観測成果

ガンマ線バースト ~ 宇宙最大の爆発 ~

2006年5月25日

この記事は京都大学のプレスリリースを転載したものです。
(転載元: http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~totani/research.html#GRB)


  ガンマ線バースト (GRB) とは数秒から数十秒の間、突然バースト的にガンマ線が放出される現象で、1970年頃に発見された。長い間、謎の現象とされ、ようやく 1997年に可視光残光に赤方変移 (z = 1程度) が発見され、宇宙論的な遠方で起きている巨大な爆発現象 (明るさでは宇宙最大) であることが判明した。特殊な超新星爆発との相関も見つかっており、巨大エネルギーの超新星に付随するジェット (噴水のように物質が高速で放出されること) による現象という見方が確立しつつある。


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図1: ガンマ線バーストの想像図。(クレジット: 京都大学)


  私は、GRB が宇宙論的現象であると判明する直前の 1997年、もし宇宙論的遠方の現象ならば、GRB は大質量星の生成と死に密接に関連しているため、GRB の明るさ分布の統計的研究から宇宙の大局的な星形成史や銀河の進化史を探ることができることを示した (注1)。現在,GRB を用いて宇宙初期の星形成活動を探るというのは世界的に一大潮流となっているが、この論文はそのアイデアを世界で最初に示したものとして評価され、数多く引用された。特に,Nature 誌上に掲載された 1997年の GRB の国際会議の総合報告では、"The single most important theoretical idea in the conference" という評価を受けた (B. Paczynski & C. Kouveliotou, Nature, 389, 548 (1997))。

  さらに星形成史だけでなく、GRB を用いた様々な初期宇宙の探求が可能である。特に重要なのは、「宇宙再電離」である。誕生直後の宇宙は高温のためプラズマ状態 (電離状態) だが、誕生後数十万年で温度低下により中性状態になったことがわかっている。しかし、現在の宇宙は再び電離状態にあり、宇宙誕生後 10 億年ごろに誕生した最初の星々により「再電離」が起きたと考えられるが、まだよくわかっていない。我々は、平成18年9月に発生した GRB050904 について、すばる望遠鏡の観測で光学スペクトルを取得し、これまでで最遠方の GRB であることを明らかにした (注2)。さらに、この光学スペクトルの詳細な理論解析により、宇宙が誕生後9億年ですでに電離されていたことを初めて明らかにした (注3)。GRB によって初期宇宙に関する情報が初めて得られた、画期的事件となった。


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図2: GRB050904 の可視残光のイメージとスペクトル。(クレジット: 京都大学)



(注1) "Cosmological Gamma-Ray Bursts and Evolution of Galaxies" Totani, Tomonori
Astrophys. J. Lett. 486, L71-L74 (1997)

(注2) "Gamma-Ray Luminosity Function of Blazars and the Cosmic Gamma-Ray Background: Evidence for the Luminosity-Dependent Density Evolution" Narumoto, Takuro; Totani, Tomonori
The Astrophysical Journal, 643, 81-91 (2006)

(注3) "Implications for Cosmic Reionization from the Optical Afterglow Spectrum of the Gamma-Ray Burst 050904 at z = 6.3" Totani, Tomonori; Kawai, Nobuyuki; Kosugi, George; Aoki, Kentaro; Yamada, Toru; Iye, Masanori; Ohta, Kouji; Hattori, Takashi
Publications of the Astronomical Society of Japan, 58, 485-498 (2006)



 

 

 

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