------------------------------------------------------------------------ 第3回すばる小委員会議事録 ================================== 日時:2005年4月15日(金) 午前11時−午後4時 場所:国立天文台(三鷹)解析研究棟2階すばるTV会議室(ハワイとTV会議) 出席者:有本、岩室、太田、片坐、小林、高田、土居、山田、唐牛(三鷹)      臼田(ハワイ)      青木和、吉田(書記) ================================== I 議題 1.MOIRCS観測について (1) MOIRCSのGT観測については、本年2月のすばるUMに  おいて「是非やるべき」との発言が複数のユーザーからあり、一方  それに対する消極的な意見はみられなかった。このため当委員会でも  GT観測を推進する方向で検討を進めている。  MOIRCSが成果を出すためには、拡大MOIRCSチームの編成が  必要である。そのことを前提に、MOIRCSのGT提案についての評価案  (資料1)に基づき、以下の内容について検討した。 <サイエンス面> ・今回のGT提案書では分光について言及していないが、分光についても  一緒に提案した方がいいのではないか?  −−>分光については次の試験観測を経て改めて提案する予定である。     撮像した領域を分光することになろう。遠方の輝線天体が中心と     なる。 ・撮像の夜数について、JHKの三色でないとだめなのか?優先順位を  つけてやってはどうか?  −−>三色必要である。既存のGOODS−SのデータではHが欠けて     いるので、GOODS−N(MOIRCS GTのターゲット領域)     についてもまずJ,Kを観測し、次にHも観測したい。 <拡大MOIRCSチームの編成方法> ・コアチーム(装置グループ)メンバーの確認:GT提案書に列挙してある  10名に、ポスドク1名、東北大学の院生が1名新たに加わり、  総勢12名である。 ・GTとしてこれまでに例のない50夜を割り当てるにあたって、  MOIRCSコアチームを含む拡大MOIRCSチームを編成して、  取得データの処理解析への協力や、サイエンスアウトプットの  最大化をはかるというスキームで推進すべきであるという  意見で一致した。この答申を所長/光赤外専門委員会に  あげて、所長からMOIRCSチームに提案してもらい、  MOIRCSチームとしてよければこの方法でGTを遂行する  ことを強く望む。 ・拡大MOIRCSチーム編成にあたっては、  5月13日、14日にMOIRCSワークショップが開催されるので、  その際に拡大MOIRCSチームのメンバーを募ってはどうか?  −−>他分野(銀河以外)の人はそもそも研究会に来ないケースが     比較的多いので、WSの案内を出す際に、拡大チーム編成の趣旨も     天文コミュニティに回覧しないといけない。  −−>コアチームと拡大チームの役割分担、権利を明確にしておく必要が     ある。コアメンバーの研究テーマ(特にD論)は確保したい。 ・拡大MOIRCSチームの編成はコアチームが主体的に進める。  外国人の参加は今のところ考えない。  コアチームが拡大チームに遠慮せずにやりたい研究がやれる条件を確保  することが前提となる。但し、コアチームが漠然と何でも確保してしまう  と拡大チームが何に参加するのかわからないことになり、  積極的な参加が望めないかもしれないので、ある程度はっきりした  課題として確保しておくという方法がよいであろう。 ・単にデータ処理のサポートというだけでは、人が集まらない恐れがある。 ・新しく拡大チームに参加したいという人にとって垣根が低いのはいいこと  だが、コアチームがコントロールしにくくなるのは困るだろう。  そこの兼ね合いが難しい。  ある程度はっきりした課題の策定という部分も兼ね合いで難しい面がある。 <拡大チームと観測所の関係> ・拡大チームには観測所が拘わることは当然であるが、コアチームを支援する  形で行われることが望ましい。 ・具体的には、観測所が、RCUHでポスドクを2名程度雇って、データ解析の  パイプライン化等を担当してもらうこと等は可能である(唐牛所長)。 ・三鷹では解析サポートなどを主な業務としてポスドクを雇っている。  RCUHで雇う場合には、他のエンジニア採用などとの関係で競合になる。 ・どんな人材が必要か  −−>CISCO撮像処理、多天体分光のノウハウのある人。 <GT提案書の公開及び国際協力> ・GT提案書は5月のWSで公開するが、海外への公開は今後検討する。 ・国際協力については、他波長観測を進めているグループ (HST,Spitzer,Chandra)からのrecommendation letterが回覧された。 ・UHとの関係は今後の検討課題ではないか。 <データ公開> ・生データへのアクセスはコアチームと解析サポートのメンバーに限る。  生データは通常通り18ヶ月後に一般に公開する。 ・処理済みデータは拡大チームで共有し、国際コミュニティへは観測が  終了してから1年を目処に公開する。 ・GOODS−Sのデータが既に出ているので、GOODS−Nもそれと  同程度のことはやる必要がある。処理済データは可能であれば  すばるのウエッブページで公開したい。 ・成果論文の特集号などが出ると、国際的にはインパクトがある。 <Review> ・すばるで50夜を使う以上、責任ある人がレヴューする必要がある。 ・当委員会が行うか、当委員会がレヴューアーを委嘱する形になる  だろう。 ・国際レヴューも必要ではないかという意見があった。 ・GT50夜配分のためだけでなく、サイエンスの中間見直しのためにも  レヴューは有効である。  継続に値する成果が出ているかどうかを見極める必要がある。 ・レヴューの目的の一つとして、観測が必ずしも理想どおりに進まない  場合や、観測限界が想定どおりではない場合に、見直しをどのように  するのかをはっきりしておくということがある。 <共同利用との関連> ・GT開始と同時に、競合は覚悟の上でMOIRCSを共同利用に  公開する予定である。 ・これまでは各分野の採択率が大体同じになるように採択してきたが、  MOIRCSが加わったことによる影響をどうするか、TACで  審議する必要がある。  しわ寄せは銀河の人だけに行くのか、それとも全体に影響するのか?  全体にある程度の影響が出るのはやむを得ないが、銀河の人への影響の  ほうが大としないと、コミュニティ全体の理解は得られないのでは  ないか? ・MOIRCSは暗夜を要求しているわけではないため、観測夜の  リソースへの影響はそのぶんだけ緩い。 <空き時間の活用> ・空き時間の有効なる利用はMOIRCS拡大チームの問題でなく、  観測所が取り扱うべき事柄である。  MOIRCSの空き時間に限らず、空き時間全般についての  議論をしていく必要がある。 ・MOIRCSを共同利用に公開する最初のセメスタでは、  コアチームに空き時間を有効利用してもらい、次のセメスタから  リスクシェアでサービス観測に公開するというのも一案である。 ・シーイングの悪いときにどうするか?0.8秒が1つの目安になるだろ  うが、バックアッププログラムを用意する必要がある。 ・観測所として長期に渡るデータの蒐集(例えばライブラリの作成)の  ために空き時間を利用するという可能性もある。 <装置の性能> ・プロジェクトをスタートさせるために十分な性能があるかどうか不安が  残る。提案書に示されたチャンピオンデータ(0.23arcsec)の頻度を  考慮する必要がある。 ・フリンジの除去やフラットについてはどうか?  −−>フリンジの除去は解析の中ではできる。フラットについては     次の試験観測(5-6月)で確認したい。     精度については現状では数%を目標にしている。 (2) MOIRCS、FMOSのGTにそれぞれ50夜、  100夜を割り当てた場合にすばる望遠鏡の短期的運用  (2005年〜2008年)がどうなるかの予測をもとに短期的運用について  検討した(資料2)。  これによると、共同利用夜数が各セメスターで30夜程減る勘定になるが、  新AOへのGT割り当てを考慮していないため、実際には更にもう少し  減ることが予想される。 ・共同利用にどの程度影響があるのか?  −−>最近の採択倍率は件数ベースで4倍、夜数ベースで約5倍だが、     今後もし同程度の応募数があれば、採択倍率は夜数ベースで     6倍に上がると予想される。 ・FMOSのETを20夜と仮定しているが、もっと夜数が必要ではないか?  −−>PFUの試験のための7夜は別になっている。     分光器の試験は望遠鏡を使わなくても調整可能であるので、     分光器としては10夜以下で済むであろう。 ・FMOSのGTが100夜であることの根拠はどこにあるか?  −−>特に根拠はなく、一応の目安として、2007年1月以降毎月5夜を     機械的に割り当ててある。FMOSの研究会等では300夜というような     提案もでてきているのでそれを参考にはしているが、それもGTという     形になるかどうかはまだ決まっていない。 2.すばるの今後10年のロードマップの作成 ・台長には、GeminiからのWFMOS提案に対する判断が必要なので、  早急に提言をまとめ てほしいとの意向があると聞いているが、  本委員会としては、ユーザーの意見を広く聞く機会もまだ持って  いない状態で、ここ2、3ヵ月といったタイムスケールで結論を  出すことは出来ないと判断し、当初予定通り、今後1年をかけて  きちんと議論したい。  −−>3/20-21にGeminiでFeasibility Reviewがあった。その結果、     今後はすばるに付けることを前提にして、WFMOSの概念設計に 進むことになった。     すばるにWFMOSを取り付けるためには、望遠鏡の筒頂部分の     改修が必要になり、大がかりな工事になると予想される。     また、実際の運用開始の時期については未定である。 ・前回の当委員会で、ALMAの齋藤氏からすばるへの提言が文書で提出  された(資料3)が、その中に新たに求められる装置を検討するために  有用な表があった。前回は時間の制約があり十分に議論が出来なかっ  たので、それを参考に今後すばるにとって必要と判断される装置に  ついて委員で意見を交換し、次表にまとめた。 サイエンスからの要求: -------------------------------------------------------------------- 太陽系 星 星・惑星形成 銀河系 銀河 宇宙論 近傍銀河 広視野 V NIR V NIR V NIR 多・面分光 NIR MIR V NIR V NIR 高分散 V NIR MIR NIR 高解像度 NIR MIR -------------------------------------------------------------------- V:可視光、 NIR:近赤外、MIR:中間赤外 ・この表は各分野でどのような装置がどのような波長で必要となるかを  概念的に示したものであり、今後改定していく予定である。 ・将来を考えると、Hyper Suprime-CamとAOが2つの柱になるだろう。  特にすばるを生かすにはExAOがポイントになる。  もし、広視野AOをめざすなら、カセグレンの穴の大きさからくる制限がある。  広視野AOについてはTAOで検討している。 ・面分光は今後おもしろくなるのではないか。 ・広視野撮像・多天体分光は他でも進んできているが、1度以上の超広視野を  ねらうのがよい。 ・広視野近赤外撮像(GLAO無)は今後どう進めるか?置くスペースの制約がある。 ・委員でカバーできない分野(太陽系、系外惑星)については次回若手の専門家を  招いて意見を聞きたい。  −−>河北秀世氏、吉田二美氏(太陽系)、中島紀氏(系外惑星)に依頼する。 ・干渉計の議論が出ていない。 次回、他の望遠鏡の装置開発状況についての報告(唐牛氏の宿題)、 及び太陽系、系外 惑星の専門家の意見を参考に、議論を継続する。 3.次回委員会日程 6月7日(火) 11:00-16:00 (日本時間) 議題・今後10年のすばる運用のロードマップ作成(継続審議)         太陽系、系外惑星の専門家の意見(河北、吉田二、中島紀の3氏)         地上大型望遠鏡の装置開発の現状報告(唐牛)   ・今後5年程度の運用方針:Intensive、Queue観測等について II 報告(有本) 斎藤正雄氏からALMAの方で重責の任に就き、本小委員会に出席する時間が なかなかとれない状況になったので、辞任したいとの申し出があった。 事情を考えると了承せざるを得ないが、任免権は光赤外専門委員会にあるため、 4月26日の専門委員会に太田副委員長から報告していただく (有本委員長海外出張のため)。 後任の補充は本委員会としては行わない意向である。 配布資料一覧 3-1 MOIRCS GT提案についての検討事項(片ざ) 3-2 MOIRCS GT, FMOS GTを含めた短期運用シミュレーション(山田) 3-3 すばる小委員会報告(齋藤、再配布) 3-4 MOIRCS GT提案書1 撮像モード(再配布) 3-5 第2回すばる小委員会議事録 3-6 齋藤委員からの委員辞退メール