<第34回大型光学赤外線望遠鏡専門委員会議事録> (案)

 

日時: 2001年4月5日11時〜17時(日本時間)

場所: 国立天文台解析研究棟すばるTV会議室(TV会議利用)

出席委員: 安藤、家(委員長)、市川伸、市川隆、岡村、片ざ、唐牛、

 佐藤、杉山、田村(幹事)、仲野、林、福島、舞原(副委員長)、山下

オブザーバ出席者: 臼田、高田、B. McLaren

 

1. 委員会名簿および委員長ほかの選出(資料34-1)

 新しいすばる専門委員の紹介を行った後、委員長・副委員長・幹事を選出。2年後には新体制とすることを前提に、家委員長、舞原副委員長、田村幹事(書記)が継続することとした。資料中、委員の所属の誤りを訂正。

 

2. 前回議事録(資料34-2)

 前回議事録を承認した。

 

.1. ハワイ観測所報告(安藤、資料34-3a)、共同利用報告(林、資料34-3b)

(全体的な事柄)12月からのS00b期共同利用は天候にも恵まれ、順調に終了した。望遠鏡は制御系を重点的に機能更新したが、操作性には改善の余地がある。観測装置は多くが性能試験に移行中。補償光学も12月にファーストライトを迎え、動作を確認した。今後はCIAO/IRCSによる調整観測を進める。第2期観測装置として採択したFMOSは、今年度から製作に入る。MOIRCS、IRHSはR&Dフェーズにある。AGの星像に基づく可視シーイングの統計は、0.8"以下が70%。温度制御がシーイング向上に効いているようである。赤外副鏡は調整時にクラックが入り修復中。オペレータの養成に時間をかけている。安全管理に注意しているが、自動車事故が続いている。すばるユーザーズミーティングをハワイで開催し、初期成果の発表、共同利用に関する意見交換を行った。

(観測所の現状)赴任が26名(事務官1人増)、長期出張5名、RCUH33名、COE4名、院生3名。今年度予算は昨年比5億増の約40億。山麓計算機の更新を予定。三鷹光赤外研究系より一部門移設と山麓研究棟の増設の平成14年度概算要求を目指す。

(共同利用関連)S00, S01a, S01b期に採択されたプロポーザルのまとめ、次期セメスターの募集要項について詳しい説明があった。S01a期は105申請課題中27課題を採択し36夜を公開装置IRCS,CISCO,FOCAS,OHS,HDSで配分した。S01b期は47夜を共同利用に供するが、上記装置+S-camを。課題内容の公表、国際枠の公表、突発天体の申請、電子投稿システムについて、質疑応答があった。観測対象の秘匿性と申請書記載法について議論し、募集要項に説明することとした。

(望遠鏡時間)エンジニアリングとロスタイムは次第に減りつつある。3月は赤外副鏡のトラブルがあった。統計的にはまだサンプルが少ないが、共同利用時間のロスは望遠鏡トラブル7%(制御系)、装置トラブル(0.3%)、悪天候(5.2%)。

(平成13年度の活動)S01a期は観測所時間をあまり確保できなかった。将来的には補償を希望したい。PI装置は国内のみ受け入れ開始する予定。名大STE研の太陽中性子検出実験や神戸大の黄道光観測の支援継続についてはマンパワーに限りがあり議論が必要。望遠鏡の機能更新としてMA改善、自動温度補償、オフセットSH、固定点フィードバックなどの高性能化や赤外振動副鏡のフル機能達成など。また、カセフランジの交換、雲・シーイングモニタの設置を予定。主鏡固定点の恒久対策を8月8日から10月10日まで工事するため観測は停止。10月15日から観測再会予定。第一期観測装置:AO・IRCS・CIAOの組合試験観測を進める。FOCASのフル機能立ち上げ。COMICSの公開。CCD読み出し時間の高速化。次期装置の開発と検出器の計画も進める。装置校正データは共有したい。

UHおよびマウナケアの状況:McLarenのコメントを含む)

