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天文学会研究奨励賞の受賞者とすばる望遠鏡

2008年4月24日

 東京の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催された日本天文学会の2008年春季年会におきまして、若手研究者の大内正己さん、高田昌広さん、野村英子さんが日本天文学会研究奨励賞を受賞されました。ご自身の研究活動とすばる望遠鏡との関係について、みなさんに語っていただきました。


 大内正己さん

―― 自己紹介をお願いしますi
 カーネギーフェローの大内正己です。ロサンゼルス近郊のカーネギー研究所に勤務しています。出身は東京都八王子市。4年前に日本で博士の学位を取った後、アメリカに研究の場を移し、現在に至っています。

―― 受賞理由をお話いただけますか
 宇宙の歴史をこれまでにない大きな空間スケールで解き明かしていったことです。具体的には、すばる望遠鏡を使って、120~130億光年かなたの宇宙を広い範囲で観測して、ビッグバンから間もない時代にある銀河をたくさん見つけました。これを元に太古の宇宙大規模構造や銀河団を発見したこと、銀河の進化を研究したことが評価されました。

―― 今後の研究計画はどのようなものでしょう?
 第一に、銀河誕生の現場をとらえるため、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などを使い、これまでの観測限界を超える過去の銀河を見つけることに挑戦しています。第二に、銀河がどのように形作られてきたかを知るため、すばる望遠鏡で見つけた銀河をケック望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡などの欧米の望遠鏡で詳しく調べていく予定です。

 ※ハッブル宇宙望遠鏡 (英語) http://hubblesite.org/
 ※ケック望遠鏡ホームページ (英語) http://www.keckobservatory.org/
 ※スピッツァー宇宙望遠鏡ホームページ (英語) http://www.spitzer.caltech.edu/



 高田昌広さん

―― 自己紹介をお願いします
  高田昌広です。現在、東京大学数物連携宇宙研究機構の特任准教授として観測的宇宙論を研究テーマにしています。

―― 受賞理由をお話いただけますか
 受賞理由の一つに、すばる主焦点カメラの観測データを用い、宇宙最大質量級の A1689 銀河団の重力レンズ効果を詳細に調べ、通常は観測できない「暗黒物質の空間分布」を復元したことがあげられます。得られた空間分布は、構造形成に関する理論的計算によるモデルと矛盾がないことがわかりました。

―― 今後の研究計画はどのようなものでしょう?
 この研究で、すばる望遠鏡の広視野と高精度な撮像能力のすばらしさを実感しました。今後、さらに、すばる望遠鏡の威力を最大限発揮できるような重力レンズ研究を展開し、世界をあっと言わせる成果をあげれるよう頑張ります。


 野村英子さん

―― 自己紹介をお願いします
 野村英子です。現在は、英国のクィーンズ大学ベルファストに所属しており、2008年5月には京大宇宙物理学教室へ異動する予定です。星・惑星系形成過程に関する理論的研究を行っています。

―― 受賞理由をお話いただけますか
 星間化学素過程やダスト進化過程を取り入れた、原始惑星系円盤や星形成コアの包括的な理論モデルの構築により、高分散分子遷移線観測から星・惑星系形成過程を探る新たな研究の展望を開いた点が評価されました。

―― 今後の研究計画はどのようなものでしょう?
 ガスが運動しているという条件を含めた理論モデルの開発を進める一方で、すばる望遠鏡やアルマ計画による観測データと理論計算との比較を行い、原始惑星系円盤や星形成領域の高密度部分の物理や化学構造を紐解くことによって、星・惑星系形成過程の解明に取り組みたいと思います。

 ※アルマ計画・ホームページ:http://www.nro.nao.ac.jp/alma/J/index.html



参考:日本天文学会ホームページ: http://www.asj.or.jp/




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