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マウナケア山にある天文台

2001年5月21日

 パート I - 光学赤外線望遠鏡

 マウナケア山の山頂は、世界中で最も天体観測に適した場所と考えられてます。年間約220夜の晴天、シャープな星の像が得られる安定し乾燥した大気、そして夜空を明るくする大きな町が近くにないことから、多くの望遠鏡の設置場所として選ばれてきました。今回は、すばる望遠鏡と同様に、マウナケア山頂にある他の望遠鏡について特集をします。

 すばる望遠鏡の近くにあるのは、カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学、そしてアメリカ航空宇宙局 (NASA) が運営する、2つのドームを備えたケック望遠鏡 (Keck) です。それぞれの望遠鏡は口径10mの鏡を持ち、運営されている光学赤外線望遠鏡の中では世界最大級の大きさです。しかしその鏡は、すばる望遠鏡や他のマウナケア山頂にある望遠鏡のような一枚のガラスではなく、大きさが約2mある36個の六角形をしたガラスからなります。ケックIとケックIIは、それぞれ1993年と1996年に本格的な観測を開始しています。

 その隣は、NASAの支援のもと、ハワイ大学が運営をしている口径3mの赤外線望遠鏡 (Infrared Telescope Facility; IRTF) です。IRTFは、NASAの太陽系探査ミッションをサポートするための観測や将来の探査ミッションに対して研究上の裏付けを与えるための基礎研究を行うことが目的です。太陽系の観測が主な目的ではありますが、天文学すべての分野の観測を行っています。赤外線観測は、天文学を研究する多くの分野において重要です。その範囲は、銀河系内の星が形成されている領域 (赤外線は不透明なチリの雲でも透過する) から、最も遠い銀河の観測 (宇宙が膨張していることによるドップラー効果のため波長が伸びる) まで及びます。

 続いて、口径3.6mのカナダ・フランス・ハワイ大学望遠鏡 (Canada-France-Hawai`i Telescope; CFHT) です。CFHT は、2000年8月に21周年記念を迎えました。口径8~10m望遠鏡が主流のこの時代に、CFHT が進めているプロジェクトは、主焦点に取り付けるカメラ MegaCam です。40個のCCD からなり、視野が1平方度のカメラは、すばる望遠鏡の主焦点カメラ (Suprime-Cam) の4倍の広さです。そのため、すばる望遠鏡に比べて光を集める能力(集光力)は5分の1しかありませんが、夜空をサーベイする速さは同程度です。

 CFHT の隣には、すばる望遠鏡よりもわずかに小さい口径8.1mの鏡を持つジェミニ北望遠鏡 (Gemini North) です。ジェミニ北望遠鏡は、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、チリ、ブラジル、そしてアルゼンチンの国際協力により運用されています。もう一つのジェミニ南望遠鏡は、チリのセロ・パチョンにあり、2000年11月にファーストライトを迎えました。2つの望遠鏡を合わせることで、全天を観測することができます。

 IRTF の運営と山頂にあるすべての望遠鏡を利用していることとは別に、ハワイ大学 (University of Hawai`i) 口径 2.2m の望遠鏡を所有しています。ハワイ島にある他の望遠鏡と比べてかなり小さいにもかかわらず、大きな望遠鏡を必要としない数多くのプロジェクトが進行しています。それに加え、例えばすばる望遠鏡で観測時間を得る競争率に比べると、この 2.2m 望遠鏡の観測時間を申請するハワイ大学スタッフはそれほど多くはないことから、観測者は、小さい集光力を補うように、大きな時間割り当てを受けています。

 イギリス赤外線望遠鏡 (United Kingdom Infrared Telescope; UKIRT)は、IRTF と同様に、スペクトルのうち赤外線だけを観測するように作られた望遠鏡です。口径は、そのような望遠鏡としては世界最大級の3.8mあり、すばる望遠鏡のような多目的の望遠鏡にはできない観測装置を備えています。そのような装置の一つが、現在イギリスのエディンバラで製作中の広視野カメラ(WFCAM)です。このカメラは、一度平方の視野を観測することができます。UKRITは、イギリス、カナダ、オランダの研究支援のもと、ヒロにあるジョイント・アストロノミー・センターによって運営されています。

 山頂で最も小さな望遠鏡は、ハワイ大学の口径0.6m望遠鏡です。1969年に設置され、マウナケアで最初に研究用に使われた望遠鏡として知られています。

 

 

 

 来月は、マウナケアにあるサブミリ波望遠鏡と電波望遠鏡について特集をします。

 

 

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