マスタープランは6月に承認された。マウナケア運用事務局から各天文台の代表が招かれている。HPにすばる専用事務スペースを割り当てる。オニズカセンターですばるグッズを販売。OHANA計画に、西川、高見、ゲセラーがすばるからからメンバーとして参加する。IFAの望遠鏡更新計画が紹介された。IRTFの更新、CFHTの更新、広視野小望遠鏡群の案がある。これらはすべてマスタープランに抵触しない。

(質疑応答)2種類のオペレータの必要性、特に、装置オペレータの重要性が述べられた。また、主焦点の保守に関与する人員の希望があった。

 

.2. 決算報告(唐牛、資料)

 支出合計は約29億。ハワイ送金分が11億で、三鷹では15億を執行した。すばるR&D経費として約1億(第2期装置R&Dを含む)。旅費決算報告も行われた。ハワイへ送金分の資料は次回に提出して欲しいとの希望があった。特に旅費は昨年度たいへん厳しかった。今年度も旅費予算の不足が懸念されるので、執行計画を見直す。昨年度並の科研費を期待している。

 

.3. 望遠鏡報告(臼田、資料34-3c)

 星像は近赤外で0.2"、AOありで0.1"以下。M1への風の制御が重要。指向精度は1"rms。自動ガイドの精度は、明るさがm=12-18の星に対して0.08-0.18"。ブラインドトラッキング精度は仕様値が出ていない。自動ガイドの制御は格段に早くなった。主鏡クリーニングについてと今年度計画についても説明があった。観測中に行うMA・シーイング測定について、および、天頂付近でのガイドについて質疑応答があった。

 

.4. 観測装置報告(山下、資料34-3d-1)

Sup-Cam:CCD10個への増設を予定。新しいzフィルターの導入した。

IRCS:共同利用も行われ、順調。

OHS・CISCO:S00bは観測所のサポート体制上、共同利用に供さなかったが、

  S01aから開始。冷凍機を水冷に変更する予定。

FOCAS:MOSはFOCAS自身の画像を使用することで既に稼動。

  冷凍機を交換する。共同利用可能は5月からの予定。

HDS:S01aから共同利用開始。イメージローテー他を使わないモードに問題がある。

COMICS:赤外副鏡のトラブルの影響を受けている。検出器は夏に5つに増やす。

CIAO:1月にAO有りのFLを迎えた。AOが利用可能になれば共同利用に出す。

AO:2000年12月にファーストライトを迎えた。

(質疑応答) S-Camの早い読み出しの希望とカセグレン焦点の広い視野をキープすることへの希望があった。

 

.5. プログラム小委員会報告(岡村、資料34-4)

 当小委員会はこれまでに2回開催した。メンバーに変更はない。レフェリー制を採用している。最初5カテゴリーだったが、集中したカテゴリーがあったため、サブカテゴリを設けた。採択判断はレフェリーの点数を参考に決めている。夜数配分は課題数に比例して各カテゴリー別に行う。倍率は夜数ベースで約6倍、課題数ベースで約4倍。いわゆる国際枠(日本人以外で、日本以外の機関の人)は最大限10%をめどにしている。プロポーザルには有益なフィードバックをすることを心がけている。また、レフェリー審査の実施法の改善について議論している。外部からの提案を歓迎する。

 プログラム小委員会の位置付けについて議論を行い、前期委員の継続を確認した。今後も、親委員会の改選時期と一年ずらして改選するのが望ましい(任期は2年)。

 *次回、当専門委員会で、次期プログラム小委員会メンバーを選出すること。

 

.6. ハワイ大学2.2m望遠鏡および英国3.8m赤外線望遠鏡における協力

  について(田村、資料34-3e)

 ハワイ大学望遠鏡については基本的な合意が両所長の間で既にあるので、最終合意書を用意し、サインに進める。2001年8月から2002年1月までのセメスターの公募がこの合意に基づいて行われた。UKIRTについては、協定書案を作成中。2002年2月から開始する予定。また、この協力について3月の光天連総会で説明を行った。

