデータは補足的に使用されるケースが多く、これを中心に据えた   研究は非常に稀である。S-Camが圧倒的に多い。    Q:SDFREDの公開で変化はあったか?    A:ない。SMOKAを使っている人は観測者か解析を知っている人にパイプがある人。 ・問題点:Ready to Useでない。   何も写っていないデータも含まれており、どれが使えるか自分で   調べる必要がある。 今後の方向性 ・Quality Controlされたデータの提供が必要。シーイングやゼロ点情報の付加を  進めているが、まだ全体の5%程度。 ・観測即時のフィードバックも重要。 ・有名領域の処理済データの集中的提供がよいだろう。 ・画像のままでなく、カタログにまでしないと理論屋は使わない。  -->大量のデータを扱うためには、計算機環境などリソースの問題がついて回る。 ・アーカイブデータを使ったプロポーザルというのもある。  HST,Spitzer,Chandraでは、旅費のサポートもあり、サポートスタッフもいる。 C:各大学の天文観測実習とタイアップしてはどうか? C:「すばるドクター」という構想があり、三鷹のPDの一人の任務の1つにしようと  している。すばるでこういう研究がしてみたいが、誰に聞けばよいか?どうすれば  よいか?という質問に答えることを目指したい。  −−>SMOKAのウェブページには問い合わせ先が明記してあるが、あまり問い合わせの     メールは来ない現状。 C:ポスドクを一人3年間雇用して、S-Camのデータのカタログ化をしてはどうか? C:一番手をつけやすいのは有名領域のデータの提供。カタログを作れば引用が増える。  しかしちゃんとした人を貼り付けないと信用に足るデータにならない。 C:同様の議論を永年やっている気がする。人を雇うという話になると、結局お金がない  ということになる。何か突破口はないか? 委員長より: 今後の方向性について、難易度別に整理した上で、シンポジウムでユーザーに提起して 広く意見を聞きたい。 ●シンポジウムプログラム改訂案:吉田二美(追加資料3) 午前中の議論をうけて吉田二美シンポジウム世話人よりプログラムの改訂案が 提示され、それについてさらに検討を加えた。 ・招待講演者にはプログラムもつけて趣旨をよく説明して依頼する。 ・サイエンスセッションの最後に"Over 50"枠として経験豊かな方3名程度に  すばるへの提言をお願いする。  思い出話ではなく、刺激のある話をお願いしたい。 ■唐牛所長からの報告 ・昨年の装置国際レビューの記録をSAC/TACに回覧したい。公開もOK。  −−>山田委員がweb上に置く ・11月7-9日にコナでGemini&Subaru共催のシンポジウムを開く。  HyperSCAM・WFMOS;SDSSの未来版  SOC:日本側は杉山さんと千葉さん  日本から20人くらいInviteしたい(招待講演者は10人程度) ■次回委員会日程:8月2日(火)11時より          有本委員長はヒロからのTV会議参加のため、太田副委員長が座長。          シンポジウムの具体案を詰め、目標を設定する。 ■資料一覧 資料1:議題一覧 資料2:第4回すばる小委員会議事録 資料3:シンポジウム プログラム案 追加資料1:すばると大学教育 追加資料2:SMOKAの現状と課題 追加資料3:シンポジウム プログラム改訂案