観測成果

すばる、宇宙を見通す --- 宇宙の果てまでの銀河光の90%を個々の銀河としてとらえる

2001年4月30日

 すばる望遠鏡ファーストライトの直後に撮影された「すばるディープフィールド」のデータを、国立天文台、東大、京大の合同チームが解析した結果、この画像には宇宙の果てまでに存在している銀河起源の近赤外光の90%以上が、個々の銀河として写っていることがわかりました。これはハッブル宇宙望遠鏡で撮影された「ハッブル・ディープフィールド」の結果を凌ぐもので、「すばるディープフィールド」が宇宙を最も奥深くまで見通した画像であることを示しています。

 波長2.1ミクロンの近赤外線で撮影された「すばるディープフィールド」(図1) の画像には、24.5等級の銀河までが検出されています。国立天文台と東大、京大のチームは、データに含まれる誤差を正確に見積もりながら、銀河の数を明るさごとに数え上げ、暗い銀河がどのように増えていくのかを調べました。そして、その数の増え方の傾向と、グループの独自の銀河進化モデルとを詳しく比較しました。その結果、宇宙の果てまでにあるすべての銀河から来る近赤外線のうち、90%以上が、「すばるディープフィールド」で個々の銀河に分解されて写っていることが明らかになりました (図2)。これは、原理的に観測可能なすべての銀河からの光のほとんどを、実際に銀河として捕えることができたということです。逆にいうと、この波長ではこれ以上感度を上げても、新たに検出される銀河の光は10%以下というところまで観測が進んだということであり、「すばるディープフィールド」が観測天文学のひとつの重要な到達点であることを意味しています。銀河からの光についていえば、すばるはまさに「宇宙をほとんど見通した」といえます。

 一方、新たな謎も提起されました。今回の結果は、宇宙の果てまでに存在するすべての銀河の光を集めると、宇宙がどれくらいの明るさになるかを示しています。これまで、近赤外領域の宇宙の明るさ (宇宙背景放射、図3) は、銀河の光の重ね合わせと考えられてきました (図4)。しかし、人工衛星などを用いて測定された宇宙の明るさと比べると、今回得られた銀河の光はその3分の1にしかなりません。残りの3分の2は銀河から発せられたのではない、未知の光であり、その解明が今後の天文学の重要なテーマです。

 この結果は、2001年4月1日発行のアストロフィジカル・ジャーナル誌に掲載されています。

  • 図1:今回解析されたすばるディープフィールド。写っている天体はほとんどすべて銀河である。2分角×2分角の視野のなかに、約350個の銀河が検出された。

  • 図2:近赤外線(波長2.1ミクロン)についての、銀河の明るさと、銀河の背景光への寄与の関係。本研究によって、これまでになく暗い銀河の寄与が調べられた。これ以上暗い銀河が検出されても、銀河の背景光にはほとんど寄与しない。

  • 図3:宇宙背景放射の概念図

  • 図4:宇宙背景放射に寄与する天体を、波長ごとに示した。従来、近赤外線については、銀河の寄与が大きいと考えられていた。

 

 

 

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