(質疑応答)この事業に関するすばる専門委員会の立場と光赤外専門委員会との関係について質問があった。報告は両方の委員会で行っている。国立天文台の計画として大きな視野からとらえることに関して質問が有り、議論した。

 

.7. 開発小委員会報告(佐藤、資料34-5)

 開発小委員長は佐藤委員が継続することになった。委員は持ち回りで決定する。

 MOIRCSを第2期観測装置として答申する案が小委員長より提出され、当委員会で認められた。MOIRCSはこれまで、検出器の数など実現困難が予想される案が出されていたが、今回2x1素子案をもとに洗練された光学系案が出てきた。問題は実行部隊の手薄さで、半分を若い大学院生に頼っている。しかし、総合的に判断して第2期装置として答申するとのこと。PIはハワイの西村氏。

 2年間で完成のスケジュールは厳しいだろう。役割分担は、光学系は東北大(現在製作メーカを探している)、スリット交換機構はハワイ観測所、検出器は東北大、デュワー・機械系はハワイ。光学系の調整や最終アセンブルはハワイで行う。予算的には、ハワイのインフラなど現れてないものもある。ソフトのマンパワーが明白ではない。次期の近赤外標準撮像器としての意義は大きい。

 開発小委員会のカバーする範囲が明確でないという意見があった。

 

.8. PI装置受け入れポリシーについて(山下、資料34-7)

 資料のポリシーに則ったPI装置受け入れを、当面国内装置に限って開始することをプログラム小委員会に対して答申する件につき、当委員会への承認希望が提案された。その指針と手順について議論を行った。案は、サイエンスメリットの判断をプログラム小委員会が行い、その後、観測所が技術的判断を行う。PIグループは共同利用枠にプロポーザルを出す。

 PI装置はすばるには時期尚早で、まずはすばる自身の成果を急ぐべきという意見もあった。プログラム小委員会の本来の義務を超えているが、他に判断を求める適切な場がないことも確か。S01b期に予想される装置については、共同利用に申し込んでもらうことになった。一般のPI装置のポリシーについては継続して議論する。

 

.9. データアーカイブについて(高田、関連資料34-3aおよび34-10)

 試験観測の一部が公開すべき時期に来ているが、個々についてPIの許可を得てから公開するのは非現実的。装置の許可が得られれば、なるべく、一括公開したい。当委員会の場で、CISCOおよびS-Camについては公表可能が確認された。MIRTOSも確認した上で、全て公開の方向で進める。資料34-10には、そのデータ公開システムについて説明がある。

 

.10. UH時間について(家、資料34-8、メールでの補足資料あり)

 すばるユーザーズミーティングで議論されたUH時間15%の定義の問題で、望遠鏡がダウンしている場合など、夜数が実際にサイエンスに使える時間と合っていない問題について、合意書の精神を説明し、IFA所長に送った書簡を資料として配布した。IFA所長からの回答のメールを後日配布した。双方のコミュニティの共通理解が重要という点で認識は一致しており、両観測所長で話し合いの努力を行ってもらう。

 

.11. FMOS時間について(舞原、資料34-9)

 FMOSの現状報告と、契約のために必要な英国側との交換文書のために、当委員会において英国側に実質的に与えられるすばる望遠鏡時間の合意が必要。FMOS PIの舞原氏より、了解できる数字を明確にする案と、明確にせずに実際の運用に幅を持たせる案が提示された。数字を標記することについては委員より懸念が出されたが、どちらの案でも説明としては同じ。ただし、交換文書に数字は出さないこと。FMOS製作の寄与に対して、FMOS時間の約30%に英国研究者が関与できることを事実上保証する内容。

 

.12. その他

 観測所時間の補償、および、2002年3月以降の観測装置時間の積み残しについては、次回議論を行う。

 リモート観測、サービス・キュー観測も準備を進めている。

 TOOは、S01bは、観測所の責任で対応する。

 

* 次回委員会は秋頃の予定だが、必要に応じて夏前に行う可能性もある。